サトウキビからラム酒までをワンストップで!
南房総のアグリコールラム造り。
<後編>

PICK UPピックアップ

サトウキビからラム酒までをワンストップで!
南房総のアグリコールラム造り。
<後編>

#Pick up

Aoki Taisei/青木大成 by「房総大井倉蒸溜所」

2022年8月、初蒸留に着手した「房総大井倉蒸溜所」。耕作放棄地を利用した自社農園では、プロジェクトの目玉であるアグリコールラムの原料のサトウキビ収穫が間近に迫っていた。

文:Ryoko kuraishi 撮影:Midori Yamashita

糖度測定を行い、糖度18を超えたらいよいよ収穫。全て手刈りで収穫する。

蒸溜所のすぐ近くでサトウキビを栽培し、搾りたてのジュースをそのまま発酵させて製造するアグリコールラムをフラッグシップとする「房総大井倉蒸溜所」。

世界で生産されるラム酒のわずか1割程度にすぎないアグリコールを、首都圏のすぐ近郊で製造する?!

そんな夢のあるプロジェクトを進める「房総大井倉蒸溜所」だが、ラム酒製造に先駆けて着手していたサトウキビ栽培も順調だ。

取材時期はサトウキビの収穫直前。

蒸溜所から車で10分あまりの距離に点在する2ヘクタールの畑では、3m超えに成長したサトウキビが揺れていた。

寒暖差があるから、サトウキビの甘味が凝縮する。

霜が降りない地域を選んでいるとはいえ、寒暖差は激しい。

南房総でサトウキビ?というと違和感があるかもしれないが、この寒暖差が効くらしい。

11月を過ぎるとサトウキビの糖度もミネラル分も、一気に高くなるとか。

手作業で収穫したサトウキビは畑で葉を落とし、トラックで蒸溜所へ運んでサトウキビジュースを搾り、いよいよアグリコール造りの挑戦が始まる。

「僕たちのラム酒作りは畑からラム酒までをワンストップで行っており、言うなればワイナリーのような造りが可能です。

一般的なサトウキビ畑は製糖目的がほとんどですが、自社のサトウキビ畑はラム酒に特化しており、ラム酒造りの観点から最適な時期に収穫できることも特徴です。

また、せっかくアグリコールラムを造るのだから、土地の自然環境や土壌といったテロワールを生かすべく、オーガニックで栽培しています」

ラム×風情ある古民家の組み合わせがユニークな蒸溜所施設。

サトウキビは収穫せずに置いておくと、サトウキビごと発酵が進んでいく。
サトウキビの中に乳酸菌、酢酸菌、アルコールが現れるのだが、それをもろみにいかせるのも強みだ。

サトウキビ畑では国内で品種改良したものを栽培しているが、南房総に自生する野生種のサトウキビを発見したので、それを使ったラムの製造にもトライしたいそう。


一方、700坪という敷地にある蒸溜所では、増築した蒸留棟が完成したばかり。蒸溜棟にあるのは2機の蒸留器だ。

もろみからスピリッツを製造するために使用するのは、単式と連続式の切り替えができる、コトブキテクレックス社のハイブリッド型の銅製蒸留器。

もう1機はオリジナルの蒸留器で、こちらは改造した回転釜にラム用に設計された蒸留塔を取り付けてある。

特徴は、熱量調整を自由に行えるところ。2回目の仕上げ時はこちらを使って蒸留するそう。

オリジナルの蒸留器。ガラス部分は地元のガラス作家に頼んで作ってもらった。

地元の飲食店に、ラムコンシェルジュになってもらう。

また、蒸留棟以外にもクラファンを活用してさらなる施設が誕生予定だ。

敷地内にある長屋門、蔵、母屋をそれぞれ熟成庫や試飲ができるコミュニケーションスペースとして生まれ変わる予定だそう。

「日本ラム協会の協力を仰ぎ、地元の観光業や飲食店の関係者向けのラムコンシェルジュの資格取得講座を敷地内で開講予定。

飲食店関係者にラムコンシェルジュになってもらい、宿泊施設で南房総産ラムを使ったウェルカムドリンクを振舞ってもらう……なんてプランも計画中です」

来春に向けて一気に稼働が始まった「房総大井倉蒸溜所」だが、青木さんは地元に向けてラム酒の認知度を高める活動を考えている。

南房総ではサトウキビの存在はメジャーながら、それを使ったスピリッツとなるとまだまだハードルが高く、青木さんが営む飲食店でも「もっとも人気が高いラムはキンミヤ(笑)」という状態なのだそう。

「想像以上にパティシエなど製菓関係者からの問い合わせが多いことから、地域の菓子店とのコラボを考えています。

さらに、地元でとれる海の幸とラム酒のペアリングも積極的に提案していきたいので、漁業・農業・酒造りに興味をもつシェフをうちの店で大募集中!」

「房総大井倉蒸溜所」の第一弾となるホワイトラム、「Prologue」は来年2月にリリース予定(クラファンの返礼品先行、一般発売は順次)。

房総発のラム酒「BOSO」が日本のバーを席巻する日も遠くなさそうだ。

SHOP INFORMATION

房総大井倉蒸溜所
千葉県南房総市千倉町南朝夷1019
URL:https://rhumboso.com

SPECIAL FEATURE特別取材