SPECIAL FEATURE特別取材
本格焼酎・泡盛をカクテルに仕立てるTIPS満載!
3都市で満席続出、バーテンダーのための「THE SHOCHU NAVIGATION」開催。
new #Special Feature
那覇市・福岡市・東京の3都市で、バーテンダーを対象とした本格焼酎・泡盛マスタークラス「THE SHOCHU NAVIGATION」が開催されました。
いずれの回も、エントリーの受付開始後間もなく満席御礼に!参加できなかったバーテンダーのために、大いに盛り上がったセミナーの概要をお伝えしましょう。

なぜ今、バーで本格焼酎・泡盛なのか?
麹を用いる日本の伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に認定されるなど、本格焼酎・泡盛への注目が高まっています。
DRINK PLANETでも本格焼酎・泡盛を使ったカクテルトピックを国内外からお届けしてきました。
最近ではカクテル用に開発された本格焼酎や海外プロデュースものがリリースされるなど、カクテル×本格焼酎・泡盛のシーンで新たな動きが加速しています。
そんなシーンを見据え、全国約1600の蔵元が所属する日本酒造組合中央会がバーテンダーや酒に関わるプロフェッショナルのために企画したのが、今回の「THE SHOCHU NAVIGATION」。
3会場には合計200人近くのバーテンダー、バー関係者が集まりました。
ここでは3都市の先陣を切った沖縄会場を中心に、セミナーの模様をレポート!

3会場の進行を務めたのは、「日本の酒情報館」アドバイザーの児島麻理子さん。
3都市で満席続出。プロフェッショナルたちが一堂に!
まずは那覇会場の講師陣のご紹介から。熱気あふれる那覇会場には、下地一盛さん(「菊之露酒造」代表取締役)、古澤孝之さん(一般社団法人「日本ホテルバーメンズ協会」副会長/リーガロイヤルホテルグループマスターバーテンダー)、長友修一さん(「Bar Oscar」)、海外からOliver Eardleyさん(「GeorgeⅤ」)をお迎えしました。
第一部:本格焼酎・泡盛の基礎を再定義。
セミナーは第一部と第二部の2部構成となっており、第一部は本格焼酎・泡盛の定義や歴史、製法の特徴や主原料についての座学を中心に進められました。
特に2大特徴である並行複発酵(麹による原材料の糖化と同時に酵母による発酵が起きる)と単式蒸留(原料由来の豊かな風味をもたらす)について、日本の気候・風土を掘り下げながら「なぜ麹が必要なのか」「本格焼酎・泡盛の製造で使われる黒麹・白麹・黄麹の違いと特徴」「世界の主なスピリッツとの蒸留方法の違い」「(本格焼酎・泡盛で行われる)単式蒸留における、常圧蒸留と減圧蒸留の味わいの違い」などを、造り手である下地さんが解説。
会場のバーテンダーたちは、原材料や手法の違いについて、またそこから得られる酒質をどうカクテルに生かすかについて、熱心に耳を傾けていました。

本格焼酎・泡盛専用のフレーバーホイールを用いながら泡盛と芋焼酎各3種をテイスティング。
「使っている麹や蒸留方法だけでなく、水質の違いも味わいに影響するところがおもしろさ。造りがシンプルな分、ぜひ主原料由来の香りをアフターフレーバーで感じてもらいたい」(下地さん)
一方、長友さんからは「特に芋焼酎は、原材料の芋の種類を知っていると味わいの予測ができるほど、芋の個性が酒質に現れやすい。(原材料の)芋の色合いと味わいがリンクするおもしろさがあります」というコメントがありました。
下地さんによれば、通常、1回しか行わない単式蒸留をあえて複数回行い、狙った香りだけを引き出すなど新しい取り組みを行う造り手も増えているそう。
伝統の酒造りではあるものの、その手法も味わいも日々進化しているようです。

東京会場でのワンシーン。会場に用意されたテイスティングコーナーには多くの参加者が詰めかけていました。
また、「本格焼酎」と一言で表現しても、麦、米、芋、酒粕、黒糖など地域に根ざした原料は多彩です。
会場の一角には泡盛と芋焼酎以外にも、麦、米、黒糖、酒粕の本格焼酎の複数銘柄を味わえるテイスティングコーナーが設けられており、セミナーで得た知識をリアルに体感することができます。
参加者のなかには泡盛がタイ米で仕込まれていることを初めて知ったという方もおり、「どこから輸入されているのか」「なぜタイ米なのか」、造り手に熱心に質問している様子も見受けられました。
第一部の後半からはより実践的な内容に。ゲスト講師によるカクテルデモンストレーションとテイスティングが行われました。

バーテンダー視点でレモンサワーの可能性を紐解いた東京会場の南雲さん。
トップバーテンダーによるカクテルデモンストレーション。
まずは、福岡に構えた「Bar Oscar」で15年ほど前から本格焼酎を使ったカクテルを提供している長友さん。
宮崎県出身だけあり本格焼酎・泡盛への造詣が深く、本格焼酎・泡盛×カクテルのパイオニアともいえるバーテンダーです。
そんな長友さんが披露してくれたカクテルは、泡盛ベースの「Lily of the Valley〜すずらん〜」。
「泡盛・本格焼酎の銘柄に引っ張られない、どんな銘柄を使っても目指す着地点にゴールできる」という観点で考案したレシピだといい、泡盛、クラリファイした甘酒、モナングリーンアップルシロップを合わせてステア。ユズピールの香りを纏わせました。
「本格焼酎・泡盛を使ったカクテルは、ベーススピリッツのアルコール度数が低い分、パンチが控え目になる傾向があります。
それを補うのが甘酒。水っぽくならず、かつ旨みを与えてくれる名脇役です。今年はみりんを使ってみようと思います」(長友さん)

左:木場さん考案の「Last Word」は、黄金井酒造の酒粕焼酎「旗頭」をベースに、黄金井酒造の酒粕と川鶴酒造の「讃岐くらうでぃ」を合わせた自家製リキュールと、シャルトリューズヴェール、マラスキーノを合わせ、仕上げに自家製の「Ginjyo Bitters」で味を締めて香りを加えます。右上:オリバーさんの「KORIDASHI MARTINI(氷だしマティーニ)」は、自身もお気に入りという「黒霧島」に玄米茶の香ばしさを合わせ、マティーニをツイスト。右下:長友さんの「Lily of the Valley〜すずらん〜」は、菊之露酒造の「菊之露 古酒 V.I.Pゴールド」をベースにクラリファイした甘酒、モナングリーンアップルシロップを合わせてステア。
続くオリバーさんは、2022年にロンドンで開催された「The Great Honkaku Shochu & Awamori Contest 2022」(日本酒造組合中央会×英国バーテンダー協会主催)の優勝者。
このコンペの出場準備のために行ったリサーチで、本格焼酎・泡盛の奥深さに魅了されたといいます。
そんなオリバーさんが提案するカクテルは芋焼酎ベースの「KORIDASHI MARTINI(氷だしマティーニ)」。
芋焼酎、玄米茶を使った自家製材料、10%食塩水をステアするシンプルなカクテルです。
「(セミナー前半に使われた本格焼酎・泡盛フレーバーホイールに沿って)芋焼酎と玄米茶の化学成分を紐解き、両者の共有する成分であるリナロールに着目。これをひきだすとともに焼酎に含まれるβ-ダマセノンと玄米茶のピラジンの相乗効果を狙いました。
(リナロール由来の)フローラルかつシトラスを感じる透明感ある香りにドライフルーツのようなニュアンスと香ばしい穀物感のハーモニーを重ね、10%食塩水を加えて味の輪郭を調えます。
(ベースに使用した)『黒霧島』は、アルコール度数は低いものの力強い味わいと特徴的なフレーバーを備えておりマティーニに最適。2023年に初訪問して以来、私のお気に入りの酒蔵でもあります」

左:長友さんによる黒糖焼酎ベースの「SANEN-SAPIN〜サネン-サパン」は、喜界島酒造の「喜界島」に月桃の葉を1晩漬け込み、クラリファイした甘酒とリキュール ド サパンを加えてステア。ガーニッシュに月桃の葉を飾ります。 右上:デークさんの「The Vault」は尾鈴山蒸留所の「尾鈴山 山翡翠」(米焼酎)にココナッツミルクやココナッツクリーム、塩麹などをあわせたビルドスタイルのカクテル。ガーニッシュにフリーズドライした麹米を添えています。右下:デベンダーさんの「Utsav」は、麦焼酎「中々」をベースに、ビターリキュール「スカーレット アマーロ」やベルモットを組み合わせました。ギーを用いたファットウォッシュで厚みのあるテクスチャーとコクを加えているのがポイント。
各都市を彩った、バラエティ豊かなカクテル。
このように、それぞれのバーテンダーが本格焼酎・泡盛をどう捉えているか、どうカクテルに生かすのか、経験から得られた知見やエピソードが登場しました。
なお、福岡会場には木場進哉さん(「夜香木」)とDevender Sehgalさん(元マンダリンオリエンタル香港ビバレッジマネージャー)が、東京会場には長友さん、南雲主于三さん(スピリッツ&シェアリング代表取締役)、Deke Dunneさん(「Allegory」ビバレッジ&クリエイティブディレクター)が登場しました。
デモンストレーションで披露されたのは
木場さんによる酒粕焼酎ベースの「Last Word」、
デべンダーさんによる麦焼酎ベースの「Utsav(ウツァヴ)」、
東京会場の長友さんによる黒糖焼酎ベースの「SANEN-SAPIN〜サネン-サパン」、
デークさんによる米焼酎ベースの「The Vault」。
また、東京会場の南雲さんは、“焼酎のシグネチャーカクテル”としてレモンサワーの可能性について講義。
レモンサワーの魅力を、甘みと酸味のバランスやベースの焼酎から紐解きながらRTD開発の未来についてプレゼンテーションを行いました。

ベーシックカクテルのデモンストレーションを行う古澤さん。
第二部:世界基準を目指す6種の「ベーシックカクテル」。
第二部は、一般社団法人日本ホテルバーメンズ協会監修のもとに日本酒造組合中央会が考案した、本格焼酎&泡盛ベースの「ベーシックカクテル」を紹介。
6種の「ベーシックカクテル」は世界のバーシーンに本格焼酎&泡盛を届けるという思いで開発されたもので、レシピを考案した古澤さんが制作の背景やポイントを披露しました。
「世界の蒸留酒にはいずれも、それをベースにした代表的なカクテルがあり世界中のバーで認知されています。ところが本格焼酎・泡盛にはそうしたカクテルがありません。
次世代のクラシックカクテルに、という思いを込めて6種のカクテルを考案しました」
さまざまなツイストの余白を残した、6種のベーシックカクテル。そのレシピのポイントは
・汎用性が高く、世界中のどこでも手に入る材料で制作できること
・あらゆる銘柄/蒸留方法/原材料に対応でき、バーテンダーの個性や技でツイスト可能な余白があること
・海外の方にもわかりやすく、名前から内容を想像できるネーミングであること
各会場の一角には全6種の「ベーシックカクテル」のテイスティングコーナーが設けられ、来場者は思い思いにベーシックカクテルを味わっていました。

古澤さんが考案した「ベーシックレシピ」。上段左:泡盛ベースの「Ryukyu-Reviver/琉球リバイバー」。上段中:米焼酎ベースの「Bei-lini/ベイ(米)リーニ」、上段右:酒粕焼酎ベースの「Rice-tea Nail/ライス ティー ネイル」。下段左:麦焼酎ベースの「Barley’s Café/バーレイズ カフェ」。下段中:黒糖焼酎ベースの「Japones-Mojito/ハポネス モヒート」。下段右:芋焼酎ベースの 「I.M.O.(International Masterpiece Original)Rose/アイ・エム・オー・ローズ」。
バーテンダーが語る、本格焼酎の可能性。
座学からカクテルデモンストレーション、テイスティングまで、バーテンダーのニーズに応える実践的な内容で行われた「THE SHOCHU NAVIGATION」。
最後に、今回のセミナーについてゲスト講師たちの感想を伺ってみましょう。
長友さん「和酒ベースのカクテルはいまが好機」
「世界的な注目が高まっているいま、和酒ベースのカクテルをアピールする絶好のタイミングだと感じています。
地元のバーテンダーにとって、郷里の酒は馴染みが深すぎるゆえにその魅力を見失いがちですが、日本人バーテンダーが和酒を理解することで解像度があがり、よりクオリティの高いカクテルが生まれるはず。
今日のセミナーをきっかけにみなさんになにかしらの気づきや発見がもたらされ、さまざまなバーで本格焼酎・泡盛ベースのカクテルがオンメニューされていくことを願っています」
木場さん「Low ABVの潮流と本格焼酎の親和性」
「福岡会場にも多くのバーテンダーの方々が参加してくださり、國酒への関心の高まりを感じました。
自分自身も酒蔵さんや古澤さん、デベンダーさんの話を聞くことができて大変勉強になりましたし刺激を受けました。
自分も含め、壇上に上がった全てのバーテンダーが、現在の世界のカクテルトレンドである Low ABVのカクテルベースとして本格焼酎の可能性を挙げていましたが、ここの部分をさらに磨いていければ世界に広まるスピリッツになっていくはずです。
特に九州は本格焼酎や泡盛の生産の中心地です。自分も含め、そこに住む私たちがこのお酒の素晴らしさを広めていくための素晴らしい機会になったと思います」
南雲さん「世界が注目する“未知のスピリッツ”」
「バーテンダー以外にも酒蔵さん、酒屋さん、居酒屋さんなどの飲食店の方々など幅広い顔ぶれのみなさまにご来場いただき感謝です。
かつては、本格焼酎・泡盛をカクテルに仕立てることに積極的な蔵元さんは少数派でした。それが、酒造組合の皆様がぜひカクテルに…… とおっしゃられていることに大きな変化を感じています。
インバウンドの増加、本格焼酎の銘柄の多様さ、他のスピリッツが一巡したことなどが重なり、本格焼酎というまだ未知のお酒に世界のバーテンダーも注目し始めています。
今後は35〜42度の度数帯のアイテムの増加やラベルのグローバルデザイン化に期待したいところです。1人でも多くのバーテンダーにカクテルを作っていただくことで更なる可能性が見出されるはず。
革新的なカクテルの登場にご期待ください」

左から、長友さん、デークさん、古澤さん。
古澤さん「次世代クラシックへの挑戦」
「バーシーンにおける國酒の浸透はまだまだこれからですが、大きな可能性を秘めていると実感していることもあり、今回初めてプロフェッショナル向けのセミナーを開催することになりました。
國酒が浸透するためには、ジントニックやハイボールのように、レストランや割烹からカフェや居酒屋まで、あらゆる飲食店で気軽にオーダーできるようなレシピが必要だと感じています。
今日披露したベーシックカクテルは完成形ではありません。
バーテンダーのみなさんのアイデアやツイストによってみなさんのバーのスタンダードとなり、次世代のクラシックカクテルとしてさまざまな国のバーで根付くことを楽しみにしています」
世界のバーシーンにおいて更なる飛躍を遂げてくれそうな本格焼酎・泡盛。バーテンダーたちのクリエイティビティが本格焼酎・泡盛をどう発展させていくのか、今後の盛り上がりがますます楽しみです!
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