シリーズ:バーから2020を考える
その1 モクテル(ノンアルコールカクテル)問題
<後編>

PICK UPピックアップ

シリーズ:バーから2020を考える
その1 モクテル(ノンアルコールカクテル)問題
<後編>

new 15.08.2019 #Pick up

by「アルト・アルコ」

今月は、ノンアルコール専門インポーターとモクテル(ノンアルコールカクテル)に力を入れるバーオーナーが考えるモクテル問題。バーの視点で2020年を考える時、日本のモクテル・シーンには何が必要なのか。

文:Ryoko Kuraishi

モクテルを作る宮澤さん。「モクテルの副材としてお茶やコーヒーは既に業界内では周知されてます。渋みや苦みを生かしやすい。特に燻製紅茶はいい商材ですね!」

前編では、海外におけるモクテル(ノンアルコールカクテル)・シーンを伺いました。
後編ではそれを踏まえ、日本でのこれからの発展性についてお話しいただきます。


——まず、訪日観光客がますます増えると考えられる2020年、モクテルやノンアルコール飲料の日本におけるニーズってどうなっていくと思われますか?


安藤 健康志向の高まりからアルコールを飲まない人は世界的に増えていますし、宗教上の理由でアルコールを口にしない人も少なくない。
そういうインバウンド事情を考えると日本の飲食店も対応せざるを得なくなるのではないでしょうか。


そういえば、来年は禁酒法施行からちょうど100年目にあたるんですよね。
これからノンアルコールに力を入れていこうという飲食店にとっては、これも一つのきっかけになるのでは。

バーのムードを取るか、多様性を選ぶか

宮澤 バーの立場から言うと、たとえば葉巻とハードリカーを楽しでもらうようなバーではモクテルの提供が難しいという事情もあると思うんです。


バー独特の色気というんでしょうか、そういうムードを大切にしたいという店主は少なくない。
ハードリカーをコンセプトとするバーでモクテルを提供し始めたら出したら客層が変わってしまい、従来の顧客のニーズに応えられなくなるんじゃないかという心配は理解できます。
店主の色が出やすいというのも日本のバーの特徴ですから。


その一方で、お酒を飲まない、飲めない人にもバーの雰囲気や空気感を楽しんでもらいたい。
ですから僕自身はモクテルの可能性を発信していきたいという気持ちを持っています。


「ノンアルコールカクテルをバーで楽しむ」というイメージが定着していませんから、そういう雰囲気づくりを僕たちが積極的に行わなくてはいけませんが。


安藤 それには上質な飲料とそれに見合った空間、顧客層のそれぞれのバランスやマッチングを考える必要がありますよね。
例えば、お酒を飲まないと言われるミレニアル世代を例にとると、彼らは量は飲まないにしろクラフトビールやクラフトジンのようなちょっといいものを少しだけ嗜む、そこにお金を使うという文化はあるようなんです。


だからソーシャルライフの一環として素敵なバーに出かけ、そこで洗練されたモクテルを楽しむというライフスタイルが増えていくんじゃないでしょうか。

バジルスマッシュをアレンジした「Maybe not moctail」。本来、アルコールが与える複雑味や余韻を、ハーバルなシュラブとキュウリや唐辛子、ショウガなどのスパイスで表現。「ネーミングも敢えて曖昧な感じにしています」。

モクテル=ボタニカル・ドリンク!?

宮澤 日本のバーテンダーってやっぱり勉強熱心だし、材料一つ一つへの向き合い方が真剣だから、アプローチ次第で面白いモクテル文化が生まれるような気がします。
トロピカルカクテル、ミクソロジーカクテルのように、時代を反映するような新しいカテゴリーになる予感もありますね。


安藤 ただ、それには別の切り口、フックが必要だと思っています。
世界の潮流の方向性をそのまま日本で推し進めるのは難しいんじゃないでしょうか。


「ノンアルコールは飲めない際の妥協の飲み物」という、ネガティブなイメージが強いですから。
そのイメージをポジティブに変える戦略やパッケージングが必要ですね。


僕が考えているのは「ボタニカル・ドリンク」というイメージ戦略です。


戦略上のお手本はエナジードリンク。
従来の「健康ドリンク」には不調、つまりマイナスをゼロに持っていく”おくすり”的なイメージがありましたが、エナジードリンクはゼロをプラスに、健康だけどさらに元気になる、そういうイメージを持たせることに成功した。
こういうイメージアップをノンアルコール飲料の世界でやりたいですね。


宮澤 ネガティブ・イメージを払拭するにはクオリティの高さはもちろん、メッセージや理念などの裏付けも必要になる気がします。
バリスタやパティシエ、ソムリエなどビバレッジのスペシャリストの力添えがあれば、相乗効果が期待できそう。

シュラブの味わいが生きている「Appcinna-Oragin 」。

——今日は宮澤さんに、お店で出しているボタニカル・モクテルを再現してもらいました。


宮澤 1杯目は「シュラブ・オリジナル」と「シュラブ・ライム&ジュニパー」を使った「Maybe not moctail」。
バジルスマッシュをベースにした、アルコールカクテルのようなモクテルです。


オーストラリアのネイティブぺッパーベリーを使用したトニックウォーター「CAPI NATIVE TONIC」、バジル、キュウリ、チリ、新ショウガを加えています。


「シュラブ・オリジナル」はアニスとフェンネルのパンチが効いているので、そこを強調するとカクテルらしい甘酸味のバランスに仕上がるようです。


安藤 おおお!一口飲んで、これは絶対にアルコールが入っていると思いました。


宮澤 2杯目は「Appcinna-Oragin (アプ・シナ・オレ・ジン)」。
リンゴ、シナモン、オレンジ、ジンジャー のカクテルということで、それぞれの名称をもじったネーミングです。


「シュラブ・アップルシナモン」と「シュラブ・オレンジジンジャー」に、旬のフルーツの大石早生スモモを加えて。
スパイスの代わりにレモンとパプリカを多めに加え、引っかかりというんでしょうか、口当たりのアクセントとしています。

クラフトジンの中に普通にノンアルコールスピリッツが並ぶ、そんなバーカウンターが増えるといい、と安藤さん。

宮澤 カクテルにおけるアルコールのアタックがないので、その分、口の中の余韻や香りの広がりをどう表現するか。
バーテンダーの工夫やスキルを感じられるポイントなので飲み比べも楽しそうですね。


安藤 フレッシュでありながら、ちびちび飲みたいと思わせるドリンクですね。
カクテルの佇まいというのでしょうか、香りや余韻の広がりを持たせたモクテルを作ってもらうためにも、面白い商材を色々取り揃えたいですね。


宮澤 今度はどんなものを扱う予定なんですか?


安藤 ロンドンで造られているノンアルコールジンと、南アフリカのオーガニック原料で造られたノンアルコールジントニックの取り扱いを進めているところなんですが、現地でも規格のないノンアルコール飲料の輸入はなかなか難しくて……。
シーンに法整備が追いついていない状態です。
ですが、今年の秋冬ごろまでには「シュラブ」ベースのノンアルコールワインの輸入を予定しています。


宮澤 バーで扱える材料が増えたら、ノンアルコールのシーンは飛躍的に変わりそうですね。


安藤 酒販メーカーの大手もノンアルコールに乗り出していることですし、少し時間はかかっても必ず成熟するシーンだと思います。


——やはり2020年が日本でのシーンを加速させるきっかけになりそうですね。

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