PICK UPピックアップ
コーヒー×スピリッツ、
最強のコーヒーカクテルを探せ!
<後編>
#Pick up
大渕修一さん by「Mixology Bar Source 2102」
トップ画像は、ブドウのウォッカ、シロックとカシスリキュール、スウィートベルモット、バルサミコにクローブ、ナツメグ、ウッドチップの薫香を添え、赤ワインのようなフレーバーに仕上げた一杯。「コーヒーでシラーの風味に仕立てました」。シラーとカシスのソースをあしらったローストビーフとペアリング。Photos by Kenichi Katsukawa
コーヒーとアルコール。
同じ嗜好品でも、「取り扱いかた、味の組み立てかたは全く異なる」と話す大渕修一さん。
その違いこそが、コーヒーカクテルを面白くする要因でもある。
「カクテルメイキングと違って、コーヒーは同じ動作を反復練習しても、けっして同じ味を再現することはできません。
なぜなら、コーヒーは生き物だから。
その日の天候、気温、焙煎してから何日経ったか、豆に含まれる炭酸ガスの残量、酸化の具合……。
些細な条件の違いで全く異なる味わいに変わる、不安定な材料です」
その不安定なコーヒー豆の状態を見極め、ベストを引き出してやるのがバリスタの力量だ。
トップ画面のカクテルは「デカンタージュのニュアンスを加える」と、スローイングで仕立てた。ブラックペッパーで加えたスパイシーさがスペシャルティコーヒーが醸すベリー感とマッチする。¥1,400。
「たとえば最高のエスプレッソが最高のコーヒーカクテルになるかというと、決してそうではないんですね。
おいしいエスプレッソとは甘み、酸味、苦味のバランスの整った一杯のことですが、そこに酒という材料を加える際には、完成形のバランスを念頭において味わいの調整をしなくてはなりません」
コーヒーカクテルに仕立てる際、コーヒーは「酸味」の素材として加えるのだという。
多くのカクテルは甘みと酸味、時に苦味のバランスで仕立てるが、ライムやレモンのように酸味を添える副材料としてコーヒーを用いるのだ。
「コーヒーは苦味じゃないの?と思われるかもしれませんが、スペシャルティコーヒーの持ち味は豊かでさわやかな酸味。
さらに焙煎を浅く仕上げたり、酸を強調するよう抽出時間を抑えたりすることで、コーヒー豆のフレッシュな酸味をより引き立てることができます」
こちらは今年のチャンピオンシップ日本大会を制したシグネチャーカクテル。(写真提供:一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会)
だから大渕さんが店で使うのは、信頼できるロースターにお願いし、焙煎の段階から細かくリクエストを入れた特別な豆だ。
たとえば、いま店で提供しているエチオピア産のスペシャルティコーヒー。
チョコレートのような風味とフルーツのようなやわらかな酸味が特徴の豆だが、生豆を精製する際、「ナチュラル」と呼ばれる方法で処理を行ったものをチョイスする。
「『ウォッシュト』と呼ばれる処理方法では、豆から皮と果肉を取り除き、乾燥させて焙煎します。
豆本来のクリーンな味わいが楽しめる処理方法です。
対して『ナチュラル』は、収穫したコーヒー豆の果肉をつけたまま乾燥させる方法です。
『ナチュラル』で仕上げた豆の酸味は、まるでフレッシュなべリーのような風味。
これに砂糖を加えるとますますベリーに近くなる。
ショコラの甘さ、ベリーのような酸味……ときたら自然と『ブランデーに合わせよう』と思いませんか?
スペシャルティコーヒーは何かしらフルーツの個性を感じさせるのが特徴ですが、カクテルに仕立てるときはフルーツと同様、酸味の材料と考えるとレシピを構築しやすくなります」
西麻布・Bar Amber出身。バックバーにはミクソロジストらしく自家製シロップなども。
「フレッシュフルーツを使ったコーヒーカクテルもありますし、ミクソロジストにとってコーヒー豆は、フルーツの一つとして使われる素材ですね」と大渕さん。
レシピを組み立てるときは、コーヒー豆の味わいを紐解き、その酸がどのフルーツに属するものかを解明するのが鍵なのだそうだ。
たとえばリンゴを感じさせる酸ならカルヴァドスを合わせて。
柑橘系の酸味を思わせる豆は、カシスリキュールとオレンジのピールを合わせてもいいし、あるいはフレッシュなパッションフルーツとも相性抜群。
濃厚な味わいのコーヒー豆ならメロンと……。
ペアリングの可能性は無限である。
大渕さんがこのようにコーヒーと様々なスピリッツ、リキュールを合わせてペアリングの可能性を探れるようになったのは「コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ」に参加するようになったおかげだとか。
ここ、「Mixology Bar SOURCE 2102」から、バー・ホッパーたちにコーヒーの魅力を広めつつ、コーヒーとアルコールの最強のペアリングを届けていきたいと意気込みを語る。
コーヒーとミクソロジー。
異なるジャンルの知識や経験を味方に、バーの世界に新たな楽しみをもたらしてくれそうな大渕さん。
彼と彼が作り出すコーヒーカクテルに引き続き、ご注目を!
SHOP INFORMATION
Mixology Bar Source 2102 | |
---|---|
東京都港区東麻布2-10-2 関口ビル1階 TEL:03-6441-2870 URL:http://sn-bar2102.spiral-place.com/ |