コーヒーカクテルの最高峰を目指せ!
話題のコンペをリポート。
<後編>

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JAPAN COFFEE IN GOOD SPIRITS CHAMPIONSHIP by「一般社団法人 日本スペシャルティコーヒー協会」

6人のバーテンダー&バリスタが、オリジナルコーヒーカクテルとアイリッシュコーヒーでしのぎを削った「ジャパン コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ2019」。果たして頂点に輝いたのは?!

文:Ryoko Kuraishi

優勝はクラブバリエ 日牟禮カフェの圖師聡さん(左)。パンチの効いたアイリッシュコーヒー(右)が高く評価された。

類を見ないハイレベルな戦いだったという「ジャパン コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ2019」決勝大会。


全てのドリンクを試飲した大渕さん曰く、「全体的にアルコールへの理解が深まり、これまでの『コーヒーの味わいを損ねないドリンク』から、『コーヒーの特性を生かしつつ、そこにない要素をアルコールで表現する』ドリンクが多く、大会そのものの成熟度を感じた」。
競技者のレベルも格段に上がっていると感じたそう。


さて、気になる結果は……


藤倉さんは惜しくも2位、前年度優勝者の圖師聡さん(クラブバリエ 日牟禮カフェ/滋賀県)が2連覇を果たし、6月にベルリンで開催される世界大会へ出場することになった。

圖師さん、藤倉さん以外にも、ユニークな視点のプレゼンテーションが会場を沸かせた。

それでは競技後の藤倉さんのコメントをご紹介しておこう。


今回の競技を振り返って。
「バリスタの大会の難しいところは、メインの素材(コーヒー)を作り出すところからスタートする点にあります。
無限にある豆から一つを選び、さらに焙煎法や抽出までをトータルで考えなくてはいけませんから、スタートラインに立つまでに時間がかかります。
それが、コーヒーの世界の面白さなんですが」


バーテンダーがスペシャルティコーヒーを取り入れるためのポイントは?
「バーではスペシャルティコーヒーの認知度がまだまだ低いので、バーテンダーはとにかくたくさんのスペシャルティコーヒーを味わい、経験値を上げることが必要だと思います。


スペシャルティコーヒーならではのフルーティな酸味や甘味は、バーの中になかったフレーバーです。
副材料として実にユニークなので、これをうまく扱えるようになればレシピに無限の可能性が広がるでのではないでしょうか」

こちらは圖師さんのデザイナードリンク。ペドロヒメネスとケテル ワン、自家製シロップとレモンジュースにスパークリングワインを合わせた。

バーテンダー向けのコンペティションとこの大会の戦い方の違いとは?
「前回、この大会に出場してアプローチの違いを実感しました。
バーテンダーのコンペはまずコンセプトありき。
それを自分なりにプレゼンするための表現力やエモーショナルな部分が重要ですが、バリスタの大会はよりロジカル。
コンセプトよりもまずは味わいを重視したジャッジメントだと思います。


バリスタ向けの大会では、スコアシートを見れば何をどうすれば得点になるのかわかりますから、多く加点されるようにポイントを詰めていくのがポイントです。
今回、ドリンクの構成はバーテンダー視点で行いましたが、プレゼンテーションについては昨年の反省を生かし、ロジカルな内容に変えました」

左は3位の宮本陽介さん(RUDDER COFFEE シャポー船橋店)、右は田中恭平さん(UNLIMITED COFFEE BAR)。

優勝した圖師さんのカクテルも紹介しておこう。


昨年の世界大会出場をきっかけに、コーヒーやアルコールに対する考え方が大きく変わったという圖師さん。
特にアイリッシュコーヒーは、大渕さんをして「今大会で最も印象に残ったカクテルの一つ」と言わしめるほどの完成度だった。


「前回のジャパンファイナル後、とある方に『バリスタが作るコーヒーカクテルはコーヒー感がヘビーで、バーテンダーが作るコーヒーカクテルはコーヒー感が軽い、そういう印象がある』と言われました。
それがずっと頭に残っていて、今年のカクテルのテーマにもなっています。


コーヒー感がヘビーなカクテルは『1杯飲んだらもう十分』となりがちですが、今回は、インパクトはありつつももう一杯飲みたいと思ってもらえるようなカクテルを目指しました」


圖師さんが提供したのは、ストロベリーやプラムの印象を与えるイエメンのコーヒーをベースに、グレンモーレンジィとティーリングの2種のウイスキーを合わせたアイリッシュコーヒーと、ペドロヒメネスとケテル ワン、自家製シロップとレモンジュースにスパークリングワインを合わせた軽やかなデザイナードリンクだ。


アイリッシュコーヒーはしっかりとしたアルコール感、フルーティなコーヒーの酸味を際立たせながら自家製シロップで加えた甘味で骨太の印象に。
デザイナードリンクはスパークリングで軽やかに仕上げて「次につながる」カクテルとしてジャッジたちにインパクトを与え、優勝を引き寄せた。

トップ3に輝いた3名。宮本さん(左から2番目)、圖師さん(中央)、藤倉さん(右から2番目)。

最後に大会の総括を大渕さんに伺おう。
まずは印象に残ったカクテルについて。
「テイスティングをした中で印象に残っているのは、他のアイリッシュコーヒーとは明らかに違う味わいを突き詰めていた圖師さんのドリンク。
アイリッシュコーヒーという味わいの方向性や素材が決まっている中で、オリジナリティを表現していたと思います」


大会全体の感想も伺った。
「以前はスペシャルティコーヒー自体が主役になっていて、そこにフォーカスしたプレゼンが多かったように思います。
味わいも、コーヒーが主軸になっていて、副材料にはコーヒーを邪魔しないことを求められていました。


が、ここ数年、コーヒーカクテルへの理解自体が格段に深まり、バリスタがアルコールの知識を深める中で、コーヒーとアルコールのマッチング自体に多様性が生まれました。
コーヒーにないニュアンスをアルコールで添えるなどアルコールを加える意味を持たせることで、素材同士のケミストリーが生まれるようになっています。


コーヒーとアルコール、どちらへの理解も深めることでよりクオリティの高いコーヒーカクテルが生まれることを期待しています」


ぐんぐんレベルアップしていくコーヒーカクテルの世界。
6月の世界大会の結果をお楽しみに!

SHOP INFORMATION

一般社団法人 日本スペシャルティコーヒー協会
東京都港区新橋6-1-11 Daiwa御成門ビル
URL:http://scaj.org/activity/competitions/jcigsc/jcigsc-overview

SPECIAL FEATURE特別取材