Alembic Gin:海外から最注目のクラフトジンの造り手登場!
金沢発「Alembic大野蒸留所」に迫る。<前編>

PICK UPピックアップ

Alembic Gin:海外から最注目のクラフトジンの造り手登場!
金沢発「Alembic大野蒸留所」に迫る。<前編>

#Pick up

中川俊彦/Nakagawa Toshihiko by「Alembic大野蒸留所」

2022年夏に発売をスタートするや、世界的な賞を立て続けに受賞!今月は、日本のクラフトジンの風雲児として注目されている「Alembic大野蒸留所」にフィーチャーします。

文:Ryoko Kuraishi

ファウンダーの中川俊彦さん。

IWSC(インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション)2023 最高金賞(Gold Outstanding)、同コンテンポラリージン部門最高賞(Trophy)、SFWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション)2023 最高金賞(Double Gold)……

立ち上げ間もない蒸留所が、世界規模の品評会で軒並み高評価を得ている!……ということで、一躍、話題になっているのが、金沢市大野にある「Alembic(アレンビック)大野蒸留所」。

金沢港に近い大野町は、北前船が行き来していた時代の風情が色濃く残る町。

かつては60数軒の醤油蔵・味噌蔵が連なっていたという発酵の町だ。

ここに金沢初のクラフトジン蒸留所ができたのは2019年のこと。

「Alembic大野蒸留所」を創設したのは、2018年に東京から金沢へ移住した中川俊彦さんだ。

醤油蔵が立ち並び、北前船が往来していた歴史を感じさせる大野に誕生。大きな赤い扉が目印だ。

目指したのは「ドリンカブル」、おかわりしたくなるジン。

もともとはクラフトビールを造ろうと思い、横浜や横須賀のブリュワリーで経験を積んできたという中川さん。ところが…… 。

「いつかはビールの原材料でクラフトジンを造ってみたいという希望はもっていましたが、海外のクラフトスピリッツのムーブメントを目の当たりにして、クラフトスピリッツの自由さに惹かれました。

他業界から飲食業界に転身した理由は『食体験を高めるものづくり』を志したことにありますが、それにはビールよりもジンのほうが、食中酒としてのポテンシャルが高いように感じたのです」

というのも、クラフトビールは食事と合わせるにはいささか重い。

その点、飲み方によって表情を変えられるジンは食との親和性が高く、食中酒としての可能性を秘めているように思われた。

「ビールへの思いが強かったので悩みましたが、やはり『食』にフォーカスを当てていこうと、クラフトジンに舵を切りました」

来春には樽熟成をかけた「Alembic Gin HACHIBAN Barreled 2023」を発売予定。「Alembic Gin HACHIBAN」をポルトガル産マデイラワイン樽に半年間寝かせてボトリングする。日本ではまだポピュラーでない樽熟成ジンをお楽しみに。¥8,800(予価)。

目指したのは、食中に飲んで飲み飽きない、ぐんと食に寄せたクラフトジンだ。

海外のジンやボタニカルにまつわる文献を読み漁り、レシピ開発をスタート。

また、知人からの紹介で元・富士御殿場蒸留所の名ブレンダー、鬼頭英明さん(現「五島つばき蒸留所」)と出会い、弟子入りを果たした。

「国内のクラフトジンを飲み比べて思ったのは、地場の素材をキーボタニカルに用いるなど、それぞれが造り手の個性を表したものづくりをしているということでした。

それはそれで面白いのですが、『食事に合わせる』と考えると、尖ったところを抑えて全体的なバランスのいい味わい・香りがよさそうだと思いました」

そうして作った25種類のレシピを元にテスト蒸留を行い、中川さんのお眼鏡に適った味わいがレシピの8番。

商品名「Alembic Gin HACHIBAN」のHACHIBANは試作レシピの番号に由来している。

グレープフルーツを思わせるフレッシュな柑橘の香りが印象的な「HACHIBAN」は、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、カカオニブ、レモンピール、オレンジピール、クロモジ、アンジェリカルート、カシアという8種のボタニカルで構成されている。

これを、近隣の醤油蔵も仕込みに用いている、白山の伏流水で仕込む。

ミョウガに合うジン?!

おすすめの飲み方はロック、ソーダ割り、そしてぬる燗。

お燗した日本酒を冷やす「燗冷まし」という飲み方があるが、中川さんのおすすめはこの「燗冷まし」。こうするとボタニカルの香りが際立つそう。

「ガーニッシュにはドライのオレンジスライスを1枚。ライムだと柑橘が強すぎてしまいます。

料理に合わせるなら、和の薬味系。ミョウガや大葉などすっきりした香りを引き立ててくれます」

米どころ・金沢発のクラフトジンということで、今後は地元の酒蔵の酒粕を使用したオリジナルのベーススピリッツづくりにも挑戦する予定だ。

さらに、ジンに用いるボタニカルを使ったフレーバードラムやノンアルコールスピリッツも造ってみたいとか。

中央は定番の「Alembic Gin HACHIBAN」。左は「Alembic Gin HACHIBAN 群青ストレングス」。アルコール度数を高めて(57%)、芳香成分である精油を通常より多く含ませている。800本限定、¥6,500。

Alembicのものづくりを支える食コミュニティ、「OPENSAUCE」って?

ここで中川さんのプロフィールを。

中川さんはアパレル業界から映像製作会社に転職、長くクリエイティブ業界に身を置いた後に食業界に足を踏み入れたという異色のキャリアの持ち主だ。

「洋食のシェフとして腕を振るっていた父の影響を受け、別業界に進みながらも、食の世界への憧れを抱いていました。

お酒の世界へ進むきっかけを作ってくれたのは、南青山のスコティッシュパブ『ヘルムズデール』(当時。現在は渋谷と軽井沢で営業中)のオーナー、村澤(政樹)さんの存在です。

ここに入り浸るようになって洋酒の文化や世界観に触れ、食体験のひとつとしての酒に興味をもつようになりました」

飲食業界の入り口となったのは、当時、黎明期にあったクラフトビール。製造からビアパブの経営までを行う横浜のビール会社に入社し、サービス部門に所属しながら休日など時間を作っては、醸造部で製造研修を受けた。

その後、別の醸造所へ移り、独立の準備を始めた。

「当時住んでいた大磯あたりで300リットル程度の小規模なブリューパブを開くことを目標に開業準備をしていた矢先、金沢に移住していた古くからの知人が、『食と農に最先端の技術を融合して、今の時代だから可能なことをやりたい』と、『OPENSAUCE』という会社を立ち上げたんです。

そもそも金沢には食の歴史や独自の文化があり、食材を取り巻く自然も豊か。

さらに、『OPENSAUCE』周辺には杜氏や農家、蔵元、料理人といった食のクリエイターが集まってきていて、新たにものづくりを始めるにはぴったりの土地だとピンときました」

勧められるままに、直感的に金沢への移住を決め、2019年に蒸留所を設立。2022年8月に製造を開始し、現在に至る。

後半では、「Alembic大野蒸留所」を支えるエッジィな食のコミュニティ、「OPENSAUCE 」についてレポートします!


後編に続く。

SHOP INFORMATION

Alembic大野蒸留所
石川県金沢市大野町4丁目ハ17
URL:https://alembic.jp

SPECIAL FEATURE特別取材