コーヒーカクテルの最高峰を目指せ!
話題のコンペをリポート。
<前編>

PICK UPピックアップ

コーヒーカクテルの最高峰を目指せ!
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<前編>

#Pick up

JAPAN COFFEE IN GOOD SPIRITS CHAMPIONSHIP by「一般社団法人 日本スペシャルティコーヒー協会」

コーヒーカクテルの最高峰を決める「ジャパン コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ2019」。先日開催されたジャパンファイナルの模様をお送りしよう。

文:Ryoko Kuraishi

指定ドリンクの一つ、アイリッシュコーヒー。今年はスコッチウイスキーを使ったレシピが多かった。

「ジャパン コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ(JCIGSC)」はオリジナルのコーヒーカクテルを競うコンペティションだ。
競技会のルールは「World Coffee In Good Spirits Championship(WCIGSC)」に則っており、日本大会の優勝者が日本代表としてWCIGSCに参加、世界チャンピオンを目指す。


まずは競技のルールを紹介しょう。
競技者は、10分間の競技時間内で合計4杯を作成する。
予選・決勝大会では、2名のテイストジャッジにアイリッシュコーヒー2杯と、コーヒーを使用したデザイナードリンク2杯(ホットもしくはコールド)を作成する。
なお、デザイナードリンクには「ケテル ワン」を、どちらかのドリンクに「モナン シロップ」を使用する。


求められるのは、コーヒーそのもののクオリティの高さとコーヒー×スピリッツのフレーバーが醸し出すシナジー。
こうした味わいに加え、ドリンクのビジュアル、市場性、プレゼンテーションの完成度の高さがジャッジされる。


ジャッジはヘッドジャッジのほか、テイスティングを行うセンサリージャッジ2名、ビジュアル&テクニカルジャッジ1名、シャドージャッジの計5名によって行われる。

競技を行うのはこちら。競技者は10分の持ち時間でカウンターの設営を行う。競技中はカウンターの手前にヘッドジャッジと2人のテイスティングジャッジが、カウンターの向こうにシャドージャッジがスタンバイ。

解説を務めるのは、2013年、2015年と同大会の日本代表として世界大会に出場している大渕修一さん。
全てのドリンクをテイスティングの上、バーテンダーの視点を加えてドリンクの解説を行う。


決勝大会には東京・大阪の2会場から勝ち上がった上位6名が出場した。
「Beefeater Global Bartender Competition」2016世界大会ファイナリストの藤倉正法さん(Bar×Bar×Bar WATARASE/栃木県)もその一人だ。


プレゼンテーションの冒頭で自ら、「バーテンダーとバリスタの中間的な立場にいる」と語った藤倉さん。
初めてのファイナルを藤倉さんはどう戦ったのだろうか。
そのプレゼンテーションを見てみよう。

4番目にプレゼンテーションを行った藤倉さん。

藤倉さんが2つのカクテルのベースに選んだのは、ブドウのようなフルーティさと酸味を持つ、グアテマラのスペシャルティコーヒー「ラ・リベルタッド」。


「感覚的にはバリスタではなくバーテンダーの目線でレシピを作っています。
バーで使われるコーヒーはビターなものが多いので、そういうコーヒーばかりではないということと、副材料としてのコーヒーの面白さをアピールしてみたいと思い、このデザイナードリンクを創作しました」(藤倉さん)


「濃縮感のある、干しぶどうのような香りを表現する」というアイリッシュコーヒーは、バーでも導入しやすいエアロプレスを使ってプレゼンテーションを行った。


アイリッシュコーヒーに使用したウイスキーは、ブドウの香りを引き出すノンピートのタラモアデュー。
シュガーシロップでシンプルに甘味を整える。


ウイスキーとシュガーシロップに100℃のお湯を注ぎ、アルコール分を適度に飛ばすことで渋みを軽減する。
これを抽出したコーヒーと合わせ、BIRDY.シェイカーでステア。
クリームは、動物性と植物性とコンパウンドのものをブレンドしてミルクの香り(乳臭さ)を軽減することで、コーヒーのブドウフレーバーを立たせる。


温かいコーヒーと冷たいクリームのコントラストが楽しめる一杯に。
提供温度は60度、干しブドウのような香りを感じさせる温度帯だという。

藤倉さんのデザイナードリンクは液体窒素を使った、ブドウのようなフレーバーを際立たせたカクテルだ。

デザイナーズドリンクには、バタフライピーをインフューズドしたアモンティリャードに少量のヴェルジュ(未熟ぶどうのジュース)と自家製のコーヒーシロップ、急冷した「ラ・リベルタッド」(液体窒素で凍らせてからグラインダーで挽き、78度の湯温でペーパードリップ抽出したコーヒーを急冷したもの)を合わせる。


アモンティリャードの、バターのような塩気のあるフレーバーがブドウの香りを複雑化させると同時に、ヴェルジュで酸味を、コーヒーシロップでボディ感を強調する。


コーヒーシロップはケテルワンに「ラ・リベルタッド」の豆をインフュージョン、モナンのシュガーシロップを加えたものだ。


これらの材料をドライシェイク、グラスに注ぎ、仕上げにノルデスと液体窒素を混ぜ合わせてグラスへ。
グラスに閉じ込めたフローラルな香りを楽しんでもらおうという試みだ。
ジャッジのテイスティング直前に、白いバラのローズウォーターをアトマイズしてプレゼンテーションを終えた。

アルコールの特性までを掘り下げ、コーヒーとのマッチングを解説してくれた大渕さん。

「抽出の仕方や焙煎などコーヒーに関する情報が厚く、見応えがあった」と好評だった藤倉さんのプレゼンテーション。
競技後の大渕さんの解説をご紹介しよう。


「バーでエスプレッソマシンを導入することは、技術面はもちろん、物理的にもハードルが高い。
その点、エアロプレスで抽出するという提案が、バーテンダー目線で考えると非常に現実的で可能性を感じさせてくれる内容でした。


アイリッシュコーヒーは、アイリッシュウイスキーならではの優しい味わい。
一体感がありました。
デザイナーズドリンクは、まるでワインのように爽やかな飲み口で、食中でも飲めるコーヒーカクテル。
酸味、甘味もキレイでコーヒー感が少なく、新しい可能性を感じさせます。


ここまでコーヒー感が少ないと、「攻めている感』がありますが、どう評価されるか楽しみです」


果たして結果はいかに!?


後編に続く。

SHOP INFORMATION

一般社団法人 日本スペシャルティコーヒー協会
東京都港区新橋6-1-11 Daiwa御成門ビル
URL:http://scaj.org/activity/competitions/jcigsc/jcigsc-overview

SPECIAL FEATURE特別取材