バーから考えるサステナビリティ
びんをリユースして循環型社会へ!
<前編>

PICK UPピックアップ

バーから考えるサステナビリティ
びんをリユースして循環型社会へ!
<前編>

#Pick up

戸部昇/Tobe Noboru by「トベ商事」

形あるものをゴミにせず、長く生かす工夫をこらして有効活用するというリサイクル。今の時代、当たり前になりつつあるリサイクルの、日本におけるパイオニア。今月は、びんのリユースに焦点を当てます!

文:Ryoko Kuraishi

2021年に足立区入谷に新設した洗びん工場。こちらの大型洗びん機では1日25,000〜30,000本を洗浄することができる。

日本のガラスびんリユースの歴史を振り返る。

日本でびんが流通するようになったのは明治期半ばごろだという。

そんな黎明期にびんのリサイクル事業を始めたのが、東京に拠点を構えるトベ商事。創業はなんと、1893年!

「私で4代目ですが、初代はもともと煎餅屋を営んでいました。

ある日、釣り仲間である酒蔵のご隠居に『西洋では酒はガラス製のびんで売られている。今後、日本でも徳利からびんにシフトする』と言われたことがきっかけで、びんに目をつけたようです。

当時、国産ビールの販売開始に伴い、びんの需要は拡大しつつありました」(トベ商事4代目戸部昇代表取締役)

当時、大八車を引いて廃品を集める資源回収業者がいたが、彼らからびんを買い取っているうち、大量のストックを抱えるようになった。これを酒の問屋にまとめて譲ったところ、想像以上に大きな利益が生まれた。

それで本業をびんに振り切った、というわけ。

「リサイクルという言葉がない時代から、使用済みのびんを回収し、市場に戻すという活動に取り組んできたのです」

回収・選別を終えたびん。この段階ではびん側面のラベルはそのまま。高温本洗浄の段階で剥がした紙製ラベルのくずは、王子製紙との取り組みによりパルプに戻すリサイクルが行われる。ただし、プララベルが混じるとリサイクルできない。というわけで、回収に出す際はびんのプララベルを剥がしましょう!

その後、2代目の時代になると、近隣にある北区大蔵省醸造試験場で日本初のスパークリングワインの生産をスタート。

酒税局の役人から、なんと3000本ものびんのオーダーが入ったそう。

第二次世界大戦後、びん工場の復興には時間がかかったことから、昭和30年代後半まではリユースの需要が高かったようだ。

大きな変化が訪れたのは昭和50年代に入ってから。

ビールはびんから缶へ、牛乳は紙パックへ、醤油はペットボトルへというように、容器革命が起きたのだ。

社会の動向から、今後は使い捨ての容器が増えてくるのだろうと判断し、トベ商事は缶やペットボトルの資源化を含むリサイクル全般に舵を切った。

それでも、びんのリユースをなくてはならないという強い思いを抱き、洗びん事業を継続させている。

2度の高温洗浄を終えたびん。ラベルはきれいにはがれている。検査員が目視で口と胴部をチェックし、洗い残し・すすぎ残しを確認する。この後、水滴除去→滅菌→びん内乾燥→びん内残水除去→高解像度デジタルカメラを使っての検査が行われる。

「というのも、洗浄して再利用することにより環境負荷を抑制できるガラスびんは、洗びん加工の面からも、非常にリユースに適した容器だからです。

これからの時代、資源の有効活用を考えた時に、容器は消費するものではなく生かすものであるというマインドセットが必要だと考えています。

そこで、他のびん商(びんの回収・洗浄・再販を専門に行う事業者)と連携して、リユースを促す試みを考えました」

その施策の一つが、生協との取り組みだ。

びんのリユースにおいては、使用済みびんの効率的な回収がポイントになるのだが、その点、生協は宅配のシステムが整っており、リユースに取り組みやすい。

「現在は生協で回収した、年間約550万本のびんを洗浄し、リユースしています。全国区の回収は難しいですが、一定の地域内で回収システムを備えた事業者と協働することでリユースを促すことは可能だとわかったのです」

高解像度デジタルカメラの検査を通過したびんは、目視での最終確認を終えて箱詰めされ、出荷準備へ。酒類や食品メーカーのびん詰め工場に送られる。

一般的なリターナブルびんのリユースフローはこんな感じだ。


酒類や食品メーカーのびん詰め工場から、流通・販売店へと製品が出荷される。

消費者のもとへ。

消費者は、販売店もしくは行政が行う資源回収へ使用済みのびんを出す。

びん商が、販売店もしくは行政から使用済みびんを回収。洗びん工場へ。

洗浄済みのびんを酒類や食品メーカーのびん詰め工場へ。このとき、リユースできなかったびんはカレット工場へ送られてカレット(ガラス屑)となり、製びんメーカーのもとで新しいびんの原料としてリサイクルされる。

この一連のながれは流通、酒造、びん商・洗びん業、コンテナレンタル業との連携で実現しているものだ。

この工場でリユースしている主要なびん。お燗びん、各種720mlびん、一升びんほか、調味料やジャムなどのびんを洗浄している。

SDGs時代のリユース事情。

次に酒類業界のガラスびんのリユース事情を見てみよう。

酒びんに関して、現在、トベ商事が洗びんしているのは、主に清酒や焼酎メーカーなどの300~720mlびん。

外食産業では2009年からワタミの店舗で扱うPB日本酒の2種類の300mlの酒びんについて、回収→洗浄→再充填→流通→販売というフローを構築している。

リユースにはコストも手間もかかるけれど、SDGsが言われ始めたころから一気に問い合わせが増えたそうで、自分たちの商品や事業で社会に貢献しようという意識の高まりを感じているそう。

「リユースの盛り上がりをつぶしてはいけないという責任感から、トベ商事では、事業者の思いを実現できる方法を考えます。

実際に生協やワタミで行われている取り組みはいずれも、一組合員や一社員から声があがって実現したもの。

リユースには、『もったいない』とか『何かに再利用できないか』という一般の生活者の視点が欠かせないのです。

こうしたリユースの意識を、今後も大切に広げていかなくてはいけません」


後編では、酒類メーカーが新たに始めたリユースプロジェクトをご紹介。

「酒類については今後、メーカーや酒販小売店とのさらなる連携により、効果的なリユースができる」と戸部さんは言うが、そうした連携の一例としてウェルネスジンの取り組みにフォーカスします。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

トベ商事
(本社)東京都北区王子5-10-1
TEL:03-5902-3202
URL:https://www.tobeshoji.co.jp

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