ネクスト・クラフトコーラはこれだ!
ちょんまげ醸造家が造るクラフトジンジャービア。<前編>

PICK UPピックアップ

ネクスト・クラフトコーラはこれだ!
ちょんまげ醸造家が造るクラフトジンジャービア。<前編>

#Pick up

Shoot Koichi/周東孝一 by「しょうがのむし」

ノンアルコール・クラフトドリンク市場で今年、どりぷらが注目するのは、ジンジャーエールの元祖・ジンジャービア。埼玉県のちょんまげ起業家が手掛ける、県内産“発酵ジンジャーエール”のお味とは?!

文:Ryoko Kuraishi

1度目にしたら忘れない!ちょんまげと着物姿がアイコニックな周東さん。ちょんまげ歴は2020年7月からで、ちょんまげ埼玉県代表を務める

ジンジャービアで、埼玉から世界へ!

お酒は好きだけれどもしくは今日はシラフを楽しみたい。あるいは、好きだけど量を控えている……、多様化するライフスタイルからノンアルコール&ローアルコールのドリンク需要はますます高まっているけれど、そんなノンアル市場のアップカミングがこのジンジャービアだ。

今回ご紹介するのは、メイド・イン・ジャパンのジンジャービア、“発酵ジンジャーエール”こと「GINGER SHOOT」。

なぜ埼玉でジンジャービア?その鍵を握るのが、ちょんまげと着物姿が印象的な、「しょうがのむし」の代表を務める周東孝一さん。

周東さんが設立した「しょうがのむし」は日本で初めて、ジンジャービア(発酵ジンジャーエール)を専門に醸造する企業である。

ライチを思わせる華やかな香りの、リュウガンの花のハチミツをつかった「GINGER SHOOT honey bee 」。

もともとお酒好きだった周東さんは大学卒業後、大手酒販店に就職する。

数年の会社員生活を送るも世界への探究心を抑えられず、唎酒師となって台湾へ。現地の日本料理店で専属唎酒師として活躍していたこともあった。

そんな周東さんがクラフトドリンクの世界に飛び込んだのは、台湾にある妻の実家で自家製ジンジャービアを振る舞ったことがきっかけ。

実家には近所からもらったショウガが大量に余っていたことから、それを消費できそうなジンジャービアのレシピを検索。

台湾は自家醸造が違法ではないということもあり、レシピにアレンジを加えてアルコール入りのジンジャービアを造ってみたら、これが予想以上にうまくできた。

義両親がたいそう喜んでくれ、隣近所に配り始めたところ、これが評判に!なんと、近所の人たちも同様に造るようになったとか。

味の良さはもちろん、身体を芯から温めてくれる生薬のパワーが、暖房器具のない台湾の冬にマッチしたようだ。

見沼区の休耕地を活用したショウガ畑にて。

休耕地を活用して、地元でショウガづくりをスタート。

日本に帰国後も、「自分が造ったものでみんなに喜んでもらえたという感動が忘れられなかった」という周東さん。

そんな思いを抱えていたある日のこと。当時、周東さんは野菜や卵を市内の農家から直接購入していたのだが、いつものように農家に買い出しに行く途中、ふと周囲にある休耕地に目が留まった。

「調べてみると、ここではかつてショウガ栽培が盛んだったとありました。

『休耕地とショウガで、なにかできるんじゃないだろうか』って、点と点がつながって地元産ジンジャービアという一本の線になったんです」

さいたま市内に見つけた空き家を改装した醸造所。

ここでジンジャービアについて、おさらいを。

ジンジャービアとは18世紀にイギリスで生まれたドリンクで、ショウガ、スパイス、砂糖を発酵させて造られる。

発酵過程で生じる天然ガスを利用した発泡ドリンクだ。

現在はノンアルコールドリンクとして定着しているけれど、かつてはアルコール度数10%以上のものもあり、Ginger Beer(ジンジャービア)と呼ばれるようになった。

禁酒法時代にはノンアルコールのものが造られるようになり、アルコールの代用品として飲まれただけでなく、まずい密造酒を飲みやすくするための割材としても重宝された。

その後、さまざまなカクテルが生まれたことはご存知の通り。

ちなみに現代のイギリスでも、自家製ジンジャービアを手造りする家庭も少なくないとか。

濃縮シロップを炭酸で割るジンジャーエールとの大きな違いは、発酵のプロセスを経ているか否か。

発酵によって味わいに深みをもたせた「GINGER SHOOT」は伝統の製造方法をなぞっており、味わいもかなりの本格派。

「『GINGER SHOOT』はそのままストレートで飲んでいただいて飲みごたえがありますし、モクテルの副材料としても高いポテンシャルがあります。

そしてもちろん、カクテルにもおすすめです。ご存知のようにモスコーミュールやシャンディガフはもともと、ジンジャービアを使って作られていました。

現代のレシピはジンジャーエールに置き換わってしまいましたが、ぜひ本物のジンジャービアを使ったレシピでクラシックカクテルを味わっていただきたいと思っています」

では、どんなベーススピリッツ、素材との相性がいいのだろうか?

後編では、大宮のカクテルバー「The Bar Vieux Carre2(旧「The Bar Sazerac」)」のオーナーバーテンダー、山下泰裕さんにご協力いただき、「GINGER SHOOT」とさまざまなスピリッツやスタイルとの相性を検証する。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

しょうがのむし
埼玉県さいたま市見沼区大谷1262-3
TEL:050-5579-4606
URL:https://ginger-bug.com

SPECIAL FEATURE特別取材