バーのネクストトレンドはカカオ?!
生のペーストからカカオドリンクを作ろう!
<前編>

PICK UPピックアップ

バーのネクストトレンドはカカオ?!
生のペーストからカカオドリンクを作ろう!
<前編>

#Pick up

Yoshino Keiichi /吉野慶一 by「Dari K」

バーの次なるトレンド食材はカカオ?!そんな期待を抱かせる画期的なカカオグラインダーが誕生した。京都のビーントゥバー専門店が開発したグラインダーから、バーにおけるカカオのポテンシャルを考察する。

文:Ryoko Kuraishi

「Dari K」の吉野さんとカカオグラインダーの最新モデル。ご覧のとおり、バーカウンターにもすっぽり収まる小型サイズだ。今月からいよいよ量産スタート!

2011年に京都で創業し、インドネシアでのカカオ豆の調達からチョコレートの製造・販売までを一貫して手がける「Dari K」。
ビーントゥバー・ブームの先駆けとされるこちらが開発したのが、カカオ豆からカカオペーストを瞬時に作れるグラインダーだ。


これまで、焙煎したカカオ豆をペースト状に仕立てるには数時間から数10時間という時間がかかっていた。


それをわずか1分程度に短縮できたというのがこちらのカカオグラインダー。
おまけにこのマシーン、エスプレッソマシーンよりも小型でバーカウンターにも無理なく設置できるサイズなのだ。

60グラムのカカオ豆をマシンに投入。わずか1分でこのようなペーストができる。「これがあれば誰でもどこでも、”ビーントゥバー”が可能です。これをベースに、生チョコレートもトリュフも簡単に作ることができます」(吉野さん)。

わずか1分でカカオペーストができあがる。

このグラインダーのプロトタイプを初めて試したバーテンダーが、「スピリッツ&シェアリング」の南雲主于三さんだった。
2020年にカカオをテーマにした「memento mori」をオープンして間もないころだ。


「カカオペーストを作るにはカカオ豆の粒子を20ミクロンというサイズににまですりつぶすのですが、従来の手法ではこれに48時間もかかっていました。
それがわずか1分でペースト状にできるというから、これは画期的だと思いました。


その場で瞬時にペースト状にするのですからカカオ豆の成分が酸化することもありません。
スピリッツにカカオ豆をインフューズドするよりも、豆の個性や特徴がはっきりと出ます。
フレッシュな100%カカオのペーストに、まったくあたらしいカカオカクテルの可能性を感じたのです」(南雲さん)

バーテンダーで初めてカカオグラインダーを体験した南雲さん。プロトタイプを試してすぐさま導入を決定。実機ができあがるのを首を長くして待っていたとか。

ピュアなカカオ豆ペーストのポテンシャルがすごかった!

今回は南雲さんに最新モデルを使ってのデモンストレーションを行なってもらった。


まずは「memento mori」で扱っている、特徴の異なる3種のカカオ豆を用意。
ガーナ産とフルーティなマダガスカル産、それからDari Kがインドネシアで生産し、ライムとともに発酵させた「フルーツ発酵」のカカオ豆でペーストを作り、その味わいを比べてみる。
(詳しくはYouTubeで配信する動画をご参照ください)


「砂糖も油脂も加えないピュアなカカオ豆のペーストはそれぞれの豆の個性がはっきりと表れ、素人でも容易に違いがわかる」と南雲さん。


さらに、マシンで作ったペーストをカクテルに仕立てていただく。
ペーストを少量の湯で延ばし、ウォッカとカカオのパルプ(カカオの果肉部分)で作った自家製シロップを合わせてブレンダーで乳化させ、氷をいれたシェイカーでシェイク。
濾しながらグラスに注げば、チョコレートマティーニならぬカカオマティーニの完成だ。

こちらは「memento mori」のシグネチャーカクテル、その名も「カカオパルプ」。

「このペーストには余計なものがなにも入っていないので、バーテンダーはゼロからレシピを考案することができます。
ということは、カカオ豆の個性をダイレクトに味わえるドリンクの可能性が広がっていくはずです。
こうやって自分の思い通りのドリンクに仕立てると、そもそもカカオ豆とチョコレートはブドウとワインほどに違うものだと感じられるはず」(南雲さん)


カカオカクテルのムーブメントを作ってくれそうなグラインダーだが、そもそもこの機材を開発したのは「カカオ豆の魅力を多くの人に広め、カカオ豆を口にするシーンを増やすため」と、開発した「Dari K」の吉野慶一さんは話す。

カカオを取り巻くシーンを変えたい。

「コンビニにコーヒーマシーンが導入されたことで日本のコーヒーシーンは激変したと思います。
これまで缶コーヒーしか口にしていなかった人も、挽きたてのコーヒーを気軽に味わえるようになりました。
この影響もあって、レギュラーコーヒー豆の流通量が増加したのです。


これと同じことをカカオ豆でできないか、私たちはそう考えました。
柑橘のような爽やかな酸味、花を思わせる華やかな香り、ナッティーで力強いコク……生産地や収穫時期によっても異なるカカオ豆の個性をそのまま楽しめるのは、フレッシュなカカオドリンクならでは。


これを味わえることはカカオ豆のファンを増やすことになり、引いてはカカオ農家にとっても消費者にとってもメリットになるはずです。
新しいカカオのシーンを開拓しようという思いから、5年をかけてカカオグラインダーを開発しました」(吉野さん)


後編ではグラインダーの開発背景と吉野さんのカカオへの想い、Dari Kの環境への取り組みをご紹介します。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

Dari K
京都市北区紫竹西高縄町72-2
TEL:075-494-0525
URL:www.dari-k.com

SPECIAL FEATURE特別取材