香港のバーをホッピング!
気鋭のインポーターが考えたこと。
<後編>

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#Pick up

Bunn by「BEYOND COFFEE ROASTERS」

今月は、話題のボタニカルリキュールを扱うコーヒーロースタリー、BEYOND COFFEE ROASTERSが登場。コーヒーとカクテルの世界を自在に行き来する活動をご紹介します。

文:Ryoko Kuraishi

Bunnさん(左)と「Fernet Hunter」の造り手、ラファエル・ホルツァーさん(右)。撮影:Noby Hasegawa

「Fernet Hunter」のラファエルがおすすめする香港バーは?

11 月、BEYOND COFFEE ROASTERSのBunnさんは久々に香港に渡り、盟友にしてビジネスパートナーである「Fernet Hunter」のラファエル・ホルツァーさんとバーホッピングを楽しんだ。

ラファエルさんから「『COA』で『Fernet Hunter』のポップアップをしたいね」という誘いがあり、そのリサーチとして赴いたものだ。

「Fernet Hunter」の輸入をきっかけに、カクテルの世界にどっぷりと足を踏み入れたBunnさんに、最新のナイトシーンはどう映ったのだろうか?

「『Yardbird』と『Sunday’s COFFEE SHOCHU』を造り始めて10年ほどになりますが、ラファエルほか『Yardbird』代表のマットやスタッフのみなさんと香港で再会できたことが嬉しかったです。

『Yardbird』の焼き鳥は相変わらず最高においしく、弊社が輸入する『Hard Peach Tea』も、『Yardbird』をはじめ、いたるところで提供されていました」

写真左は「LEONE」と「Fernet Hunter」による「Fernet Hunter Cacao」。「LEONE」のみで味わえる。右は、試験製造した「バレルエイジドFernet Hunter」。こちらの試飲も行った。

それではバーへ繰り出そう。

まずは、ラファエルさんが「ドリンクのクオリティとホスピタリティが素晴らしい」とリコメンドしてくれた、アジアNo.1の呼び声高い「COA」へ。

「ショートからロングまでさまざまなカクテルをおいしくいただきました。が、日本国内で『Fernet Hunter』を扱ってくださるバーのカクテルのクオリティと、決定的な違いは感じませんでした。

ホスピタリティも、スタッフの商品説明がしっかりしている、くらいで……。

『Fernet Hunter』を使ったカクテルは、新しくできたオールデイのダイニングカフェ・バー『ROOTDOWN』、比較的新しいルーフトップバー『Cardinal Point』などでも提供されており、いろいろ試してみました。

どちらもおいしいのですが、記憶に残るようなインパクトには欠ける。

心斎橋でいただく『Fernet Hunter』のカクテルの方がおいしく感じるのは、嗜好の違いなのでしょうか」

ラファエルさんお気に入りの「COA」。今回はオーナーのジェイさんとも挨拶できたそうで、来年あたり「Fernet Hunter」のポップアップが実現しそうだ。

ラファエルが推薦してくれたバーで最も印象に残ったのは、「イタリアン・クラシックカクテルを現代的なアプローチで再構築し、丁寧に提供していた」という、「Bar LEONE」。

フォーシーズンズホテル内「Argo」を率いていたロレンツォ・アンティノーリが最近オープンしたスポットということで、Bunnさんも楽しみに出かけたようだ。

「共同オーナーとして『Yardbird』時代から知り合いのジャスティンがおりまして、こちらも嬉しい再会。

イタリアンバールの要素を備えたバーで、アメリカーノとバンビーノというカクテルを注文しました。
どちらも『基本を突き詰めきった上での風味のバランス』とでもいうのでしょうか。もっといろいろ飲んでみたいと思わせるラインナップでした。

ちなみに、この店と『Fernet Hunter』がコラボした『Fernet Hunter Cacao』というボトルが存在するので1本もらってきました。

カカオ由来のコクがあっておいしいのですが、うちのコーヒー版の方がより深みのある味わいだと感じました」

「ASIA’S 50 BEST BARS」20位の「Diplomat」。「『BLINKER HIGHBALL』というキレイなピンク色のロングカクテルをいただきました。『Fernet Hunter Granit』を使用しています」。

何度も足を運んできた香港だが、インポーターとしてそのバーシーンを覗いてみると、これまでとは違う発見があったようだ。

「今回訪問したどのバーも客数が多く、バーテンダーやサービススタッフがゲストにつきっきりになることがありません。

話し相手として求められる必要がないことを羨ましく感じました。

日本では商品の知識が金銭的な価値に置き換えられていないように感じていますが、こちらでは、コーヒーにしろカクテルにしろ、商品説明がホスピタリティに直結しているのも羨ましいところ。

それだけ消費者の意識が異なるということだと感じます。嗜好がマニアックという意味ではなく、そもそもの興味の持ち方の確度の違いというのでしょうか。

うちも海外からのお客さまは多いですが、コーヒーに関してでもそうした傾向を如実に感じられますね。

また、これは日本にも香港にもあてはまると思うのですが、飲食店全般において『普通くらいの美味しさ、普通くらいのオシャレ空間が人気を博す』という共通項があるようで、興味深かった。

伝わりやすさゆえに大衆の認知を得られるのでしょうか、どんなジャンルにおいても『バキバキに尖っていて、大人気!予約困難!』という存在は極めて稀だと感じています」

ご存知、バックバーが豪華絢爛な「Argo」では、「Fernet Hunter Granit」を使ったFRAME OF LOVE」というカクテルをオーダー。「そのほかの材料はBotanist Gin、Garden Vermouth、Bamboo wine。味わいは特に記憶に残っていません」

あえて「普通」はいかない。

実り多き3日間の香港弾丸トリップで、日本の飲食業と海外のそれとの違いにも向き合ったというBunnさん。

「さまざまな世界に興味をもってアンテナを広げていることが、自分の引き出しになる。あらためてそれを実感した旅でした。

長くコーヒー豆の焙煎・販売をやってきて、余力が出てきたところでタイミング良く、酒販という新事業を始めたつもりでしたが、バーカルチャーのことはまだまだ勉強段階です。

とはいえ、『Fernet Hunter』を輸入して取り扱う事業者として、日本では自分がいちばん上手に『Fernet Hunter』を使える存在でありたい。

自分の場合、そうあるための圧倒的な武器が、『おいしいコーヒーを淹れることができる』だと思っています。

カクテルメイキングにおいて、もっとおいしくするにはどうすればいいのか、どういうアプローチがあるのか。『Fernet Hunter』のおかげでいまはコーヒー以外の世界にネタを掘りに行くことがおもしろい。

もっともっとカクテルの引き出しを増やしつつ、そこにコーヒーを織り交ぜられたらと考えています」

コーヒーの日常化・一般化を掲げ、価格を抑えるなどの試みに挑戦する専門店、事業者は少なくないが、Bunnさんはあえてそれとは真逆の、「普通」ではないことを選択してきた。

「普通のことは普通のお店がやっておられますから。お酒も含めて『BEYOND COFFEE ROASTERS』でしか体験できない価値を提供するのが、私なりのあり方かと思います」


BEYOND COFFEE ROASTERSを始めて9年。“コーヒーと酒の世界の架け橋”というよりも、コーヒーや酒というジャンルを超えて「普通」でないことを選択した飲食店をつなぐ存在になっていくのかもしれない。

SHOP INFORMATION

BEYOND COFFEE ROASTERS
兵庫県神戸市中央区中山手通2-17-2
TEL:080-2429-5903
URL:http://beyondcoffeeroasters.com

SPECIAL FEATURE特別取材