バーで最強の割り材を探せ!
<後編>

PICK UPピックアップ

バーで最強の割り材を探せ!
<後編>

#Pick up

磯部太郎(BAR SALT)/木村孔美(GH Ethnica)/小林卓也(武蔵屋)

前編に引き続きお送りする、バーの最強割り材対決。後半のお題はトニックウォーター。まだまだブーム冷めやらないクラフトジンを最も引き立てる銘柄はどれだ!?トニックウォーター編、スタート!

文:Ryoko Kuraishi

左から「シュウェップス トニックウォーター」(¥108)、「フィーバーツリー プレミアム・トニックウォーター」(¥170)、「ヴィーン ノルディック・トニックウォーター」(¥350)、「フェンティマンス ライト・トニックウォーター」(¥205)。右端は「フェンティマンス キュリオスティ・コーラ」(¥180、価格はいずれも武蔵屋販売価格。)

——早速テイスティングを始めましょう。ジャッジは、神楽坂「Bar SALT」のバーテンダー、磯部太郎さん、渋谷「GH Ethnica」シェフの木村孔美さん、バー専門酒屋「武蔵屋」スピリッツ担当の小林卓也さんの3名です。


小林卓也さん(以下、小林):まずはトニックウォーターの軸になってくれそうな「シュウェップス」からテイスティングしましょうか。

木村孔美さん(以下、木村):意外にガスは弱めなんですね。

小林:良くも悪くも「シュウェップス」は甘めですね。

木村:初歩的なことを聞いてもいいですか?トニックウォーターってそもそも何ですか?いまのトニックウォーターってキニーネは入ってないですよね?

小林:現在の一部銘柄は、キニーネではなくキニーネ由来のキナ抽出物が添加されている、ってことになっていますが……。

木村:これを飲んでみて、「あれ?レモネード?」って思って。だからそもそもトニックウォーターって何?って思います。海外ではキニーネOKなんですよね?

トニックウォーター編ではソーダよりもさらに議論が白熱!

磯部:アメリカを含め、世界的には規制の方向に向かっていますね。そういえば以前、パリ土産にローカルのキニーネ入り「シュウェップス」をもらったことがあるんですが、この日本の「シュウェップス」はキニーネ入りをかなり忠実に再現しているなって思ったんですよ。キニーネの独特の苦味って、ある程度再現できるものなんですかね。

木村:海外と日本のジントニックを比べると、日本の方が少しだけ甘いと感じることが多いんです。トニックウォーターの違いを聞いて、もしかしてキニーネの有無がジントニックの味わいを変えているのかなって思ったんですが。

——それでは次、新スタンダードともいうべき「フィーバーツリー 」です。

磯部:やっぱり「フィーバーツリー 」の売り上げって伸びているんですか?

小林:うちでは「シュウェップス」に対して「フィーバーツリー」の売り上げがおよそ2/3ですね。「シュウェップス」を甘いと感じるバーテンダーさんはソニック・スタイルにするなどして甘みを調整していましたが、これは甘さが控え目でそのまま使える、という感想をいただいています。

木村:割り材としてはもちろん、清涼飲料水としてそのまま飲めますね。おいしい。

磯部:この後味に感じる独特の苦味がキニーネ由来なんでしょうね。

小林:人工香料、甘味料不使用というのも、ヘルシー志向のいまの時代にマッチしているんじゃないでしょうか。クラフトジン流行りの中でジンそれぞれのボタニカルを引き立ててくれるということで評価されているんでしょう。

木村:苦味もそうですし、香りもしまっていますよね。

磯部:ちなみにうちでは「シュウェップス」に、イタリアのキナリキュール「クレメンティ」とビターズを加えてジントニックを作っています。

小林:甘みってカクテルの構成要素としては欠かせないものだから、僕は「シュウェップス」のような甘みがあってもいいと思うんですね。カクテル全体でバランスが取れていればそれでいい。

——後発の「ヴィーン ノルディック」はどうですか?

木村:おいしいですけれど、香りが強いのかな?それよりも高すぎませんか?

小林:そうなんですよね……躊躇する値段ではあります。天然水ベースで保存料、甘味料不使用というコンセプトはいいし、柑橘の香りも爽やか。

磯部:このラインナップの中ではいちばん苦味が強いですね。タンニンのようなひっかかりを喉に感じます。それから香りがが何か……かなり個性的。

木村:「フェンティマンス」はどうですか?ジンによってはおいしくなりそうだけれど。

小林:このままでもジンっぽいですよね。ノンアルコールジン。

ジントニックに仕立ててくれる磯部さん。

——今日はシロップの代用品としての可能性も探りたく、コーラも用意してみました。こちらは「フェンティマンス キュリオスティ・コーラ」、ジンジャーとハーブの爽やかな後味を謳ったコーラです。

磯部:シナモンとジンジャーの香りが立っていますね。カフェインをある程度抜いたら高級ジンジャーエールになりそうな。

小林:炭酸はちょっと弱め、ラムコークにはもう少し炭酸が欲しいですね。

木村:そこまで炭酸を求めないカクテルに合うんじゃないですか?アーティチョークのリキュールとか合いそう。

小林:コーヒーリキュールもいけそうですね。

木村:パッケージにはウイスキーと合わせてって書いてありますよ。

——それではウイスキーと「フェンティマンス コーラ」を試してみましょうか。

小林:個人的には甘みがもう少し欲しいですか、うまくやっていけそうな相性の良さを感じます。

磯部:これはほぼ、延ばしたマンハッタンですね。

小林:ビター系のカクテルをロングで飲みたいという時にはいいのかもしれない。

木村:家で普通に飲みたいです。黒ビールと合わせてみても良さそう。

(独断と偏見で)もっとも評価が高かった組み合わせがこちら。

——大本命のジンとトニックの組み合わせも検証してみましょう。ジンは「グレンダロウ」と「ビーフィーター」 、「アルケミエ ジンネイチャー」です。まずは「ヴィーン ノルディック」から。

木村:すごい!ジンによって全然違う表情が出る。「グレンダロウ」と「ヴィーン ノルディック」は甘みが抑えられつつ、ジンらしい香りが引き立って秀逸。香りが上に上がってきますね。「ビーフィーター」だとトニックの甘みが出ちゃうのかな。

小林:トニックってジンを引き立てるという役割を求められますが、キャラのあるトニックとキャラのあるジンがバチっとハマった時に、全く新しい味わいを発見できるのかも。ジンのいろんな面を引き出してくれるトニックですね。

磯部:「ヴィーン ノルディック」はジンの軸を壊さないですね。プラスαはあるにしろ、ジンのキャラ自体は変えない。値段がなあ……。

小林:ただし値段の価値はあるトニックですね。可能性を感じる。

磯部:一方、「シュウェップス」は「ビーフィーター」のようなシンプルなジンの方が合うんですかね。

木村:「アルケミエ」は断然、「シュウェップス」が合う。トニックの甘みが治まりつつ、ジンの苦味が後から立ってきますね。キュウリとか添えたくなりますね。ジン好きにはオススメ。

磯部:結局、ジンのキャラによってこれだけ表情が変わるなら、ジンに合わせてトニックをいくつも揃えなきゃいけなくなりますね。

小林:確かに、これだけお酒があるのに割り材が一種類というのも無理がありますね。

木村:割り材についても飲み手がチョイスできる、そういう楽しみかたが広がるといいですね。

SPECIAL FEATURE特別取材