青森の風雲児、登場!
「八戸市長杯」への思いを語る。
<前編>

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青森の風雲児、登場!
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久保俊之さん by「ark LOUNGE&BAR 」

「いま、日本でいちばんアツい?!」と言われる「八戸市長杯カクテルコンペティション」が今月、開催される。開催直前、東京のコンペで優勝したばかりの主催者、久保俊之さんに緊急インタビュー!

文:Ryoko Kuraishi

先日、東京・お台場で開催された「シーバス ミズナラ マスターズ カクテルコンペティション」で見事、優勝を果たした久保俊之さん。
青森県八戸市にある「ark LOUNGE & BAR」オーナーバーテンダーで、いま注目を集めている「八戸市長杯カクテルコンペティション」のプロデューサーとしても知られている。


「市長杯」のほかにも、八戸のバーテンダー育成のために数多くのイベントを開催してきた。
その傍ら、自らも国内外でカクテルコンペに挑戦し続ける気鋭のバーテンダーだ。
今回は久保さんと、間近に迫った「八戸市長杯カクテルコンペティション」に焦点を当て、このコンペの魅力をお伝えしよう。


八戸といえば「日本で最もフレアが盛ん」といわれる地域の一つ。
その振興に一役買ったのは、久保さんら八戸の若手バーテンダーたちだ。


映画『カクテル』に触発され、バーテンダーを志したという久保さんは今から15年ほど前、八戸でフレアのチームを作った。
当時は3カ月に一度はフレアのコンペを開催していたというから、その情熱は相当のものだったらいし。

今年3月20日行われた「シーバス ミズナラ マスターズ カクテルコンペティション」で優勝した久保さんの作品、「CHIVAS Misty Punch」。

「そんなこんなで大盛り上がりしてしまったのでFBN(日本フレア・バーテンダーズ・ネットワーク、全日本フレアバーテンダーズ協会ANFAの前身)に目をつけられちゃって(笑)。
八戸のコンペに東北の精鋭フレアバーテンダーが刺客として送り込まれてきたんです。


八戸のコンペは観客が投票するシステムだったんですが、どういうわけだかその刺客が負けちゃいまして。
で、FBNから関東のコンペに出場しないかって誘われたんです。
僕らは『こりゃあ、八戸の仇を討つ気だな』と震え上がりました(笑)」


刺される!と覚悟した八戸バーテンダーの一行だったが、ルーキー部門で見事、八戸のバーテンダーが優勝した。
「そのときにね、北條さんの懐の深さに感じ入りまして。
別に八戸の若手を優勝させなくてもよかったのに、僕たちを認めてくれた。
以来、北條さんとはすっかり仲良しに(笑)。
それでFBN、ANFAと北條さんの団体にお世話になりました」
ANFAに在籍中は東北代表を5年に渡って務め、フレアの普及に貢献した。

今月6日、青森県八戸市で開催される「第七回八戸市長杯カクテルコンペティション」。

そんな事情もあり、昔からコンペには人一倍のこだわりを持つ。
コンペに出るということは、恥をかかないように勉強すること。
勉強して知識やスキルを得られればこそ、バーテンダーとしてレベルアップできる。
久保さんはそう考えている。


「やっぱりこの年になってもコンペに出続けているから、少しずつ成長していけるんじゃないですかねえ。
『シーバス ミズナラ マスターズ カクテルコンペティション』でも優勝することができたし、昨年は『ワールドクラス』でファイナルに残れた。
昼間の仕事の方は『コンペに勝って、だから何よ』って思うかもしれないですが、人生賭けてコンペに出ているわけですよ、バーテンダーは。
その分、店が終わったあとで死ぬほど練習して、勉強して、苦労してるんです。
だからやっぱりコンペに出ることの意義は大きいし、僕にとって最強のバーテンダーはコンペに勝ったバーテンダーなんです」


さて、4月6日に8回目を迎える「八戸市長杯」。
当日はクラシック部門、フレア部門、クリエイティブ部門の3部門に40人のバーテンダーが出場予定だ。


もともとは京王プラザホテルの渡辺高弘さんに八戸でのセミナーをお願いしたところ、「じゃあセミナーに参加したバーテンダーのなかで、八戸ナンバーワンを決めようじゃないか!」というノリで始まった企画だそう。
ちょうどそのころ、横浜市で「市長杯」を開催していたことから、八戸でも市長杯を!」と市長にかけあっていたところ、無類の酒好きという市長がこれを快諾。


こうして2009年、八戸ナンバーワンを決める「第一回八戸市長杯カクテルコンペティション」が開催される運びとなった。

2012年、韓国で開催されたミクソロジーのコンペ「Gold Shake Cup」に出場した。

それでは、「市長杯のために生きている」というプロデューサー自らにその見所を語ってもらおう。


「やっぱり最強のジャッジ、最高の選手が一堂に会するところだと思います。
今年のジャッジは京王プラザホテルの高野勝矢さん、北條さん(「Cocktail Bar Nemanja」、WFAアジアディレクター兼全日本フレア・バーテンダーズ協会会長)、そして尊敬するミクソロジストの南雲主于三さん(「code name MIXOLOGY akasaka」)。
ディアジオ ワールドクラス優勝経験者の大竹学さん(「パレスホテル東京 ロイヤルバー」)、ニューヨークから後閑信吾さん(NY「Angel's share」、上海「Speak Low」、「バカルディレガシーカクテルコンペティション2012」世界大会優勝)
も参加してくださいます。


そもそもこのコンペ自体、最高のジャッジに正当な評価をしてもらいたいという思いがあって始めました。
いいコンペとは、『あの人に評価してもらいたい』というジャッジが並ぶ大会だと思うんですね。
自分が尊敬するバーテンダーにどう評価されるか、出場するバーテンダーは自分を試しに来るんですから。
だから毎年、ジャンルに関係なく自分が『最高』と思える方に審査員をお願いしているし、そういうジャッジがいるから遠方からも多くの出場者が応募してくれるんじゃないでしょうか。


一方、出場者も幅広いジャンルから面白いメンツが揃いました。
所属やジャンルが関係ないのが『市長杯』の面白いところなんですが、『なにこれ、ワールドクラスの登竜門?』なんて感想をいただいたことも(笑)。


ジャッジも出場者もこのコンペにかける熱量がすごくって、今年は韓国、去年は台湾と韓国から海外からの参戦組もいます。
年々盛り上がって来ているって肌で感じます」

昨年の「八戸市長杯カクテルコンペティション」、フレア部門の様子。客席も盛りあがっている。大会のお問い合わせは、ark LOUNGE &BAR内の実行委員会まで。

「市長杯」がほかのコンペと大きく異なるのは、プロデューサー、主催者がなによりもエンターテインメント性にこだわっているところだ。
チケットを購入して来場した観客は呑みながら観戦できるうえ、クリエイティブ部門では審査対象になるカクテルを観客が実際にテイスティングし、投票にも参加する。
また、「料理の鉄人」が大好きだったという久保さんのアイデアで始まった、八戸を代表する料理人とバーテンダーがコラボする、カクテルとフードのペアリングも会場を大いに盛り上げる。


「バーテンダーだけが見に来るコンペなら、開催する意味がない」という久保さん流のこだわりから、一般の来場者が楽しめる要素を盛りこんだ。
お客さんがいちばん、というスタンスのコンペでは、来場者が楽しめないコンテンツはどんどんブラッシュアップされていく。
たとえばクラシック部門。


「クラシックを極めたバーテンダーはそりゃもう、オーラから違いますが、現状では八戸のクラシックのバーテンダーはまだまだ、というのが正直なところ。
クラシックに興味のある方はいいんですが、そうでない方はわざわざ会場に足を運んでいただいても楽しめないかもしれない。
なので今年はあえて、同じ時間帯にフードマッチングのイベントをあてました。


もし万が一、フードマッチングのイベントのほうが盛り上がってしまったとしても、その苦い経験こそが八戸の若手たちのレベルアップにつながると思ったからです」


主催者がそれほどまでにエンターテインメント性にこだわるだけあって、参加者には「八戸ほど盛りあがるコンペを見たことがない」と言われるそうだ。


「コンペあとの打ち上げの盛り上がり方も半端ないです。
日本各地から集まったバーテンダー100人が大騒ぎですから。
3次会、4次会はうちや市内のバーでやるんですが、カウンターに酔っぱらったバーテンダーが10人くらい並んで、そこでもミニコンペが始まっちゃう(笑)。
この時ばかりはみんな、年齢、肩書き、ジャンルに関係なくただの『カクテル小僧』に戻っちゃうみたいで、朝までカクテルを作って、語っていますね。
この打ち上げを目当てに参加してくれるジャッジもいるくらい」


裏側を知れば知るほど興味が湧いてくる「八戸市長杯」。
4月6日、八戸でいかなるパフォーマンスが繰り広げられるのか。
アツい戦いが期待できそうなコンペの模様は、後編にて速報でお伝えする。


後編に続く。

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ark LOUNGE&BAR
青森県八戸市六日町8 山正ビル2F
TEL:0178-24-5310

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