凱旋帰国記念インタビュー!
世界No.1バーマンへの道のり。
<前編>

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凱旋帰国記念インタビュー!
世界No.1バーマンへの道のり。
<前編>

#Pick up

大竹学さん by「セルリアンタワー東急ホテル タワーズバー「ベロビスト」」

世界32ヶ国から1万人以上のバーテンダーが参加し腕を競う「ディアジオ ワールクラス 2011」世界大会。見事、優勝を果たし、凱旋帰国した日本代表の大竹学さんに直撃インタビュー。

文:Ryoko Kuraishi

世界大会はインド・ニューデリーにあるインペリアルホテルで行われた。まさしく白亜の宮殿!

東京で間近に対面した大竹学さんは、想像以上にガタイがいい。
既報のレポートをご覧いただければお分かりの通り、並みいる各国参加者にひけをとらないスタイルのよさ。
なるほど、表現力豊かなパフォーマンスも実にさまになるわけで。
ウインクがさまになる日本人なんて、滅多にいないのでは?!


それはさておき。
優勝の興奮も冷めやらぬ大竹さんに帰国後の周囲の反応を伺うと
「facebookの友達リクエストが増えました(笑)。でもそのくらいです」と照れ笑い。
「ディアジオ ワールドクラス 2011」世界大会の結果発表からはや半月、
「いまは優勝した実感と、その重責を存分に感じています」


開催3回目を迎える同大会だが、大竹さんは2009年、2010年と2年連続して日本大会に挑戦している。
それはこのコンペティションがバーテンダーの技術のみならず、ホスピタリティや
バーテンダーとしてのあるべき姿を問い、バーシーン全体の興隆を担っていこうとする、
そのコンセプトに共感したからに他ならない。


技術+アルファ、普段バーで行っていることや
カクテルに向き合う姿勢がそのまま、競技として問われるのだ。


実際、そうした大会のあり方は高く評価され、年々注目を集めており、
昨年の優勝者であるUK代表エリック・ロレンツォ氏(サヴォイ・ホテル内「American bar」バーテンダー)のようなスターバーテンダーをも輩出している。


残念ながら過去二回のチャレンジではすんでのところで優勝を逃した大竹さん、世界への挑戦は適わず。
今年の大会は背水の陣の心づもりで参加した、と教えてくれた。
日本大会で念願の優勝を遂げ、晴れて世界の舞台へ。
そして……。


「結果発表で名前を呼ばれ、チャンピオンのみが座することを許される椅子に
腰を下ろした瞬間、頭が真っ白になりました」
悲願が結実した瞬間だった。

大竹さんが「スパイス・マーケット」のチャレンジで手がけたカクテル。左は絶賛されたカクテル「Highland Concerto」。右はグリーンの彩りが涼しげな「Grape Leaves」。

「でも3年かけたから良かったんです。
例えば一昨年、あるいは昨年、日本代表として世界大会に挑戦しても
今回のような結果は残せなかったでしょう。
メンタリティ、プレゼンテーション、人としての有り様。
自分に足りないものを、3年かけて勉強させてもらったのかな」


日本人のバーテンディングについてよく言われることは
「仕事は丁寧で正確、感性は実に繊細。
でもウイットや表現力、エンターテインメント性に欠けがち」ということ。
そんなステレオタイプの日本人バーテンダー像を打ち砕いたのが、今回の大竹さんのパフォーマンスだったと評されている。


世界大会で審査員を務めた、世界のバーシーンを牽引するバーテンダー、
「マエストロ」ことサルヴァトーレ・カラブレーゼ氏(「Salavatore at Playboy Clun London」、「Salavatore at FIFTY 」ほか)は
辛口のコメントで知られているが、その彼さえも大竹さんを激賞。
いわく「マナブは私の心に最も響いた挑戦者の1人。
そのスタイルやプレゼンテーションは比類なく、仕事ぶりは正確にして丁寧。
彼こそチャンピオンにふさわしい」!!


技術や知識はもちろんのこと、
「楽しい、そして完成度の高いプレゼンテーションといきいきとした笑顔」と元来、日本人が苦手とする分野でも高く評価されたのだ。


それでは大竹さんの今年のチャレンジを、彼の言葉で順に振り返ってみよう。

ゲストを酔わせる演出やパフォーマンスが要求される「シアター・アンド・ザ・スターズ」では日本男児らしく、白い浴衣で粋に登場。

まず日本大会。


「正直言って、世界大会より日本大会のほうが断然、緊張しました。
ギャラリーに囲まれてパフォーマンスを行わなくてはならないし、メディアの数も多い。
ライバルのバーテンダーたちは、自分がよく知る強者揃いで(笑)。
おまけに、バーテンダー1人に対してジャッジする審査員は3人もいる。
ショーマン・シップ的なプレゼンテーションを要求されるんですが、とにかく場慣れしていませんから」
この独特のムードに飲まれ、二年続けて惜しくも夢を逃した。

だからもちろん、そこに込める思いの強さだって人一倍だ。
「一年目、二年目と抱いてきた『勝ちたい、世界大会へ行きたい』という気持ちは、
今年は『勝たなくてはならない』というパッションへ変わりました。
誰にも負けないという強い気持ちで本番に臨みました」


日本大会では高い技術力と圧倒的なパフォーマンスを武器に、順当に優勝。


「プレゼンテーション能力については、2回の日本大会で培われたもの。
だって、一年目は全然喋れませんでしたし。
ニ年目は『プレゼン内容が的を得ていない』と指摘されました」


課題であるプレゼン能力を磨くため、2回の苦い結果を日々の営業に活かしたと言う。
「おいしいカクテルを作るだけではいけないんですね。
そのおいしさを、言葉を媒介にお客さまに伝えなくてはならない。
それもバーテンダーの務めなんです」


それでも世界の壁はさらに高いと、尊敬するバーテンダーから諭される。


日本大会で審査員長を務めた上野秀嗣氏(「BAR HIGH FIVE」オーナーバーテンダー)は
「日本大会で優秀な結果を収めても、世界大会で萎縮してしまい
実力を発揮できない日本人バーテンダーは多い」と評した。
たとえ日本大会で良い結果を収めてもそれが世界に通用するかといえば、さにあらず、と。

審査員諸氏。中央がサルヴァトーレ・カラブレーゼ氏。ロンドンをベースに活躍する、世界のバーシーンを牽引するレジェンダリー・バーテンダー。右から二番目が上野秀嗣氏。

そして迎えた世界大会。
参加者はそれぞれテーマの異なる6種類の課題に、4日間に渡って取り組む。
詳しい内容は大会レポートをご覧いただくとして、大竹さんのチャレンジを見てみよう。


「僕にとってはむしろ、日本大会よりもやりやすい雰囲気でした。


世界大会では6種目のチャレンジが用意されていますが、
それぞれ個室があてがわれているし、1つのパフォーマンスに対して審査員は1人。
つまり通常の営業の形態と変わらないわけです。


いつも通り、お客さまをもてなすようにカクテルを作ればいいんだ、そうスイッチが入ったら楽になりました」


まず初日に挑んだのは高いパフォーマンス性を要求される「シアター・アンド・ザ・スターズ」チャレンジ。
大竹さんは白い浴衣に赤いたすきという粋なコスチュームで登場。


ハート型にかたどったオレンジピールを飾ったラムベースのカクテル、
「Japan Just Wanna Have Fun 」と、
新登場のジョニーウォーカー・ブルーラベルをベースにした
「Manabu’s Bottle Ritual」で鮮烈な印象を残した。

会場にはインドらしいエキゾティックな素材が所狭しと並ぶ。これらを使ってカクテルを作る。

「審査員のピーター・ドレッリ氏(かつて、サヴォイ・ホテルのメインバーでヘッドバーテンダーを務めていた)にも好評で。
『バーテンダーとして何をすべきか、きみはちゃんと心得ている』と
コメントをいただきました。


彼に言われて感銘を受けたのが、
『人はなぜ、サヴォイに来るのか。それは私に会うためだ。
今後はきみもどういう人間であるべきか、追求していく責任がある』という言葉。
多くの人に乞われる人間性と、その責任の重さについて考えさせられました」


上々の滑り出しを見せた大竹さんだが、翌日のチャレンジ「クラシック、ヴィンテージ・アンド・ツイスト」でまさかの失速。
日本大会で審査員長を務めた上野さんがジャッジする課題だったのだが……。


「材料でトラブルが発生しました。凍らせたはずのものが、解けかかってしまっていた。


『このチャレンジは落とした!』と思って心底がっくりきました。
でもとにかく翌日に備えて気持ちを入れ替えなくちゃ、と」
とはいえ、その夜は眠れなかったという。



後編に続く。


お知らせ:
大竹さんが勤務するセルリアンタワー東急ホテル タワーズバー「ベロビスト」(40階)で、
「〜大竹 学〜テクニカル デモンストレーション」が開催される。
大竹さんが世界大会で披露したオリジナルカクテル3種が、ベロビスト特製フィンガーフードとともに味わえる。
日時は8月12日(金)15時〜16時、
参加費は一名¥5,000(サービス料・消費税込み)。
40名限定、完全予約制のイベントにつきお早めにどうぞ。詳しくはタワーズバー「ベロビスト」まで。

SHOP INFORMATION

セルリアンタワー東急ホテル タワーズバー「ベロビスト」
150-8512
東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル40階
TEL:03-3476-3000
URL:http://www.ceruleantower-hotel.com

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