Fairground Bar:デザートワインに樹上完熟フルーツ、
下北沢のバー×ワインショップがたくらむこと。
<前編>

PICK UPピックアップ

Fairground Bar:デザートワインに樹上完熟フルーツ、
下北沢のバー×ワインショップがたくらむこと。
<前編>

new 01.05.2022 #Pick up

Kobayashi Nobuhide/小林信秀 by「Fairground Bar & Wine shop」

再開発が進む下北沢に新たなバーが誕生。この街で30年強の歴史がある「Fairground Bar」がワインショップと融合してリニューアルオープンしたのだ。「Fairground Bar」の新戦略とは?

文:Ryoko Kuraishi 撮影:Kenichi Katsukawa

「ミカン 下北沢」の横に設けられたアクセス道路に面する建物の2階。駅を出てすぐという好ロケーション。

3月末、下北沢に開業した新街区「ミカン 下北沢」。

個性的な店舗が軒を連ねる「ミカン 下北沢」に誕生したのが、バーとワインショップを融合した「Bar Fairground & Wine shop」だ。

駅至近に位置する細長い店舗は入り口付近がワインショップ、奥がバーになっている。

ユニークなのは、バーもショップもデザートワインをウリにしていること。

デザートワインというと「高い」「食後」というイメージを抱きがちだが、ここで扱うのは”3時のおやつ”代わりに味わえるような、コスパが良くて気軽なデザートワインだけ。

ショップではおよそ50種のデザートワインを扱っており、今後100種にまで増やしていく予定だ。

一方、バーではショップで選んだデザートワインを味わうことも可能だ。さらにデザートワイン×スイーツという至福の甘々ペアリングや、飲み比べ5種というメニューでも提供している。

デザートワインを味わったことがない層には新しいドリンクの可能性を、バーに通い慣れている層には食後ではないタイミングに飲むデザートワインに新鮮さを感じてもらっているよう。

意外なのはモルト好きにも支持されていること。

ロックもしくはストレートでちびちび飲み、熟成感や味わいの変化を楽しむというスタイルが共通するからか。

うなぎの寝床のように細長いビル。扉を開けて入ってすぐがワインショップ、奥のドアの先がカウンター席のみのバーになっている。

こちらを経営するのは都内でバーや飲食店、フードトラック、酒販店などを経営する「アズザクロウフライ」。代表取締役の小林信秀さんに「Fairground Bar」が目指すものを伺った。

シングルモルトに詳しい小林さんが、なぜデザートワインを?
「長くウイスキーの仕事をしていたこともあり、20代後半になるまでデザートワインは眼中になかったんです。

でもイタリアの生産者のもとでデザートワインを味わって、じつはものすごく面白い飲み物だとそれまでの認識をあらためました。

それまで『極甘口』とひとくくりにしていましたが、南北に細長いイタリアでは同じパッシート製法でも味わいも香りも全然ちがうんですね。

日本ではデザートワインの楽しみ方が浸透していないだけ、そう考えて恵比寿にトスカーナのデザートワインを扱う『Vinsanto』をオープンしました。20年前のことです」

昼間から大賑わいのバー。

新しい層にアピールするデザートワイン

オープンしたばかりの「Fairground Bar」にはデザートワインのことを聞きつけた若い人たちが足を運んでくれるそう。

少量で高い満足感を得られるデザートワインは若い世代の飲み方にマッチしているのかもしれない。

そのほかに多いのは「以前海外で口にしておいしかったけれど、日本ではどこで飲めるかわからない」というデザートワイン迷子たち。

また、昼間に飲みに来てくれる女性のグループや年配の夫婦にも支持されている。

従来のデザートワインのイメージを一新したいから「シャトー・ディケム」のように高いものはおかないという戦略が功を奏しているようだ。

この20年で男性の甘いものに対する拒否感もだいぶ払拭されたようで、モルト好きの年配の男性陣が「カウンター効果」で隣のグループがオーダーするデザートワインを口にし、すっかりファンになる、なんて事例も。

「日本でいちばん門戸を広げているバー」を目指す小林さんにとって、デザートワインはバーに縁のなかった層にアピールするヒットコンテンツなのである。

「アズザクロウフライ」の小林さん。

フルーツは樹上完熟にこだわる。

もうひとつ、こちらのバーの特徴はシグネチャーカクテルに使っているフルーツにあり。

現在、「アズザクロウフライ」は店舗で使用するフルーツを持続可能型に切り替えている真っ最中。

今年からSDGsを意識した取り組みを始め、自分たちが思い入れを持てる内容にしようと試行錯誤しているときに現れたのが樹上完熟フルーツだった。

「はねだしフルーツの利用を考えて生産者と話をしているなかで樹上完熟フルーツの存在を知りました。

はねだしフルーツほどサスティナビリティへの貢献度合いは高くないですが、それ以前に果実について考えるきっかけを作れると思いました。

通常は物流にかかる時間や店頭に並べておく時間などを考えて熟す前に収穫します。

これは樹上でぎりぎりまで熟成させるから旬は短いし不安定。でも食材として最高に魅力的なんです。

カクテルに仕立てると、シロップなんていれずとも十分に甘く、フルーツの味わいが凝縮されています」

撮影時に旬の柑橘、「不知火」をつかったミモザ¥1,100。「フルーツの個性を際立たせたいから、スロージューサーで絞った不知火とスパークリングワインだけで作ります」(バーテンダーの丸田さん)。絞る前のフルーツ丸ごとを撮影したかったが、撮影用の予備はなく、あらためて「フルーツの都合優先」という姿勢に感じ入った。

一般的なフルーツは人の都合に農産物を合わせるためにさまざまな管理が必要だが、これは人間がフルーツの都合に合わせる。

それをできるようにすることが本来の循環型なのではないか、それが小林さんたちの考えだ。

「それに、ロスの多い高付加価値フルーツ以外の店舗利用の可能性をお見せできます。

循環型の社会に近づくために、美味しい+ストーリーがあるというSDGsが自分たちらしいと考えています」

というわけで、「Fairground Bar」のシグネチャーカクテルは旬の樹上完熟フルーツを使ったカクテル1〜2種だけ。

それもなるべくシンプルに、ベースアルコール以外の素材をなるべく使用せず仕上げている。

数に限りがあるから売り切れることもあるし、時期によってはフルーツがないこともある。

「農産物ですからないときはない。値段も通常通りいただきます。

なんでもあるよ、いつでもできるよ、ではなくて、『なぜなら』というストーリーをお客さま一人一人に伝える。

そんな取り組みを包括的に続けていきたいと考えています」


後半ではさらに、下北沢の街全体を盛り上げていく構想を小林さんに伺っていきます。

後編に続く。

SHOP INFORMATION

Fairground Bar & Wine shop
東京都世田谷区北沢2-10-20 D街区201 ミカン下北
TEL:03-3411-2739
URL:https://atcf.jp/fairground/

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