Velvet:
コンセプトは「Farm to Shaker」
ベルリンの最先端サステナブルバー。
- 前編 -

INTERVIEWバーテンダーインタビュー

Velvet:
コンセプトは「Farm to Shaker」
ベルリンの最先端サステナブルバー。
- 前編 -

#Interview

Sarah Fischer/サラ・フィッシャー

毎週1~4種類の新たなカクテルを創作しながらも、サステナビリティに積極的に取り組み、「Farm to Shaker」というコンセプトを実践する実験的なバーが「Velvet」だ。女性バーテンダーのサラ・フィッシャーにその取り組みについて詳しく訊いてみた!

文:Hideko Kawachi(ベルリン在住)Photos:Gianni Plescia

サステナブルはバーの常識!

いまや、バーもサステナビリティ(持続可能性)を考えずにはいられない。

レモンやライムの皮の大量廃棄に代表される食品ロスの問題。

また食材の産地や旬にこだわることは、二酸化炭素排出量やエネルギー問題にも関わってくる。

2023年10月開催の欧州最大級のバーフェア「BCB(バー・コンヴェント・ベルリン)」でも、サステナブルは一時的なトレンドを超えて、すっかり定着している感があった。

廃棄される運命にあった食材を蒸留したスピリッツや、ゴミを減らすためのプレミックスという提案、ガラスボトルの循環……。

なかでもゼロウェイストを目標に地産地消、旬産旬消を意識した実験的な試みを紹介するトークショーでひときわ注目を浴びていたのが「Velvet(ヴェルヴェット)」の女性バーテンダー、サラ・フィッシャー(Sarah Fischer)だ。

毎週違うカクテルが登場するラボ!

2017年春にオープンした「Velvet」はオープンからわずか1年半の2019年に、ドイツの『Mixology』誌が選ぶバー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたほか、国内外で高い評価を得ている。

The World's 50 Best Bars 2023でも77位にランクイン(ドイツで唯一)しているほど。

店内を見渡すと、大きな木製のカウンターと、ベルベット素材の椅子。

窓辺にずらりと世界中のスピリッツと自家製プレミックスのボトルが並ぶ。

一見、クラシックなカクテルを出すオーセンティックバーのように見える。

しかし実はここ、独創的なカクテルが週替わりでメニューに並ぶ、実験ラボなのである。

バックヤードに「実験ラボ」があることを密やかに知らせるインテリア。

Farm to Shaker(農場からシェイカーへ)!

「Velvet」のヘッドバーテンダーであるフィッシャーは2013年、大学の学費を稼ぐためにバーで働き始めた。

その「ORA」というバーで、のちに「Velvet」をともに立ち上げるルーベン・ナイデック(Ruben Neideck)と出会う。

独創的なレシピと秀逸なスピリッツのセレクションで有名な人物である。

ナイデックが「From Farm to Shaker(畑からシェイカーへ)」というコンセプトを掲げて、数名の仲間と立ち上げたのが、この「Velvet」。

レストラン業界における「ファーム・トゥー・テーブル(農場から食卓へ)」のようにサステナブルな地産地消の在り方を、バーにも取り入れようというのだ。

「春になれば、桜や槐(エンジュ)などの花やつぼみを使うことも。初夏には露地もののイチゴ。近隣の森でまだ若くて柔らかい松ぼっくりを集めたり……。市内の市民農園の畑からはハーブや珍しい野菜を分けてもらっています」とフィッシャー。

彼らにとってカクテルとは、いま、近くにある自然の恵みをグラスの中に表現するツールなのだ。

左から2番目がサラ・フィッシャー、右から2番目がルーベン・ナイデック。(c)Velvet Berlin

季節のアロマをグラスの中に。

たとえば、昨年塩漬けにした露地もののイチゴを使ったカクテル「イチゴ(冬)」は、イチゴという名前から想像する印象を快く裏切る、紅茶色の液体。

グラスを手に取ると、ふわりと甘く優しいイチゴが香る。

ピックに刺したイチゴとともに液体を口に含めば、塩味のあとに、42種類ものハーブを配合したアルペンビターのほろ苦さと、フルーティーなテキーラ「OCHO BLANCO」の複雑な芳香が広がった。

これから訪れる春、芽吹きの季節の風景を思わせる。

一方、取材時に旬を迎えたカボチャを使った「カボチャNo.2」は、あえて酸味と香りが強くて甘さが弱いセイヨウカボチャを絞ったコーディアルをベースにしている。

そこにコリアンダーやアニスを漬け込んだアクアヴィット「Lysholm No.52」、ジャマイカラム、カルダモン蒸留酒、日本酒、スパイシーですっきりとした味わいのターコネル・アイリッシュウイスキーなどを加えて、重層的なアロマを表現。

口の中に、セイヨウカボチャに包丁を入れた時の新鮮な香りが蘇った。

バックバーには自家製のスピリッツやリキュール、エッセンス類のボトルが並ぶ。

食品ロスを減らす、おいしい工夫。

近隣の旬の食材を使うのは、ゲストに身近なものの味や香りに驚き、時には思い出を呼び起こして欲しいという想いがある。

と同時に、非効率な輸送や二酸化炭素の排出、包装ゴミを抑える理由もある。

完全なゼロウェイストは無理でも、「Velvet」はできる限り食品ロスを減らすことを心がけているそうだ。

「たとえば、チェリーやプラムの種はアマレット風に。これは青酸ができるので注意が必要ですが……。絞ったあとのフルーツの繊維は乾燥させて粉末にしてガーニッシュに使う。蕾だけを使ったラベンダーの茎を漬け込んでコーディアルをつくったこともあります。手間に思えるかもしれませんが、残り物をどう使おうか?と考えることが、カクテルのインスピレーションにも繋がるんですよ」とフィッシャーは笑う。

今回つくってくれたカクテル「クルミ」には、蒸留後のクルミのカスを利用したクッキーに、かぼちゃアイスクリームを挟んだものが添えられている。

実はアイスクリームをつくった最初のきっかけも、大量に余る卵黄を消費するためだったんだとか。

現在は卵白の代わりにメチルセルロースを導入しているが、スタッフ全員アイスクリーム好きなので、乳製品をベースにさまざまな残り物をアイスにアレンジしているそうだ。

後半では毎週1~4種類の新作カクテルをクリエイトするという、週に一度の「ラボの日」に迫る。

後編につづく。

SHOP INFORMATION

Velvet
Ganghoferstrasse 1, 12043 Berlin, Germany
URL:https://www.velvet-bar-berlin.de/

SPECIAL FEATURE特別取材