華麗な技で世界を酔わせる!
トップフレアバーテンダー登場。
<後編>

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華麗な技で世界を酔わせる!
トップフレアバーテンダー登場。
<後編>

#Pick up

Mitsuさん by「Garden」

一流の競技者として、パフォーマーとして、そしてフレアショーの演出家として、フレアバーテンディングの可能性をさらに追求するMitsuさん。数々の大会に出場したからこそ得られた、バーテンダーとしのて気づきとは。

文:

2年に一度開催される、フレア最高峰の大会「ULTIMATE WORLD FLAIR 」。昨年の大会では見事、3位に輝いた。(写真提供:ANFA)

現在のMitsuさんは世界各地の大会に赴く傍ら、UPTで演出する独自のフレアショーなども行っている。
そしてもちろん、目黒「Garden」のオーナーバーテンダーとしてカウンターにも立つ。
店に立ち続けるのは、それがバーテンダーとしての基本であり、日本の文化にフレアを根付かせたいという使命にも似た思いがあるから。


「最近、『いいフレア』ってなんだろうと考えるんです。
お客さんを楽しませるエンターテインメントの一つとするなら、第一はお客さんを待たせないことですよね。
第二は待ち時間を忘れてしまうほど、自分たちの演技で楽しんでもらうこと。
テクニックを追求するだけにならず、いかに楽しませるかという視点とバーテンディング本来の心得を忘れないよう、若いフレアバーテンダーたちに伝えていきたい」


確かに、練習すればするだけ上手になる。
とはいえ、大会を勝ち抜くためにはテクニック以上に必要になるものがある。
Mitsuさんいわく、それが「バーテンディング本来の心得」なのだ。

2008年、強敵を倒しアジア人初の栄冠に輝いた「Sky Flair Global Challenge」の表彰式より。

このバーテンダーの心得とは、つまりホスピタリティの気持ちである。
ホスピタリティはどんな大会を勝ち抜いていく上でも重要なポイントになる、とMitsuさんは言う。


「楽しませたい、喜んでほしいという気持は、どんな大会でも審査員の心に届きます。
加えて、フレアはその時代に即した審査基準を採用しています。
最近は、フレアの技の難易度やオリジナリティばかりではなく、エンターテインメント性や音楽とのマッチング、さらにはカクテルの美味しさや器具の扱いかたも重視するようになってきました。
つまり、すべてのバランスが優れていることを求めているんですね。


そのバランスの完成度をさらに高めるために、自分に何が足りないのか。
大会を勝つためには、そんな観点で内省することも必要でしょう」


そしてもう一つ、メンタルの強さも重要だ。


海外の大会で痛感するのは、欧米人と日本人のメンタリティと演技構成の違いだそうだ。
海外のトップバーテンダーは難易度の高い技を組み合わせ、スピーディーにパフォーマンスを行う事が多い。


一方、日本のバーテンダーはよく練られた演技構成、音楽とのマッチングを重視し、道具の扱いしかりひとつひとつの動作しかり、繊細さとメリハリのあるパフォーマンスを披露する。
反面、緊張感からか練習通りのパフォーマンスを見せられない選手も少なくない。

「ULTIMATE WORLD FLAIR 2014 FINAL ROUND」で「ベストカクテル」賞に輝いた「Blesshing Flower」¥1,800。バニラビーンズを漬けこんだウォッカをベースに、ハイビスカスやローズのフラワーシロップとレモンジュース、ピーチのピューレをシェイク。香りづけにローズリキュールをスプレーする華やかな一杯。Photo by Tetsuya Yamamoto

「人間ですから、緊張するなというのも無理な話だし、緊張感を押さえつけようとすると余計、動きが硬くなります。
まずは緊張しているということを自覚すること。
そしてその緊張は、いいパフォーマンスをしようとしているからだと前向きに捉えること。
練習も準備も万全だから、あとは楽しむだけ!そんな風に思うことが大会を乗り切るコツです。


たとえば、海外の選手は、失敗を悪いことだと思わないから恐れずにパフォーマンスできるんですね
失敗したらその分、さらに盛り上げればいい、そんな考え方をしているようです。
そんな気持ちの切り替えが、よりよいパフォーマンスにつながるのかな。
失敗を恐れてはいいパフォーマンスはできませんから」


そういうMitsuさん自身も自らの技をさらに磨くべき日々、練習に励んでいる。
難易度の高い技をモノにするだけでは飽きたらず、より完成度の高いカクテルを目指すようになった。
最近では日本の季節感や旬、あるいはその土地の風土をグラスの一杯に表現することを意識している。


昨年秋に出場した「ULTIMATE WORLD FLAIR 2014 FINAL ROUND」で「ベストカクテル」賞を受賞した「Blesshing Flower」は、味覚とアロマで日本の色彩を描いたというシグネチャーだ。
フレアのパフォーマンスでその場に花を添える、花束代わりのカクテルを捧げる……そんな意図で作られた一杯である。

こちらも「ULTIMATE WORLD FLAIR 2014 FINAL ROUND」の一コマ。(写真提供:ANFA)

同じような独創性、エンターテインメント性はオリジナルフレアショーでも発揮されている。
UPTのメンバーらが出演するプログラムの演出を手がけるMitsuさん、得意とするのは音楽を重視したプログラムだ。


音楽の構成に合わせてフレアの動きをはめこみ、一つの楽曲を起承転結のある物語に仕立てていく。
そうした演技構成の精度を高めるために日頃からさまざまなシーンに接し、常に新しいアイデアを求める。
最近ではLED照明をあしらったボトルを使い、光と音をシンクロさせるフレアショーを手がけた。


ひとつのアイデアをいかに磨き上げ、高みに引き上げることができるのか。
より高度なエンターテインメントを求め、世界を股にかけてオリジナリティあふれるフレアショーやカクテルショーを披露している。


フレアショーも大会で見せる演技も、自分なりのスタイルを追求していきたいというMitsuさん。
トップフレアバーテンダーの挑戦はまだまだ続く。

SHOP INFORMATION

Garden
目黒区下目黒2-15-10
エムズ目黒3階
TEL:03-5435-2335
URL:http://www.flair-upt.com

SPECIAL FEATURE特別取材