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華麗な技で世界を酔わせる!
トップフレアバーテンダー登場。
<前編>
#Pick up
Mitsuさん by「Garden」
昨年は2つの海外大会に出場し、どちらも優勝。「行ったことのない国で開催される大会には積極的に参加したいですね」。Photos by Tetsuya Yamamoto
フレアチーム、UPT(アップティー)の中心メンバーであるバーテンダー、Mitsuこと金城光浩さん。
昨年秋、舞浜で開催された「ULTIMATE WORLD FLAIR 2014 FINAL ROUND」では日本人最高位となる3位を受賞、これまでに獲得したタイトルは40以上と、まぎれもなく世界トップクラスのフレアバーテンダーだ。
Mitsuさんがバーテンダーを志したのは、まだ10代のころ。
街場のバーで働いていた兄の影響だった。
あるとき、知り合いに紹介されて出かけた地元、西横浜のバー「Bar117」で偶然、フレアバーテンディングのパフォーマンスを目にした。
オーナーバーテンダー、太田基裕氏の技にひと目で虜になったMitsuさんは彼の技を盗むべく、毎日1000円だけ握りしめそのバーへ30日間、通いつめたとか。
「当時はお金がありませんでしたから(笑)。
一杯だけオーダーして、バーテンダーの動きに目を凝らし、とにかく1日に1種類、技を覚えようという計画でした」
1日1種、1ヶ月通えば30種を覚えられる。
日中はガソリンスタンドでのアルバイトの合間、覚えた技をひたすら練習した。
「30くらい覚えたら、もしかしたら大会に出られるんじゃないかって思ったんです(笑)」
MitsuさんらUPTメンバーの念願 かない、2010年には自分たちの拠点「Garden」を東京・目黒にオープンさせた。
事実、1ヶ月も経たぬうちに由比ヶ浜で開催された大会に出場している。
「道具も揃っていないから借り物でしたね。
10種の技だけで出場したんですが(笑)、失敗しなかったのが幸いして15人中7位になれました」
この大会をきっかけにMitsuさんは本格的にフレアの技を極めるべく、米国発のレストランチェーン「T.G.I.フライデーズ」に入店。
映画『カクテル』でトム・クルーズを指導したことでも有名な店である。
「T.G.I.フライデーズ」では店舗内スタッフでその技を競うコンペティション「T.G.I.フライデーズ・ワールド・バーテンダー・チャンピオンシップ」を毎年、開催している。
「店舗内」といっても、ファイナルラウンドとなる世界大会には世界900店舗から地区予選、国別予選、さらにエリア予選を勝ち抜いた猛者が集う。
「フレアの技はもちろん、英語のレシピテストにフルーツカッティングなど総合的なスキルを試される大会でした。
T.G.I.はレストランですからフードの知識も求められますし、早く正確にカクテルをサーブする『スピードラウンド』や接客の要素を試される『エキシビション』もあったり。
入店1年目からこのコンペには参加したんですが、初回はストアレベルで落ちましたね(笑)」
もっともっとうまくなりたい!と、仕事中はもちろん、自由時間でさえとにかくボトルに触っていた。
起きたらすぐに練習できるよう、自室に自作のバーカウンターをしつらえたことも。
カウンターの間に布団を敷き、そこで睡眠を取っていた。
何度直してもガラスを割ってしまうから、窓には窓枠のみがはまっていたとか。
店内に飾られたトロフィーの数々。キャリア14年で獲得したタイトルは40以上!
そんな猛練習が功を奏し、2年目で日本ファイナルに出場。
国内大会で勝ち抜いたあとにアジア大会に進み、ついに世界大会へ。
そして2004年度の大会で初優勝を飾る。
「いろんな意味で感慨深い経験でした。
まだまだ自分は未熟なのに、相手はプロフェッショナルとして自分を扱ってくれるんです。
空港についたらちゃんと迎えが来ていて、素敵なホテルの部屋を用意してくれて。
『こういう待遇にふさわしいプロフェッショでいなくては』と、バーテンダーとしての自覚が芽生えました」
帰国後は日本独自のバーテンディングの作法を覚えたいと、大分県日田市にあるオーセンティックバー「Bar if.」の門を叩いた。
オーナーでありANFA副会長の江田毅寿氏に師事。
住み込みで働いて、バーテンダーとしての心得をあらためて学んだという。
「T.G.I.はいろいろな意味でアメリカ式。
グラスの拭き方や扱い方、氷の入れ方、酒の注ぎ方、そしてシェイカーの振り方。
オーセンティックなバーテンダーの美しい所作というのは、エンターテインメントでもある。
フレアに直接関係ないと思われるかもしれませんが、こうした丁寧な所作や器材の扱いがベースにあるのとないのでは、見栄えが大きく変わると感じました」
ベテランといわれるMitsuさんだが、「毎日2、3時間は練習します」といまだ練習の鬼。
Mitsuさんの人生が大きく動いたのは2008年のこと。
その年の11月、モナコで開催された「Sky Flair Global Challenge」でフレア界の“絶対王者”、クリスチャン・デルペッシュを決勝で破りアジア初のチャンピオンに輝いたのだ。
この大会、米国のレジェンド、英国のロードハウスとともに世界3大大会として位置づけされており、世界的に有名なフレアバーテンダーが一堂に会する。
会場に勢揃いしたスターたちは圧倒的な存在感を放っていて、「いままで感じたことのないような異次元の緊張感を覚えた」と当時を振り返る。
「実際、僕は勝てないだろうと言われていましたし、ダークホースだったと思います」
それでも強い心を持ち続けられたのは、最高のパフォーマンスを披露したいという思いがあったから。
「ヘリとリムジン、シャンパンで出迎えられて(笑)、こんなにしてもらったら今まででいちばんいいパフォーマンスでお返しをしなくちゃって。
それにこんなに楽しみながらもなにかに本気で取り組んだ経験って、いままで自分の人生になかったんです。
やると決めた以上はやる。
実力を発揮する為に練習してきた、本番は一発勝負、納得のいくパフォーマンスを出せれば必ず勝てる、そんな風に自分に言い聞かせていました」
弱点であったメンタルを克服し、世界一のフレアバーテンダーに輝いたMitsuさん。
後半では、大会での緊張感との付き合いかた、そして若手が台頭しベテランと呼ばれるようになった現在の心境を語ってもらう。
後編に続く。
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