どりぷら編集部選、
いまこのクラフトジンが面白い!
<後編>

PICK UPピックアップ

どりぷら編集部選、
いまこのクラフトジンが面白い!
<後編>

#Pick up

クラフトジン by「武蔵屋」

前編に続き、いま気になるクラフトジンをどりぷら編集部が独断で選定。後編ではオーストラリア、アメリカなど新大陸からもピックアップしてみました。

文:Ryoko Kuraishi

FAIR. ジュニパー ジン(500ml)オープン価格 (http://smallaxespirits.net/portfolio/fair-gin/)

後編も前編に引き続き、クラフトジン特集をお届けします。
それにしても、どうしてクラフトジンがこれだけ注目を集めるようになったのだろう。
後編の5銘柄をご紹介する前に、その背景を考えてみよう。


ここ数年のクラフトジンの動向を知る武蔵屋のスピリッツ担当、小林卓也さんによれば「クラフトジンの魅力の一つに、明確なビジョンを持った個性的な造り手の存在があると思うんです。
ジンはウイスキーなど熟成が必要なお酒に比べて早く市場に出せ、おまけにスモールバッチでスタートできる。
つまりチャレンジ精神旺盛な若い世代が、インディペンデントで気軽に始められる土壌が醸成された。
それが、クラフトジンの興隆のいちばんの要因だと思います」


もちろん、社会の流れが変わってきたことも大きかった。
「1990年代ごろまではなかなか手に入らないお酒にステータスを見出す時代でした。
それが2000年代に入ると、ステータスよりも造り手や酒そのもののアイデンティティとそれへの共感を重視する消費者が増えてきたように思います。
そして、アイデンティティに価値を見出す人にとって、地元のボタニカルを使うなどそれぞれの土地や造り手の個性を謳うジンは受け入れられやすいアイテムだったようです。


バーテンダーには、ジンの多様性こそがツボなのでしょう。
スタンダードなカクテルのベースにジンを用いるというより、ジンの中のボタニカルやストーリー、地域性にイメージを求めて、スタンダードをツイストして新しいカクテルを生みだす人が増えています。
これだけ様々なジンがあれば、自分の思うスタイルに合わせて自由にチョイスすることができますから。


逆にいうと、これからのジンは地域性、生産者のフィロソフィやものづくりのコンセプトがはっきりしていないと生き残れない。
実際、2、3年前は入荷したら売れるという流れがあったのですが、現在はストーリーや造り手の個性が際立っていないと注目してもらえません。
生産者が語るストーリーにどれだけバーテンダーや消費者が共感することができるのか、SNSの時代だからこそ、そうした物語性が重視されているのだと思います」

2013年の発売以来、ヨーロッパで数々のアワードに輝く。フェルディナンズ・ザール・ドライジン(500ml)¥4,946 (http://www.shinanoya.co.jp/ferdinand-gin/)

それではどりぷらが選んだ残り5銘柄をご紹介しよう。


6.FAIR. ジュニパー ジン


中央アジアはウズベキタンの自然保護区で収穫されたジュニパーベリーと、コリアンダーやカルダモンなど数種のスパイスを、キヌアを原料とした「FAIR. キヌア・ウォッカ」に漬け込んだ。
発酵、蒸留、ボトリングはフランスのコニャックで行なっている。
ジュニパーベリー、コリアンダー、カルダモンについてはフェアトレード認証を取得しており、最高の品質&生産者と環境の最大限の保護、どちらにも全力を注ぐという意欲的なコンセプトが際立つ。


「すごく個性的な味わい。フィニッシュには、ナッツのようなどこかスパイシーな余韻が。これがパラダイスシード?」(編集部T)

「ボディのまるみやコク、ふくよかさはショートカクテルで威力を発揮しそう。僕はキンカンなんかの柔らかい酸味が、ナッツやアーモンドを思わせる余韻を引き立てるんじゃないかと思うんですが」(小林)

「実際に使っているバーテンダーの話だと、柑橘系を合わせると清々しい新緑のような香りが消えてしまうので難しいらしいです。その分、創作意欲を掻き立てるジンなのかも。個人的には、製品のクオリティとものづくりの理念を高いレベルで両立させようという取り組みに共感します」(編集部K)

「フードと合わせてペアリングを楽しんでみたいジン。例えば、意外なところで発酵食品なんて合いそうですが」(編集部O)


7.フェルディナンズ・ザール・ドライジン


ドイツのモーゼル地方、ザール地区にある小さな村で、1824年に創業した歴史ある蒸留所で造られている。
全て手摘みされた33種のハーブや果実を使用、その7割が地元産で、クインス(西洋かりん)、ヴィンヤードピーチ、ラベンダーなどは敷地内にある自家農園で栽培されている。
蒸留後に同じザール地区で醸された高級白ワインを添加しているのも特徴的だ。


「柔らかな花の香りとフレッシュなハーブのアタックのバランスがいい。甘みもあるので全体的に完成された印象を受けます。シンプルなカクテルに良さそうです」(小林)

「添加された白ワインなのか、ベースにフレッシュな甘みを感じます。これこそキンキンに冷やしてリキュールグラスに注ぎ、ストレートでいただきたい。オンザロックでも」(編集部O)

MGC(メルボルン ジン カンパニー ドライジン)(700ml)¥5,940 (http://winetree.co.jp)

8. MGC(メルボルン ジン カンパニー ドライジン)


オーストラリアはメルボルン発のMGCは、長年ワインメイキングに携わってきた造り手が、アパートの自室で研究・開発したという変わり種。
蒸留所はメルボルンから60km離れたヤラ・バレーのジェムブルック・ヒルにあり、自社のブドウ畑の庭先で育てたジュニパーベリー、コリアンダーシード、グレープフルーツ、ローズマリーなどのボタニカルを、ブドウ原料のベーススピリッツに配合している。
ワイン畑に降った雨水を使って蒸留しているというのもユニーク。


「自家栽培ではないけれどオレンジも使っているんですよね。オレンジのアロマが上品に香ります」(編集部T)

「フレッシュでハーバルで、オーストラリアのウィルダネスのイメージが湧いてくる。雨水を使っているとか、キャッチーですよね」(編集部K)

「おおらかでバランスのとれたジンですね。使い途が広そう。色々なスタイルで飲んでみたくなります」(小林)

アンガヴァ カナディアン プレミアム ジン(700ml)¥4,957(https://www.musashiya-net.co.jp/products/detail.php?product_id=9550)

9.アンガヴァ カナディアン プレミアム ジン


カナダの極北に位置する、ほとんど植物が生息しないというツンドラ地帯のアンガヴァ地方。
そこで育った、セイヨウネズ、ワイルドローズヒップ、ホロムイイチゴ、ラブラドル・ティーなど6種のツンドラ植物をイヌイットが手摘み。
それらをフェアトレードで購入しケベック州で蒸留している。
鮮やかなイエローは天然のカラーで、この色が出るまで6種のボタニカルを浸漬し続けるとか。


「このイエローからはかなりエキセントリックなイメージを受けますが、ジュニパーがトップにきちんと出ていてわかりやすい」(編集部T)

「シンプルにライムなしのジンリッキーで飲むのが、ジン本来の魅力を堪能できそう。どちらかと言えばハーバルで、ベースにジュニパー由来のナチュラルな甘さを感じます」(小林)

「ツンドラとかイヌイットとか、旅情的なキーワードが出てくるので、バーテンダーの皆さんにはぜひ、うまくカクテルに取り入れてストーリーを構築してほしいような…… 」(編集部K)

バーヒル ジン(750ml)¥5,832(http://cloudandwaterny.com)

10.バーヒル ジン


アメリカ・バーモント州の農業と養蜂をルーツとする蒸留所、カレドニア スピリッツが手がけるジン。
地元の農業ネットワークをサポートし、雇用を促進させることをミッションとする。
生産方法はシンプルながら、ボトリング前に生のハチミツを加えることで独特の甘さ、花の香りが生まれている。


「ジュニパーベリーの香りとハチミツの甘さのコンビネーションがいい。女性に好まれそうなジン」(編集部O)

「ハチミツはハチミツでも、マヌカハニーのような濃厚さ、余韻を感じますね。ロイヤルフィズとか、レモンとハチミツの相性を極めてみても面白いかもしれません」(小林)

「酸味の効いたカクテルに良さそう。ブルーチーズとのペアリングなんて面白そうじゃないですか?」(編集部T)


以上、2017年版「どりぷらが選ぶ、気になるジン」でした。
これ以外にもユニークなジンが続々とリリースされているので、ぜひお試しください!

SHOP INFORMATION

武蔵屋
東京都世田谷区瀬田4-26-1
TEL:0120-11-6348
URL:https://www.musashiya-net.co.jp

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