シリーズ連載/英国ドリンク事情

SPECIAL FEATURE特別取材

シリーズ連載/英国ドリンク事情
[vol.08] - 平日はジン蒸溜所、週末は人気のジンバーに変身!
ロンドン・ジンブームの最前線「マザーズ・ルーイン」へ。

29.11.2019 #Special Feature

文:Miyuki Sakamoto(ロンドン在住)

週末の夜には、ここにロンドンのジン好きが集まってきます。Photos by Miki Yamanouchi

週末の夜には、ここにロンドンのジン好きが集まってきます。Photos by Miki Yamanouchi

ロンドン郊外の、超マイクロディスティラリー。

ロンドンの地下鉄ヴィクトリア線の北側の終点であるウォルサムストウは、近年「面白い店がある」と話題を集めつつあるエリアです。

ハイストリート(目抜き通り)から少し外れて住宅街を抜けた先に、殺風景なエントランスながらも、人々が次々と吸い込まれるように入っていく場所があります。

そこは、クラフトビールの醸造所や「インスタ映え」スポットとして名高いネオンアーティストのギャラリーといった人気スポットが軒を連ねるビジネスパーク。

今回紹介するクラフトジンの蒸溜所「マザーズ・ルーイン(Mother’s Ruin)」があるのも、この一角です。

「マザーズ・ルーイン」の創業者、ベッキー・グフィスさん。

「マザーズ・ルーイン」の創業者、ベッキー・グフィスさん。

小さいながらも、受賞歴多数のクラフトジン。

「子供の頃にカントリーサイドに住んでいた私は、できる限り自足自給の暮らしのなかで母がジンを手づくりしているのを見て育ちました。そんな母のレシピをもとに、最初は友人たちのためにつくっていたジンが徐々に人気となって、今ではビジネスとなってしまったのです」

そう語るのは、「マザーズ・ルーイン」の創業者でありオーナーのベッキー・グフィスさん。

彼女の手がけたジンは、英国で毎年開催されているフード&ドリンクの品評会「グレート・テイスト・アワーズ(GREAT TASTE AWARDS)」における金賞受賞の常連です。

でもジンづくりを始めた10年前は、まさかこれが自分の仕事になるとは思っていなかったとか。

それほどまでに、ここ最近のロンドンでのクラフトジンブームは目覚ましいものがあります。

「なんでジンをつくり始めたかって? それはシンプルだから(笑)。その一方でフルーツやスパイス、ハーブ、ボタニカルなどとの組み合わせ次第で、可能性は無限大。それもジンづくりに惹きつけられている理由ですね」

(「マザーズ・ルーイン」という名前は、18世紀に製造されていた古いジンに因んでつけたそうです)

「マザーズ・ルーイン」オリジナルのジンのラインナップ。

「マザーズ・ルーイン」オリジナルのジンのラインナップ。

蒸溜所であり、ジンバーでもある人気スポット!

月曜から木曜までの平日、ここはクラフトジンの蒸溜所として機能し、金曜日から日曜日までの週末はバー「ジン・パレス(Gin Palace)」としてオープンしています。

注目のエリアとあって感度の高い住民が多く、またバーの営業に合わせてストリートフードのイベントなども随時開催しているので、ウイークエンドの店内はいつも大賑わい。

客層は20~30代を中心に、老若男女、多岐に渡っているそうです。

「ご存知のように英国、特にロンドンでの美食ブームは現在もとどまるところを知らず、人々の新しい食材やその組み合わせへの興味が尽きることがありません。そして、それはドリンクにも確実に飛び火しています」

「10年前にジンといえば『ジン&トニック』くらいで、『おじいちゃんの飲み物』みたいなイメージが強かったのですが、人々の好奇心に応えるようにユニークなジンが次々と登場することで、ジンのムーブメントはますます大きくなるばかりです」

世の中に大量生産された商品が飽和状態となった今、人々の関心は「時間と手間をかけて、人の手によってつくり出されたもの」に向いているのかもしれません。

蒸溜所というよりキッチンのような「マザーズ・ルーイン」内部。

蒸溜所というよりキッチンのような「マザーズ・ルーイン」内部。

地産地消をテーマに、すべて手づくり!

「マザーズ・ルーイン」のジンを生み出す銅製の鍋(蒸溜機)も「こんなに小さいの?」と驚くくらいのサイズ。

しかしこれも、地産地消をテーマとし、近隣の農家などから仕入れたフルーツやハーブにこだわるベッキーさんが、自分の目が届く範囲でジンをつくっているからこそ。

店内の棚には、18世紀のレシピを再現し、オレンジ、ベイ、ナツメグのノートが爽やかな「オールド・トム・ジン」を始め、ルバーブ、ダムソンといった英国らしいフルーツを使用したジンのボトルが並んでいます。

年間生産量は、ジンで2,800~3,000本ほど。

現在のラインアップは、オールド・トム・ジン、スロージン、ダムソン・ジン、ローズゼラニウム&フェンネル・ジンの4種類。

他にカシス・リキュール、ルバーブ・ウォッカ、ラズベリー・ウォッカ、ビターオレンジ・ラムなども手がけているそうです。

ベッキーさん曰く「英国人の伝統を重んじながらも新しいものにも寛容で、それらを面白がって受け入れる器の大きさも、昨今のジン・ムーブメントに一役買っている」とのこと。

古くからある「ジン・カルチャー」を誇りに思いながらも、新たなつくり手たちの個性あふれるジンにも、その門戸が開かれている。

それが、ある意味、英国らしさなのです。

ベッキーさんお気に入りの英国産ジン。左から「キュー・オーガニック・ジン」「ノーザン・ドライジン」 「ジェンセンズ・オールド・トム・ジン」「ポセカリー・ジン」。

ベッキーさんお気に入りの英国産ジン。左から「キュー・オーガニック・ジン」「ノーザン・ドライジン」 「ジェンセンズ・オールド・トム・ジン」「ポセカリー・ジン」。

ローカル注目の英国産クラフトジンはこちら!

さて、店内には「マザーズ・ルーイン」オリジナルのジンだけではなく、世界各国から選りすぐりのジン80種類以上も揃えていて、まさにジン好きにとっては天国のような場所。

ベッキーさんに「マザーズ・ルーイン」以外のお気に入りの英国産ジンを教えてもらいました。

まずは「キュー・オーガニック・ジン(Kew Organic Gin)」。

ロンドン・ディスティレリー・カンパニーが、ロンドン西部に位置する王立植物園「キュー・ガーデン」とのコラボでつくったものです。

「キュー・ガーデン」で育った花を含む24種類ものボタニカルを使用しているとか。

続いては、ミステリアスなボトルの「ノーザン・ドライジン(Northern Dry Gin)」。

パッケージのインパクトに負けない、力強いジュニパーとカルダモンが印象的で、そのスパイシーさが体温を上げてくれそうなパンチのあるジンです。

一方、「ジェンセンズ・オールド・トム・ジン(Jensen's Old Tom Gin)」はロンドンの食通たちにおなじみの高架下のフードマーケット、モルトビーストリート・マーケットを拠点とするメーカーのもの。

1800年代に好んで飲まれたオールド・トム・ジンを再現した、深い味わいが魅力です。

最後にベッキーさんが紹介してくれた「ポセカリー・ジン(Pothecary Gin)」は、独自の製法で手づくりされ、個性的で、フルーツとフローラルの香りの高さが特徴だと言います。

いずれも、それぞれのキャラクターが際立ったジンばかりです。

ベッキーさんに好みの飲み方について聞いてみたところ「ジンベースのカクテルはもちろん好き。でもやっぱりジンの個性を存分に味わうのならば、まずはストレートで」とのこと。

英国には、まだまだ日本に知られていない、個性豊かで、つくり手の愛にあふれたクラフトジンがたくさん存在しています。

英国のジン・ムーブメントは当分続きそうです。


★Mother's Ruin(Gin Palace)
Unit 18, Ravenswood Industrial Estate, Shernall St, Walthamstow, London, E17 9QH
http://www.mothersruin.net

「シリーズ連載/英国ドリンク事情」の写真ギャラリー

vol.3 天王洲のデッキプロムナードはジン一色に!

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