シリーズ連載/英国ドリンク事情

SPECIAL FEATURE特別取材

シリーズ連載/英国ドリンク事情
[vol.10] - 英国スタイルの飲み方|日本編その2
YAUMAYの人気カクテル!

#Special Feature

文:Drink Planet編集部

YAUMAYバーマネージャーの中村真さん。

YAUMAYバーマネージャーの中村真さん。

2018年末に東京・丸の内にオープンしたモダンチャイニーズのYAUMAY(ヤウメイ)は、ロンドンのHAKKASAN(ハッカサン)やYauatcha(ヤウアチャ)といったミシュラン星付きレストランを手がけたアラン・ヤウ氏による日本初進出店。

ヤウ氏はロンドンを拠点として、世界中にモダンチャイニーズ旋風を巻き起こした有名レストランター。

のみならず、中国料理にワインやカクテルを合わせることを広めた先駆者的存在の一人です。

YAUMAYもダイニングスペースとは別に独立したバーを備え、メニューにはヤウ氏が監修したオリジナルカクテルがずらりと並びます。

「アラン・ヤウ・クラシックス」と題して、HAKKASANのシグネチャーカクテルである「グリーン・デスティニー(Green Destiny)」や「ハッカ(Hakka)」もオンメニュー!

ノンアルコールやハウススペシャルといったカテゴリーもあり、にわかにチャイニーズレストランとは信じられないくらい、ドリンクが充実しているのです。

「HAKKASANのレシピをそのまま採用している世界共通メニューもありますが、ほとんどのカクテルはYAUMAYの料理や日本人の味覚に合わせて、材料やバランスの一部を変更しています。我々YAUMAYのバースタッフがヤウ氏のレシピを翻訳しているような感じです」

そう語るのは、同店のオープニングメンバーであり、バーマネージャーを務める中村真さん。

今回は中村さんに、英国産素材を使用したYAUMAYのオリジナルカクテルを披露してもらいました。

YAUMAYの名物料理「ヴェニソンパフ」とカクテル「マイ・ディア・ジャスミン」。

YAUMAYの名物料理「ヴェニソンパフ」とカクテル「マイ・ディア・ジャスミン」。

料理に合わせるなら、ローアルコールで!

カクテルを披露してもらう前に、中村さんに英国のバーシーンの印象やトレンドを聞いてみました。

「ロンドンは有名な『サヴォイ・カクテルブック』が生まれたバーテンダーにとってのルーツ的な場所です。でも、実際にロンドンのバーシーンに触れてみると、伝統や格式にも増して、驚くほどワールドワイドでクリエイティブ。世界中の人が集まるぶん、世界中の食材や情報も集まり、常に進化している印象です。我々バーテンダーにとって、英国はルーツであり、同時に最先端なんです」

「これは英国というよりは世界的な傾向かもしれませんが、ミシュランの星を獲るようなレストランにはきちんとしたバースペースがあって、ゲストの方はレストランとバーを上手に使い分けていますね。例えば、レストランで食事をした後に気分を変えてバーでカクテルを楽しまれたり、あるいはバーで飲みながらレストランから本格フードを取り寄せたり……、最近では料理とカクテルのペアリングも盛んですし、レストランとバーは今後ますます密接な関係になってくるのではないでしょうか」

そう話す中村さんは、YAUMAYの名物料理「ヴェニソンパフ(鹿肉のパイ包み)」に合わせて、新しく開発したというオリジナルカクテル「マイ・ディア・ジャスミン(My Dear, Jasmine)」をサーヴしてくれました。

ワイングラスに注がれるのは、カカオニブをインフューズした「シップスミス ロンドンドライジン」と、フローラルウォーター、英国産の有機エルダーフラワー&ローズコーディアル、クエン酸、そしてたっぷりのジャスミンティー。

料理の脂肪分をリフレッシュするような軽やかさがありながら、香りや味わいは複雑で重層的。

カカオ、ジュニパー、ローズ、ジャスミン、スパイスなどのニュアンスが次々と立ち上がってきます。

食事と合わせてゆっくりと飲み続けられるように、アルコール度数はあえて5%前後に抑えているそうです。

「ロー(低)アルコールですが、英国産『シップスミス』のジンが全体をしっかりと下支えしてくれるおかげで、カクテルとしてきちんと成立します。ジンも使い方次第で、食中酒として料理と一緒においしくいただけるんですよ」

ノンアルコールカクテル「カラブリアン・サンライズ」。

ノンアルコールカクテル「カラブリアン・サンライズ」。

ノンアルコールカクテルという選択。

続いて披露してくれたのは、ノンアルコールカクテル(モクテル)の「カラブリアン・サンライズ(Calabrian Sunrise)」。

こちらはHAKKASANのオリジナルレシピをベースに、YAUMAY流にアレンジした一杯です。

味の決め手となるのは、フレッシュのキウイフルーツとコリアンダー(パクチー)という意外な組み合わせ。

これにリンゴジュース、ライチジュース、英国産有機ジンジャーコーディアルを合わせます。

確かにノンアルコールなんだけど、ジンジャーが想像以上にピリッと効いていて、お酒のようなボリュームを感じさせてくれます。

「ひと昔前のノンアルコールカクテルは、カクテルのお酒抜きバージョン、という印象だったかもしれません。ですから味わいが平面的で奥行きに欠けたものが多かったと思います。現在のノンアルコールカクテルは、アルコール度数が0%でも一杯のドリンクとして成立するようにボディ感(アルコールっぽさ)や奥行きをしっかりと出すことが必須。たとえお酒が苦手な方でも、カクテルやバーという空間を楽しんでいただけると思います」

最近では“Sober Curious”という言葉が注目されつつあるそう。

これはお酒を飲める人が、あえてお酒を飲まない選択をするライフスタイルのこと。

ノンアルコールカクテルへのニーズは、世界的に確実に高まってきているようです。


ロンドンのHAKKASANでも人気の「ヘイマンズ・ジン&トニック」

ロンドンのHAKKASANでも人気の「ヘイマンズ・ジン&トニック」

ジン&トニックはバルーングラスで!

続いては、メニューの「アラン・ヤウ・クラシックス」にも掲載されている人気カクテル「ヘイマンズ・ジン&トニック(Hayman’s Gin & Tonic)」をつくってもらいました。

名前からもお分かりの通り、ベースとなるのは英国産の「ヘイマンズ ロンドン・ドライ・ジン」。

創業1863年、ロンドン郊外にある蒸溜所が手がけるこのジンは、アラン・ヤウ氏もお気に入りなんだとか。

これにクエン酸、ぶどうヴィネガー、エルダーフラワーシロップを加え、同じく英国産の「フランクリン」のトニックウォーターでアップし、ブラックベリーとラズベリーを添えて仕上げます。

大ぶりのバルーングラスを使用するのはHAKKASANと同じスタイル!

「ジントニックにバルーングラスを使用するスタイルはスペインが発祥とされていますが、英国でもすでに定番です。バルーングラスを使用すると、飲んだ時にジンのボタニカルが爽やかに香ります。それと一杯でたっぷりの飲みごたえが、お酒好きの方にはたまらないようです(笑)」

英国産モルトウイスキーを使用した「スモーキー・ネグローニ」。

英国産モルトウイスキーを使用した「スモーキー・ネグローニ」。

ネグローニに英国のエッセンスを!

最後の一杯は「スモーキー・ネグローニ(Smoky Negroni)」です。

通常のネグローニは、ジン、カンパリ、スイート・ベルモットでつくられますが、こちらの一杯はジンの代わりにバーボン樽とシェリー樽で熟成させた英国産スペイサイドモルト「バルヴェニー12年 ダブルウッド」を使用。

さらにウイスキー樽で熟成させた梅酒と、グレープフルーツビターを加えています。

おかげで樽由来のスモーキーさやウッディなニュアンスが加わり、やや骨太な印象。

さらにスモーキーなフレーバーをお求めのゲストには、お好みで英国産アイラモルトの「ラガヴーリン」のスプレーを吹きかけてくれるそうです。

「ネグローニのアメリカンウイスキー版には『ブールヴァルディエ』という名前もあるのですが、ここではゲストの方にとってよりわかりやすい『ネグローニ』のスモーキースタイル、というネーミングにしています。ハーブやスパイス、苦味が複雑に絡み合う『ネグローニ』は、八角や山椒といった香辛料を多く使用する中国料理に意外とマッチするんですよ」

ひと通りカクテルを披露してくれた後、中村さんはこんな風に語ってくれました。

「YAUMAYはロンドンと中国、そして日本のエッセンスがほどよく混ざったモダンチャイニーズです。ずばり“英国そのもの”ではありませんが、いろんなカルチャーがミックスされている感じが逆に“今のロンドンっぽい”と思います。世界的に人気となった中国料理とカクテルのペアリングを体験しに、ぜひ足をお運びください!」

★YAUMAY
東京都千代田区丸の内3-2-3 二重橋スクエア2階
☎03-6269-9818
https://yaumay.squarespace.com/


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vol.3 天王洲のデッキプロムナードはジン一色に!

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