【緊急インタビュー/コロナ危機に際して①】
「Cocktail Bar Nemanja」北條智之さん

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【緊急インタビュー/コロナ危機に際して①】
「Cocktail Bar Nemanja」北條智之さん

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提供:Drink Planet編集部

新型コロナウイルスの感染拡大により、バー業界にも大きな影響がおよぶなか、日本のフレアバーテンディングの立役者であり、「Cocktail Bar Nemanja」オーナーバーテンダーである北條智之さんに話を伺いました。皆さまにとって少しでも役に立つことを願って。

以下のインタビューは、2020年4月13日(月)にご回答をいただいたものです。

Q1
本年4月6日より、新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、貴店の営業を自粛されていますが、新型コロナウイルスの問題が発生してから営業自粛までの経緯を、時系列でお教えいただけますか。


「当店は横浜にありますので2月上旬にダイヤモンド・プリンセス号が横浜に入港して以来、新型コロナウイルス感染の不安を自身も感じておりましたし、お見えになられるお客さま方も身近な問題として感じていらしたようです」

「中華街を始めとするエリア全体から客足が日に日に途絶えていくのを感じておりました。飲食店として衛生管理に対して日頃より気を遣うのは当たり前の事ですが、さらに高い水準での衛生管理および感染防止対策を行ってまいりました。それでも街全体を覆う不安感のようなものは消えず、東京をはじめとする他都市との温度差のようなものは感じておりました」

「そのような中でも、不安を抱えながら通ってくださるお客さま方に少しでも安らぎや癒しのひとときをご提供できるのであればと営業を続けてきましたが、3月に入り各地でコロナウイルス感染が報じられるようになるにつれ、お客さま方の安全を100%お守りするのが難しいと感じるようになりました」

「また営業を続けることで、お客さま方が不安や危険を感じながらも私どもを気遣ってくださりご来店いただいているのであれば、それは安らぎや癒しを与えるどころか逆にご迷惑をおかけする結果になると考えるようになりました」

「普段温かく支えてくださっているお客さま方に今、私どもが少しでもお返しできる事があるとすれば、無理に営業を続けることではなく営業を自粛することが最善と考え、当面の営業自粛をご案内させていただき4月6日より休業しております」

Q2
営業自粛までは、どのような新型コロナウイルス対策をされてきましたか。


「営業前の徹底した清掃、消毒液を使用してのテーブルや椅子、ドア引手などの消毒。お客さまの退店時も、その都度テーブルや椅子の消毒を行わせていただきました。通常は閉鎖している非常扉を開けることにより、エレベーターホールの換気を行い、さらに店のドアや窓も時間を決めて開閉することによりこまめに店内換気作業を行いました」

「スタッフは営業中2時間ごとに検温実施。またカクテルメイキングや調理、お会計といった動作を行うごとに、こまめな手洗いを心掛けました」

「お客さまにはご来店時に自家製のアロマ消毒スプレーで手指の消毒をお願いしました。また店内の滞在ご人数を通常の半数以下に制限し、ご来店ご予約の調整などを行わせていただきました」

Q3
営業自粛を決断された最大の理由をお教えいただけますか。


「このような厳しい状況下でも飲食店の現状をご心配いただいたお客さま方にはいつも以上に通っていただき、その事が心から嬉しくとてもありがたく感じていましたが、その反面『本当にこれで良いのだろうか』と悩み続けていました」

「20年来お世話になっているお客さまにご来店いただき『勤め先で飲食店に行くのは自粛するように言われているけれど、自分は飲食店に来たのではなく、北條智之という友達が心配だから顔を見に来ただけ。そう思っています』と仰っていただいた時に、迷い続けたことへの答えが出ました」

「お客さま方に少しでも癒しを与える事ができるような存在でありたいなど、そのような考えは思い上がりであったと気付きました」

「営業を続けるがゆえにお客さまにとってご負担になるのではないかと思いました」

「これ以上皆さまのお気持ちに甘えることは心苦しく到底できないと感じたことが営業自粛を決断した一番の理由です」

Q4
営業自粛中の今だからこそ、営業再開に向けてやっていることはございますか。


「既存メニューの見直しや、新メニューの開発などを行っています。また営業自粛中とはいえ、店の衛生を保つため変わらず店には通い掃除など行っております」

Q5
多くのバーテンダー、バー経営者がこの時期の過ごし方を迷われていると思いますが、バーテンダーとしてこの時期に必ずやっておくべきこと、また逆に絶対にやってはいけないこと、はございますか。


「他のバーテンダーの皆さまに対して私が何かを言える立場ではないと思っておりますし、皆さまそれぞれご自身の道を模索され、さまざまなことに取り組んでいらっしゃると思います。SNSなどでそのご様子を拝見することで、自身も励みになりこの状況に負けずに頑張ろうと刺激にもなっています」

「ただ一つだけ心配している事があるとすれば、カクテルのテイクアウトなど酒税法に触れる営業行為を行っていらっしゃる方が一部見受けられることです。飲食店への期限付酒類小売業免許の付与という国税庁の特例が発表されておりますが、こちらを取得した上で酒税法に触れない範囲内での営業活動が求められると個人的には思っております」

Q6
この時期、バー業界全体として取り組まなければいけないことはなんでしょうか。


「私個人がバー業界全体としての取り組みなどに関して言及するのは非常におこがましいのですが、バーテンダーの皆さまお一人おひとりが異なる事情を、またそれぞれのバーが異なる営業スタイルを持っていると思いますので、まずはそれぞれの事情および現状に合わせて個々がいかに再生するか各々で考える事が必要かと思っています」

「非常時において業界全体として一つになろうというムーブメントに対して、協調できない、賛同できない方も一定数いらっしゃるかもしれません。それに対して是非または善悪を問うような風潮にならないことを個人的に強く願っております」

Q7
アフターコロナ(ウィズコロナ)の展望についてお聞かせください。新型コロナウイルスの問題を乗り越えた後、バーの在り方はどのように変化するとお考えでしょうか。


「『バーの在り方』というものは、我々バーテンダーが決めることではなく、バーもしくはバーテンダーの存在を求めてお店に足を運んでくださるお客さま方にお決めいただくことだと私自身は常々思っています」

「時代の流れによりバーテンダーに求められることは刻一刻と変化しておりますし、今後酒税法や食品衛生法などの改正の可能性も含めバー業界そのものが大きな転換期を迎えていると実感しております」

「ただ私自身はその流れに乗るのではなく、あえて岸に上がろうと考えています。時代がどれほど変化しても、ただ日々、目の前のお客さまに真摯に向き合う姿勢を貫いていらっしゃる諸先輩方のお姿に自身の未来像を重ねています」

「今はお客さまにお会いすることは叶いませんが、営業を再開できるようになった暁にはバーテンダーとしてまた一個人としても原点回帰したいと思っております」

「目の前のお客さまお一人おひとりのお気持ちに添うことができるようなバーテンダーになれるよう、基本に忠実な仕事を心掛け、小さな種を蒔きやがて小さな花を咲かせることができるよう努めていきたいです」

Q8
最後に全国各地、世界各国のバー業界関係者に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。


「今は世界各国でバー業界のみならず多くの業界が苦しい時を過ごしており、また痛みの大小はあれど不自由な生活を強いられていると思います。先が見えない現状に不安や怒りを感じていらっしゃる方も多いかと思います。私自身もその中の一人です」

「ただ今現在も新型コロナウイルスと闘っていらっしゃる罹患患者の方々、そのご家族、そして最前線で大きな責任と恐怖を抱えながら闘っていらっしゃる医療従事者の皆さまの存在があります。今日この瞬間生かされている事を自分自身は大変ありがたく感じています」

「我々バーテンダーが真の意味で社会から必要とされているならば、その時は今ではないと私は思っています」

「まずは自身の健康を守り、医療従事者の方々にさらなるご苦労を強いる可能性が少しでもあるような行動を徹底的に避ける事だけを自分は日々努めます」

「皆さまがまずはご自身のお身体と心を健康に保てますよう心よりお祈りしております」

★Cocktail Bar Nemanja
神奈川県横浜市中区相生町1-2-1 パレカンナイ6階
045-664-7305
https://www.bar-nemanja.com

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