世界を驚かせた
Mr.アイスマンと呼ばれる
日本人バーテンダー。<後編>

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世界を驚かせた
Mr.アイスマンと呼ばれる
日本人バーテンダー。<後編>

#Pick up

鈴木隆行さん by「Cocktail Life Design Office」

海外のバーシーンで「Mr.アイスマン」と呼ばれるバーテンダー、鈴木隆行さん。グローバルな舞台で経験を積んだ鈴木さんから見た、現在のバーシーンとは? そして今後の展望とは?

文:

結局ニューヨークで3年近くを過ごした鈴木隆行さん。

ニューヨークでバーを開く計画もあったが、縁あって日本に戻ることになった。

そして栃木県那須にあるリゾートホテル「二期倶楽部」でバーのマネージメントを任された。

その後2003年に、「パークホテル東京」の開業にバーマネージャーとして携わり、自ら主宰する「カクテル・ライフ・デザイン・オフィス」を起ちあげた。

5年ほど前からは、念願だったバースクールも開校した。

「久しぶりに東京に戻ってきて、私たちの先輩が培ってきた日本のバー文化が歯抜け状態にあるように感じたんです。

グローバルな視点に立ち、かつ日本のバー文化を継承できるような人材を育てていかなくてはと感じました。

そして、それをやるのは私たちの世代の役目ではないかと……。そう思ったのです」

鈴木さんが丸氷用に使用するアイスピック。

鈴木さんが主宰するバーテンダースクールは、春と秋の年2回、芝パークホテルで開催されている。

1日3時間、月~金×2回の計10日間で集中的に行われている。

「私がニューヨークの学校で習ったようなスタイルで、とにかく実践に繋がるカリキュラムを組んでいます。

それから卒業した生徒にはインターンとして、私がマネージメントしているホテルのバーで働いてもらっています。

下積み何年という修行も大切だとは思うんですが、若い子にはどんどん実践経験を積んでもらって、日本のバーシーンの底上げをしていってほしいと考えています」


「その延長線上として、ウチのバーでは、若いスタッフが半年なり、一年なり休暇を取って海外経験を積めるような体制にしています。

我々の世代がそういうことを認めてあげないと、日本のバーシーンはどんどん世界から取り残されていくような気がします」

カクテル「Green Breeze]。

もちろん今も現役のバーテンダーとしてカウンターに立つ鈴木さん。

鈴木さんの目から見て、最近の流行などはあるのだろうか?

「ウチのホテルの場合は、半分以上が外国からのゲストになります。

日本の他のバーも同じだと思うのですが、最近よく出るのは、コスモポリタン、モヒート、カイピリーニャですね」

「それから梅酒のカクテルを頼む外国のゲストも増えました。
ちょうどレモンチェッロの日本版のような感じでしょうか」

「これからは誰かの真似じゃない、もっと自由な発想のカクテルづくりがはじまるような気がします。

その時に大切なのは、グローバルな感覚と、日本人としてのアイデンティティーだと思います」

鈴木さんの小説「パーフェクト・マティーニ」。

では、世界に向けて日本人バーテンダーが武器にできるものはなんなのだろうか?

「まずは日本人的な発想ですね。わびさびの世界だったり、武士道の精神だったり……。それに繋がる繊細さも日本人の武器ですね。

それから、私が海外で評価されたように、『氷』は大きな武器になります。技術的にもそうですし、日本人がもっと世界に誇っていい文化だと思います。

さらには日本人バーテンダーのテクニックの高さです。テクニックに関しても十分世界に通用すると思います」

最後に鈴木さんに、今後の展望を聞いた。

「法的にも認められ。きちんと整備されたバーテンダーの専門学校をつくりたいですね。

語学や経営といった実践的なことが、カリキュラムに組み込まれているような……。

要は、バーテンダーがきちんと職業として成立するようにしたいんです。

職業として社会的に認められ、家族を養っていけるだけの収入も確保できて、銀行でローンも組めて、マイホームも買えて、さまざまな保障も受けられる。

バーテンダーは水商売だから不安定で仕方ないというのでは、本当のプロフェッショナルは育っていかないと思います。

特にこれからの時代は……。

そのために、私でできることがあれば、どんどんチャレンジしていきたいと思います」



Cocktail Life Design Office
 
URL:http://www.bartenderschool.jp

SPECIAL FEATURE特別取材