日本の四季の味を奏でる!
バーの新潮流、和酒カクテルって?
<後編>

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日本の四季の味を奏でる!
バーの新潮流、和酒カクテルって?
<後編>

#Pick up

和酒カクテル by「SAKE HALL HIBIYA BAR」

5年前、日本酒とカクテルの可能性に魅了されたバーテンダーとらにより広められてきた和酒カクテル。和の技、素材、酒を融合させる和酒カクテルの意義とは?オーセンティックバーのバーテンダーとともに日本酒の未来を考える。

文:Ryoko Kuraishi

サキニックで日本の「乾杯」を変える!と意気込む。「司牡丹」のMOTOZAKEを使ったサキニック¥670。SAKE HALL HIBIYA BARではアイスも割り水も全て同じ銘柄のミネラルウォーターを使用。サキニック用にオリジナルトニックも開発した(写真右)。Photos by Kenichi Katsukawa

「ご存じのように日本のバーは世界でも評価が高く、そのバーテンディングも同じように注目されています。
技にもバーのコンセプトにも和の素養が生かされているのに、そこで扱う酒だけは洋ものであることに違和感を感じていたバーテンダーは少なくないはずです」


そう話すのは、「SAKE HALL HIBIYA BAR」などを展開する環境開発計画の山本利晴さん。
和酒カクテルの仕掛け人であり、さらなる普及を目指し全国を飛び回っている。


和食文化の根底にあるものといえば、麹だ。
清酒造りの世界では「一麹、二もと(酒母)、三造り(もろみ)」という。
酒のみならず、味噌、醤油、みりんと和食に欠かせない調味料はいずれも麹が醸したものだ。
とすれば、麹が育んだ酒こそ日本固有の酒といえるだろう。


ならばぜひとも日本酒を使い、日本から世界に新しいカクテルを発信してみたい。
バーテンダーとしての本懐を振り返るにつれ、そんな思いを抱くようになったという。

今年の夏には韓国・ソウルのバーに招かれ、MOTOZAKE&和酒カクテルをお披露目した。和を意識したプレゼンテーションも好評だったとか。

そんなバーテンダーらが考える和酒カクテルとは、日本酒の繊細さとカクテルの奥深さを兼ね備えたもの。
SAKE HALL HIBIYA BARオススメのカクテルを紹介してもらおう。


「私たちとしては、乾杯から和酒カクテルを推しています。
『とりあえずビール』の代わりに、ぜひ『サキニック』をためしていただきたいですね」


サキニックとは、日本酒にトニックウォーター、ソーダーを合わせてオレンジピールを添えたもの。
この「サキ」には先、つまり「未来」という意味も込められている。
日本酒の未来を自負しているからだ。


「日本人はもちろん、海外でのティスティングでも好評を博した自信作です。
ベースの味を損なわないよう、甘みを抑えた仕上がりのオリジナルトニックウォーターも作ってしまったほど(笑)」


同じサキニックでもベースのMOTOZAKEを変えるだけで全く異なる味わいが楽しめる。
シンプルなレシピであればこそ、ベースの個性がうまく現れるのだ。

それぞれの蔵元の歴史やストーリーを物語るブース内。レイアウトもしつらえも全く異なる仕様に。

その他の和酒カクテルのレシピも、基本的にはシンプルだ。
同じ郷土あるいは季節のフレッシュフルーツをつぶし、そこに日本酒を注ぐだけ。
山本さん曰く「米、仕込み水、副材料の産地を合わせる『地カクテル』こそ、最高のハーモニーを奏でる」。


逆に、カクテルに仕立てる際に気をつけるのが副材料とベースとなるMOTOZAKEとのバランス。


「ベースと副材料のバランスは1:1、MOTOZAKEはカクテル総量の半分以上が基本です。
日本酒のうまみ、味わいはデリケートなので割りすぎても魅力が半減してしまう。
例えば洋風のリキュールを合わせると、日本酒の個性が消えてしまいます。
リキュールは1ティースプーンまでにし、日本酒ベースの味に仕上げています。


そして四季・旬・地域をカクテルで演出するために、季節のフルーツや野菜でアクセントを添えて。
冬はミカンやリンゴ、ザクロ、春はメロン、オレンジ、夏はスイカに桃。
秋は梨や柿でも試します。
こんな風に、基本のレシピができあがっていきました」

山本さんらがサポートするイベント、酒蔵バー。酒蔵の中にご覧のようなカウンターとバックバーを用意して地元のファンに和酒カクテルを振る舞う。

現在、山本さんたちは蔵元、問屋、酒屋とタッグを組み、地方や海外への展開を積極的に仕掛けている。
例えば、各地の酒蔵で酒蔵バー、「MOTOZAKE BAR」をスポット的に開催。
地元の人々に和酒カクテルを振る舞い、日本酒の新しい楽しみ方を提案している。


「光武酒造場(「光武」)、富久千代酒造(「鍋島」)など6つの酒蔵を擁する佐賀県鹿島市では、「鹿島酒蔵ツーリズム」として酒蔵をめぐる旅のスタイルを推進しているが、もちろんここでも酒蔵バーのデモンストレーションを行っている。


そのほか、NBAと共同でセミナーやイベントを開催するなど、バーテンダーとのさまざまな取り組みも。
これらは国内のみならず韓国、シンガポール、プノンペンでも実施しており、いずれも好評を博した。


地方で開かれるNBA主催のカクテルコンペでは、「MOTOZAKEコンペ」を行ったこともある。
これは和酒カクテルを主役にしたコンペ形式のイベントで、その土地の副材料を用いて蔵元がオリジナルカクテルを作り、来場者の投票によりナンバーワン和酒カクテルを決めたという。

東京にいながら酒蔵ツアーを体験しているようなムードが楽しめるのも、この店の特徴だ。

エンドユーザー向けとしては、茶道の師範とコラボするお茶×日本酒のワークショップ、はたまたスイーツと和酒カクテルなど、異ジャンルとの取り組みにより幅広い層に向けてプロモーションを行っている。


「和酒カクテルが、バーのスタンダードとして根付くことが私たちの願い。
ですから大きく仕掛けてブームにするよりも、口コミやティスティングを重ねてバーテンダーやエンドユーザーに認知してもらうような、草の根運動的な地道なプロモーションを続けています」


今年も和酒カクテルのイベントを地方で、そして東京で仕掛けていく予定だ。
まずは3月末に実施される鹿島酒蔵ツーリズムで日本酒カクテルバーを出店したいと考えている。
4月初旬にはSAKE HALL HIBIYA BAR6周年アニバーサリーが控えており、こちらでは各蔵元によるシェイクイベントを開催予定だ。
和酒カクテル、そしてMOTOZAKEを広めるためにも、ますますの海外ツーリストが見込まれる2020年に向けて、ここ2、3年を絶好の機会と捉えている。


「まずは乾杯のサキニックで、日本から世界に向けて和酒カクテルを発信していきたいですね」

SHOP INFORMATION

SAKE HALL HIBIYA BAR
東京都中央区銀座5-6-12 B1
TEL:03-3572-7123
URL:http://www.hibiya-bar.com/sakehall