日本の四季の味を奏でる!
バーの新潮流、和酒カクテルって?
<前編>

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バーの新潮流、和酒カクテルって?
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和酒カクテル by「SAKE HALL HIBIYA BAR」

バーテンダー、バー業界にとって馴染みの薄かった日本酒。その関係に今、新しい風が吹いている。今回は日本酒×カクテル=「和酒カクテル」の、全く新しいコラボレーションの裏側に迫る!

文:Ryoko Kuraishi

「SAKE HALL HIBIYA BAR」のエントランスには、各地の蔵元の軒下も飾る杉玉がずらり。Photos by Kenichi Katsukawa

空前のインバウンドブームに乗って注目されている、和食や日本の伝統芸能。
その中で「和酒カクテル」が脚光を浴びている。
「和酒カクテル」とはその名の通り、日本酒をカクテルに仕立てたものだ。


長らくバーでアンタッチャブルな存在だった日本酒をフィーチャーしたのは、オーセンティックバーの「日比谷バー」。
聞けばこのプロジェクト、同じ志を抱く蔵元とバーテンダーのコラボレーションから実現したものらしい。
和酒カクテルの開発当時からこのプロジェクトに携わる、環境開発計画の山本利晴さんにお話を伺った。

ホールの中に「浦霞」「司牡丹」など7つの蔵元のブースを個室仕立てで展開する。

「日本酒の蔵元としては、これからの時代に向けて新しい層に日本酒の良さを知ってほしいという願いがあったようです。
一方、私たち日比谷バーも未来に向けて異なる層に新しい提案をしてみたいと思っていたところでした。


そんな時に持ち上がった、日本酒とバーの新しい取り組み。
しかも、若い層や女性など日本酒をあまり飲まれないという方々をターゲットにするということで、非常にやりがいのあるチャレンジだと思ったんです」


このプロジェクトの拠点とすべく、2011年には世界初の日本酒カクテル専門店「SAKE(サキ)HALL HIBIYA BAR」をオープンさせた。
こちらには日本各地から7つの蔵元が集結。
蔵元直送の日本酒を常時60〜70種を揃え、また日本酒をベースにした約150種のカクテルが楽しめるという趣向だ。


店内には、それぞれの酒蔵をイメージして内装を設えた7つの個室も備わっている。
各地から蔵元を集めたイベントでは、まるで酒蔵見学に訪れたかのような体験も。
こうしたイベントでは蔵元が自身の蔵で造った日本酒を使い、時にシェイカーを振ってカクテルを振る舞うこともあるのだとか。

季節のフレッシュフルーツを丸ごと使用する「フレッシュミストカクテル」¥790。

さらにこの店のスペシャルとして、蔵元の地元などで採れた旬の果物や野菜と日本酒を合わせる「ファーム・トゥ・グラス」のカクテルを用意。
ベースとなる日本酒の原材料である米も、カクテルの副材料も、同じ地域の「ファーム」で作られている素材から選べる。
そんなことから、和酒カクテルこそ日本のリアルな「ファーム・トゥ・グラス」を体現できると自負している。


このように造り手とタッグを組んで協力体制を敷いた結果、プロジェクト発足から5年経った現在、SAKE HALL HIBIYA BARでは毎月800本以上の日本酒を売り上げるようになった。
また、カクテルベース専用日本酒のブランドとして「MOTOZAKE(基酒)」もリリースすることができた。
中身は各蔵元の個性を生かした日本酒なのだが、バックバーになじみやすいよう、少しだけ洋風にアレンジされたラベルが特徴だ。


MOTOZAKEを使った和酒カクテル、その味わいにはいくつかポイントがあるという。
早速、おいしさのポイントを聞いてみよう。

冬は酸味の効いたザクロがオススメ。MOTOZAKEは新潟の「吉乃川」を使用。

まずはベースとなる日本酒の選びから。


「最初にお話ししておきたいのが、日本酒を取り巻く背景です。
まず、最近は日本酒ブームと言われています。
全国各地の蔵元の地酒に注目が集まるようになった結果、ここ十数年で日本酒は飛躍的においしくなりました。


35年ほど前、『サムライロック』という日本酒のカクテルが考案されました。
日本酒をライムジュースで割って、ロックでいただくカクテルです。
現在の日本酒ブームで好まれているのは全国各地の地酒ですが、当時の日本酒は現在とは異なり醸造アルコールや糖類を今より多く使用した酒が中心であったため、これを飲みやすくするためのカクテルが考案されたようです。


翻って、現在は各地の蔵元から様々な地酒が登場しています。
和酒カクテルも日本酒を飲みやすくするレシピではなく、むしろ個性あふれる地酒のおいしさを引き出すレシピになっています。


地酒のおいしさとはつまり、蔵元の地元の風土が育んだ個性。
こうした背景もあり、MOTOZAKEからは各蔵元を象徴するキャラクターの日本酒をリリースしています」

カクテル用のMOTOZAKEもバックバーに勢ぞろい。

そんな日本酒に合うのはもちろん、同じ郷土で生まれた旬の農産物だ。
MOTOZAKEを使った和酒カクテルで「ファーム・トゥ・グラス」を大切にするのは、そんな背景があるからだ。


「日本酒って、47都道府県のすべてに蔵元があるんですよ。
おまけにしぼりたて、夏の生酒、ひやおろしと、季節もきちんと反映されています。
季節があるということは、旬の素材にも馴染むということ。
郷土色、季節感、料理とのマッチングという3つの観点から見て日本酒は大変魅力的な素材であり、かつ現代のトレンドとも合致します。
そうしたマッチングをカクテルで表現しようというのが和酒カクテルなんです」


後編では、和酒カクテルのレシピの話、地方への広まりと今後の展望を伺う。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

SAKE HALL HIBIYA BAR
東京都中央区銀座5-6-12 B1
TEL:03-3572-7123
URL:http://www.hibiya-bar.com/sakehall

SPECIAL FEATURE特別取材