日本人女性がプロデュース!
いまメスカルがアツいわけ。
<前編>

PICK UPピックアップ

日本人女性がプロデュース!
いまメスカルがアツいわけ。
<前編>

new 01.06.2021 #Pick up

平松”コティ”琴絵 by「エルフジヤマ」

今月は、日本人女性として初めてメスカルをプロデュースした「エルフジヤマ」のオーナー、平松琴絵さんが登場。いま、世界中のバーシーンで注目を集めるメスカルの魅力とその可能性を紐解きます。

文:Ryoko Kuraishi

こちらが日本人女性として初めてメスカルをプロデュースした”コティ”こと平松琴絵さん。Photos by Kenichi Katsukawa

ブームの兆しのメスカル、その特徴は?

世界的なクラフト・スピリッツの盛り上がりを受け、メキシコ伝統の蒸留酒、メスカルが注目を集めている。
その理由はメスカルならではの味わいと製法にあり。


いまもなお熟練の職人たちがほぼ手造りで、自然発酵などの伝統製法にこだわり、手間ひまかけて仕上げている。


加えて、ブルーアガヴェだけを用いるテキーラと異なり、多様なアガヴェ(なんと52種!)が原材料に用いられる。つまり味わいや香りのレンジが幅広い。


メスカルはヴァンナチュールに近いといわれるのは、酸化防止剤などが添加されていないことに加え、テロワールに由来する複雑な風味や味わいを備えており、ワインと同様、その年のアガヴェの出来によって味も度数も異なるから。


アガヴェの個性を存分に味わえることに加え、このようにスローなものづくりの姿勢にも共感が集まるのだろう。

日本メスカル協会会長としてメスカルの普及に情熱を傾けるカデム・ファラマーズ(フェリ)さん。

このように実に多彩な味わいがメスカルの持ち味だが、そうした味わいを守るのは、メキシコ・オアハカ州に拠点を構えるCRM(メスカル規制委員会)。
この団体がメスカルの伝統と文化を守っているのだ。


日本メスカル協会会長にして、日本ではじめてメスカル専門バー「フェリーズ」を立ち上げたカデム・ファラマーズ(フェリ)さんにメスカルの魅力を伺ってみよう。


「メスカルの場合、原材料となるアガヴェを収穫するのに20年、30年かかることもざら。
自然発酵でじっくり、ゆっくり発酵させますし、
こんなに時間をかけて丁寧に造られるお酒は、世界のどこを探しても他にありません。


ビオワインやアイラモルトを好む方なら、メスカルにも共通項を感じることでしょう。
繊細な風味、香り、味わいを感じ取る日本の方には、きっと気に入っていただけると思います」


さて、今回、メスカルのプロデュースを行ったのは、麻布十番でメスカル(とテキーラ)専門のバー、「エルフジヤマ」を営む“コティ”こと平松琴絵さん。


20代のころからテキーラしか飲んでいなかったというコティさんが、縁あってテキーラマエストロの資格を取得し、「エルフジヤマ」をオープンしたのは2014年のことだ。


初めはテキーラを扱っていたが、「カスカウィン」蒸留所の景田哲夫さんとの縁でメキシコの蒸留所を訪ねるなどしてメスカルへの知識を深めていくと、奥深いその魅力にすっかりハマった。


現在、およそ300種のボトルを揃える「エルフジヤマ」のバックバーのラインナップは、ほぼメスカルのみ。
日本人にメスカルの味わいを知ってほしいと、数年前にはメスカルと創作料理をコース仕立てで提供する「メスカル・ペアリング」も始めたほど。

左は、今回、コティさんが手掛けたボトルのアガヴェ、「ハバリ」のマエストロであるエル・チェトさん。右がその「ハバリ」。

マエストロとの出会いから生まれた、オリジナル・ブランドへの思い

もともと、タテマド(火山岩と薪でアガヴェを蒸し焼きにする、伝統的な手法のオーブン)を使ったテキーラを造りたいと思っていたコティさん。
著名な蒸留所である「カスカウィン」のオーナーに手紙を書いて現地の蒸留所へ視察に向かったことが縁で、メスカルの造り手(メスカレロ)に出会った。


コティさんによれば、メスカルが面白いのは、同じブランドでもアガヴェが違うとマエストロ、つまり造り手(蒸留所)も異なるところだという。


「“テロワール”といいますが、メスカルはまさにテロワールのお酒なんです。
土地に根付いたスピリッツだからこそ、土着のアガヴェごとに専門家がいるんですね。


原材料となるアガヴェの個性や品質を見極めるマエストロの力量や経験値、家族で蒸留所を守り続ける伝統的な暮らしぶりを見て、あらためて感動と敬意を覚えました。


そしてこんな素晴らしいお酒のことを日本でももっと知ってもらいたい。
そんな気持ちから、オリジナル・メスカルをプロデュースできないだろうかと考えるようになったんです」

ある日の「エルフジヤマ」のメスカル・ペアリングの料理。ロメスコ・ソースでいただく、ズワイガニとスクランブルエッグのトルティーヤ仕立て。トルティーヤはセモリナ粉に青のりを加えてツイストしている。

こうしてメスカルの蒸留所を訪ねて試飲を重ね、オリジナルのメスカル・ブランドへの思いを募らせるなか、アガヴェを見極める経験値とメスカル作りへの情熱、丁寧な仕事ぶりという、三拍子揃ったマエストロとの出会いが訪れる。


それを導いてくれたのが、CRM(メスカル規制委員会)の創設メンバーにして著名ブランドを手掛ける名プロデューサーを輩出したファビラ・ファミリーの一員、フリアン・ゴメス・ファビラさんだった。


ファビラ家が運営するブランド「LA MEDIDA」は、Measureつまり「基準」を意味する。
名前の通り、基準となるような高品質のメスカルを多数、生み出しており、メキシコ国内はもちろん、アメリカのファインダイニングにも選ばれている。


近年、メスカルの世界では複数品種のアガヴェをブレンドした「アンサンブレ」と呼ばれる商品の生産量が増加しているが、アガヴェそれぞれのアロマやフレーバーを大切にする「LA MEDIDA」では、ブレンドは一切、行わない。


最低でも7年から10年、品種によっては収穫までに30年以上かかるというアガヴェの個性こそがメスカルの面白さだと考えているからだ。


メスカル業界の重鎮であるファビラ・ファミリー、およびフリアンさんと出会ったことで、一気にオリジナル・メスカルが現実味を帯びてきた。
後編ではさらに、フリアンさんの協力のもとに実現したプライベート・セレクション誕生までの背景をご紹介しよう。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

エルフジヤマ
東京都港区麻布十番1-6-4 アニバーサリー2F
TEL:03-6804-5106
URL:http://www.elfujiyama.com

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