飲食業界注目のZ世代、
4人のスペシャル対談をお届け!
<前編>

PICK UPピックアップ

飲食業界注目のZ世代、
4人のスペシャル対談をお届け!
<前編>

#Pick up

松沢健さん、戸田京介さん、岩本涼さん、山口歩夢さん

「TeaRoom」岩本涼さん、「エシカル・スピリッツ」の山口歩夢さん、「WAKAZE」戸田京介さん、「Bar Pálinka」松沢健さん、業界注目の20代による座談会が実現!

文:Ryoko Kuraishi

撮影協力:WAKAZE三軒茶屋醸造所 PHOTOS BY KENICHI KATSUKAWA

今月は、飲食業界で活躍する注目の20代が大集合!

日本酒ベンチャーの「WAKAZE」で活躍する、若き杜氏の戸田京介さん。
余剰ビールを蒸留酒に仕立てるなど、サスティナブルなクラフトジンで循環経済の実現を目指す「エシカル・スピリッツ」の山口歩夢さん。

全く新しい日本茶を次々に手掛け、お茶の需要開拓を行う「TeaRoom」の岩本涼さん。
そしてパーリンカに魅せられ、パーリンカの専門バーと輸入業務を行う「Bar Pálinka」の松沢健さん。

さて、それぞれが注目する飲食業界のトピックとは?


––みなさんそれぞれに交流があるということですが、まずは関係性を教えて下さい。


戸田「となると6通りの関係があるのか。まず、僕がWAKAZEでバイトをしていたときのバイト仲間が山口くん」


山口「で、僕の『ANTCICADA』のパートナーの篠原が、渋谷にあるコワーキングスペース『100BANCH』つながりで岩本くんと友達で、それで仲良くなりました。松沢くんとは、ぼくらがカイコの糞を原料に使った『SANSHA』を出したときに興味を持って遊びにきてくれて、それがきっかけです」


松沢「飯田橋(「Bar Pálinka」の最寄り駅)と浅草橋(「ANTCICADA」の所在地)ってエリアが近くて、総武線に乗ったらすぐなんですよ。で、遊びに行ったら『うわー』って歓迎してもらえた」


山口「みんな、パーリンカの専門バーがあるっていうから、以前からずっと「Bar Pálinka」を気にしてたんです」


松沢「僕と戸田くんは、『さいめ』という野菜のレストランつながり。そこの大将の嶋田寛元さんの紹介で初めて会って、WAKAZEのミードからいろいろ情報交換するように。昨年秋のことですね。それ以来、月に2、3回は会っていますが」


山口「僕もそれで『さいめ』にハマったんです」


松沢「『さいめ』の話は膨らみすぎるので、また後で(笑)」


戸田「岩本さんは、2年くらい前にWAKAZEに遊びに来てくれたことがきっかけで、昨夏には僕と歩夢さんと静岡の工場に見学にいきました。そこでコラボしようということで、『FONIA tea 〜Whisky Black Tea〜 recipe no.055』が生まれたんです」

両親ともにバーテンダーというバーテンダー一家に生まれ育った松沢健さん。京王プラザホテルや「Bar Benfidich」などで修業した後、2019年に独立してハンガリーの蒸留酒、パーリンカ専門バーの「Bar Pálinka」を神楽坂にオープン。パーリンカの普及・発展に尽力する人たちで形成される、ハンガリー政府公認の「パーリンカ騎士団」の認定を受ける。同時にパーリンカの輸入会社とデザインオフィスも経営している。94年生まれ。

Z世代は発信力!

––みなさん同世代ですよね。


松沢「バー業界に限っていうと、このくらいの年齢で表に名前が出てくる人って少ないですよね。 修業時代の2番手、3番手って名前が出てこないし、横のつながりもない。
そのつながりが出てきて面白い人たちと同じ目線で意見交換できるようになるのが、20代後半になりつつある僕たちの年代くらい。そういう面白い時期になったと実感しています」


岩本「僕たちの世代って、国のへだたりがなくなってきたことをリアルに実感している世代だと思うんです。アメリカで流行っているものが、タイムラグなく日本に入ってくる。
たとえば、アメリカではボタニカルティー、日本ではボタニカルをつかったジンのように、世界的なボタニカルのトレンドがあります。
こういう世界同時多発的なトレンドって、メディアが統一されてきたからだと思うんですね。だから消費者の思考も変わる。

さらに若い世代では、流行のはじまりや関心も同時ですよね。SNSでリアルなタイミングで情報を得ることができるから」


戸田「この世代に共通しているのは、ただ作ってそれでおわりじゃなく、それを広めようという意識を持っていること。
世界中に張り巡らされた情報網から世界中の情報を受信しているからこそ、外に発信しようという意識があります」

子どものころから料理が好きで、とくに発酵調味料に魅せられてきた山口歩夢さん。発酵調味料から微生物にハマり、好きが高じて農大の醸造学科に進学。同級生の影響もあり、酒マニアとして頭角を表す。大学2年時には発酵食品サークルを設立、わずか1年で大学最大規模を誇るサークルに育て上げた。在学中、WAKAZE社長の稲川琢磨さんに認められ、ボタニカルSAKE「FONIA」の商品開発に携わる。WAKAZEやmitosaya薬草園蒸留所で酒造りの経験を積んだ後、盟友・篠原祐太さんらと「ANTCICADA 」を立ち上げる。さらに循環型経済の実現を目指す蒸留プラットフォームの「エシカル・スピリッツ」を設立。今春、世界初の再生型蒸留所「東京リバーサイド蒸溜所」の稼働が正式にスタート。95年生まれ。

岩本「世界中で同じトピックで話ができるのはNetflixの功績もあると思います。世界中のみんなが共通のテレビを持った感じ。
Z世代はなんらかのストリーミングサービスを必ず使っていて、それが日常に溶け込んでいる」


松沢「自分たちの成長と一緒にインターネットのインフラが整備された時代に生きていますから。
高校生のときにはすでにスマホを使って情報を発信することが当たり前だった。
メディアに頼らず自分のプラットフォームで発信する意識が身についている」


戸田「その根底には、自分たちの次の世代のための社会変革とかマインドセットがあると思います。その種まきのための発信ですよね」

岩本涼さんは9歳のときに茶道に目覚め、現在茶道歴15年。早稲田大学を休学して世界を旅する中、世界中にそれぞれの茶文化があることに感銘を受け、大学在学中に株式会社TeaRoomを設立、現在は代表取締役を務める。日本の茶文化と様々な産業をつなぐ活動を行いつつ、サステイナブルな生産体制や茶業界の構造的課題に対して向き合うべく、静岡の製茶工場の事業を継承し、お茶の需要開拓に努める。97年生まれ。

Z世代は何が違うのか?

––世代で区切られることには違和感があると思いますが、あえて伺います。Z世代とその上の世代の違いってなんだと思いますか?


山口「ジンの世界では焼酎蔵や酒蔵がジンを造り始めています。蔵元には、代々その地方で酒を造り続けている名家が多いんです。
対して僕にはそういうバックグラウンドがなにもない。
20代も自分ひとりです。比較対象が全くいないので自由にやれていますね。
孤独ですけれど(笑)」


岩本「お茶業界では、20代の僕がコミュニケーションを取りやすいのは60代の造り手なんですね。
なぜなら、30代、40代というと家業を継いだという方が多いのに対し、60代は創業したという方が多いから。
ゼロからお茶に向き合い、お茶でなにをできるのかを考えながらマーケットを作り上げてきた。僕にとってメンターといもいうべき方々です」


戸田「日本酒も30代、40代の造り手が多いですが世代間のグラデーションが進んでいる印象。
ここ(WAKAZE)ってマイクロ醸造所のケーススタディなんですが、ここ最近、同じように小規模でゼロからスタートする30代前後の方が増えてきています。
さらに、酒蔵の名前よりも造り手の名前が前面に出るようになった。
それもSNSのおかげだと感じています」

発酵過程でボタニカル素材を投入する独自のボタニカルSAKEをリリースする日本酒ベンチャーの「 WAKAZE 」。三軒茶屋醸造所で杜氏を務める戸田京介さんは、学生時代、WAKAZEでアルバイトを始めたことから日本酒の魅力にハマり、ついには造り手に転じた。東工大を休学して木戸泉酒造や土田酒造で酒造りを学び、一昨年、ついに杜氏に就任。現在はWAKAZE三軒茶屋醸造所でどぶろくとSAKEを造っている。97年生まれ。

後編ではSNSなど、さらにいくつかのキーワードをあげ、みなさんの意見を伺います。


後編に続く。

SPECIAL FEATURE特別取材