キーワードはSNS、クラフト、付加価値。
Z世代が注目するものは?
<後編>

PICK UPピックアップ

キーワードはSNS、クラフト、付加価値。
Z世代が注目するものは?
<後編>

#Pick up

松沢健さん、戸田京介さん、岩本涼さん、山口歩夢さん

前編に引き続き、飲食業界を賑わす注目の20代によるフリートークをお届けする今月。SNSネイティブのZ世代がいま考えていることって?

文:Ryoko Kuraishi

Z世代のSNS活用術。

––ここまでいくつかのトピックのなか、SNSというキーワードが頻出しました。


戸田「松沢さんはめちゃくちゃうまいですよね。すごいバズってる」


松沢「FB、Twitter、Instagram、それぞれのSNSの“色”ごとに使い分けていて、同じ内容でも写真も文章も変え、投稿日時もずらします。
Instagramを見ている層にTwitterの内容は刺さらないし、FBは同業者への近況報告にしかならない。
日常のあれこれは、人柄がいちばん出るTwitterで発信。
FBについては、店をオープンしてから投稿を激減させました」


山口「僕はTwitterを告知目的で利用しています。
文章を作るのが苦手なので1週間に一度の頻度でインパクトのあるニュースを発信します。
他の人にその告知内容をリツイートしてほしいので、一つの投稿に対していいねが多くなるように使っています」

山口さんが注目のジンとして持ってきてくれたのはサントリーの「SUI」。テイスティングしながらの座談会となりました。

岩本「そうですね、個人のアカウントについては、バズりそうな投稿は意識的に出していません。
SNSのフォロワーとは応援・期待してくれている方々の数で、SNSとはその方々とコミュニケーションを取る方法だと考えています。
だからビューを稼いでバズを起こすよりも、目の前にいる一人一人と丁寧にコミュニケーションを取ることを心がけています。

その方が結果的にフォロワーの方々との距離が高まり、エンゲージメントも上がります。
投稿に対して反応してくれる方々が増えれば、その結果バズるよりもより多くの方々に情報発信できる、そう思っています」



SNSの話題からさらにブロックチェーン技術や仮想通貨、仮想空間の話題で場は大いに盛り上がりますが、ここでは割愛。

いずれにしろ、多くの人との交流を促すようなツールに興味があるようです。

松沢さんが持ってきてくれたのが「土器」。前編でちらりとご紹介した「さいめ」でインスパイアされたもの。土器での飲み口を知りたい方は、ぜひ「Bar Pálinka」へ!ディープな土器談義を耳にできるはず。

ジャパニーズクラフトジンについての考察。

––山口さんがあげてくれたキーワードの一つがクラフトジン。いまの日本はクラフトジンバブルともいえる状況ですが……。


山口「サントリーの『SUI』は、ユズ、生姜を使って日本人の味覚に完全に寄せてきたジン。それで1300円という値段がすごい。角ハイボールの次を見据えているのか、居酒屋にメチャクチャ入りこんでいる。一般消費者への広まりとしてターニングポイントになると思う」


松沢「僕たちみんな、ジンを一過性のブームにしたくないという思いは共通している。
『気づいたらそこにある』、みたいな存在がいい」


戸田「これまでは蒸留酒にあまり馴染みがなかったのですが、歩夢さんのおかげでジンの面白さを知るようになりました。
なにがすごいって、日本酒のポジティブな香りの成分がたった3種類しかないのに対し、蒸留酒の香りのバリエーションが桁違いに多いこと。
蒸留酒の香りのインプットのために、最近、バーにも足を運ぶようになりました」

パーリンカの魅力を語る松沢さん。

おいしい”の先にある付加価値ってなんだ!?

山口「昨年12月に、岩本くんとコラボしたジンをリリースしたんです。
茶葉と古木茶(耕作放棄された畑の茶の幹の部分)を原料にしていて、古木茶由来のキャラメルのような香りを残しつつ、そこに緑茶と間引きされたスダチ、ミョウガの外側の皮と茎を使いました。

実は、自分のなかでいまいちばんアツいジャンルがお茶。
緑茶のジンって多いけれど、淹れたときのあの香りのするジンがないんです。
それをなんとか引き出せないかと研究中」


岩本「いま”フェイクティー”というジャンルが、少しずつですがR&Dされてきているんです。
お茶以外の素材を使ってお茶の風味を再現するというものなんですが、山口くんのジンにその代表格になってほしい」


––––皆さんそれぞれ、お茶、日本酒、パーリンカ、クラフトジンと活躍するフィールドは違いますが、これからの飲食業ではなにがフックになると思いますか?


松沢「僕はパーリンカの輸入もやっているのですが、普及において大切にしているのは『おいしい』の先にある付加価値です。

じゃあその付加価値はなにかといったら、パーリンカの造り手や地域のストーリーだと思う。
お金をいただいて提供する以上、美味しいのは当たり前。そのさきにどんな面白いものをみんなに提供できるか、そこなのかな」

戸田「WAKAZEは『日本酒を世界酒に』というテーマを掲げていますが、それって結局、地域性とか風土という付加価値だと思うんです。

世界酒とするなら世界各地に造り手を増やさないといけない。
現地で造る人がいて、その土地ならではの世界酒が造られて、だから飲む人が増えてくるはずだから。
もちろん、輸送にかかるエネルギー面からも現地で作って現地で消費することが望ましい」


岩本「僕たちは精算と物流と販売をやっているのでそれぞれに目標がありますが、結局何がしたいかというと『お茶って衰退しているよね』と言われない社会を作ること。
そのためにシステム化・効率化を進めます。
非合理の世界を、情熱をもって開拓する。これは自分だからできることだと考えています」


山口「僕は『おいしいものを嫌いな人はいない』と信じて、おいしさ、つまり味覚の研究を行っていました。
味覚を科学的に捉える僕から見ても、お茶って面白いし、奥が深いし、こんなおもしろいものを衰退させてたまるかっていう思いがあります。

僕の得意分野である醸造や発酵を媒介に、おいしいものを口にしたときの感動を享受できる。そんな幸せな機会をたくさん作り出していきたいと思っています」


みなさん、ありがとうございました!

SPECIAL FEATURE特別取材