お茶とお酒がマッチング!
和酒の新潮流はここから生まれる。
<後編>

PICK UPピックアップ

お茶とお酒がマッチング!
和酒の新潮流はここから生まれる。
<後編>

#Pick up

櫻井真也さん by「souen 櫻井焙茶研究所」

煎茶に碾茶、ほうじ茶に煎り番茶。おなじみの日本のお茶が、洋のスピリッツに出合ったら......?日本茶専門店が作るオリジナルの茶酒で、和のフレーバーの魅力に開眼!

文:Ryoko Kuraishi

茶葉を漬け込んだスピリッツ各種。メイン画像は左が「煎茶ジン」、右が「煎り番茶ウイスキー」。各1,200円。Photos by Tetsuya Yamamoto

「souen 櫻井焙茶研究所」の楽しみの一つは、オリジナルの茶酒。
ウォッカ、ジン、ラム、そしてウイスキーをベースにしたお茶のお酒が揃っている。


たとえばウォッカと碾茶を合わせた「碾茶ウォッカ」。
碾茶は石臼で挽いて粉末状にすると抹茶になるのだが、玉露のような独特のかぶせ香が特徴だ。
これをすっきりとしたウォッカに合わせた。


「煎茶ジン」は、ドライな飲み口のタンカレーのジンに煎茶をマッチング。
ジンの苦味と煎茶の渋みが不思議なマリアージュを生み出す。


「ほうじ茶ラム」は、甘みのあるホワイトラムに香ばしいほうじ茶を漬け込んだもの。
「ラムのいかにも洋酒的な甘みには、緑茶の甘みは合わない。
ラムの華やかな甘みと、ほうじ茶の鼻から抜ける香ばしさがマッチして、まるで熟成されたダークラムのような深い味わいが楽しめます」


このほうじ茶ラムにはチョコレートはもちろん、和菓子にも合うのだとか。

茶器やオリジナルの茶筒など、店のテイストにぴったりあった雑貨も並ぶ。

個性が光る「煎り番茶ウイスキー」は、スコッチ好きをも魅了するスモーキーな一杯。


「アイラウイスキーみたいなものができないかと思って」、すっきりと飲みやすいジャパニーズウイスキーに京番茶をマッチングさせた。
ピート香とは一味違う、焦がしたような、あるいは燻したような京番茶のスモーキーさはクセになる味わい!


「焙茶研究所」という名前が示すように、さまざまなスピリッツやリキュールと茶葉の組み合わせでトライ&エラーを繰り返し、ようやく形になったのがこの4種だという。


「日本の酒というと焼酎、日本酒、梅酒というのが一般的ですが、いままでにない新しいスタイルの和の酒を作りたい」と、新たなマッチングの探求に余念がない。

「一般に、低音のお湯では甘みがでやすく、高温では渋みがでやすくなります」と櫻井さん。ぜひ参考に!

そもそもバーテンダー出身の櫻井さんにとって、バーテンディングとお茶には相通じるものがあるそうだ。
お茶を淹れる美しい所作、その動作ひとつひとつにはお茶を美味しく淹れるための理由がある。
見た目の美しさを求めたのではなく、おいしさを追求したら、この一連の所作になる。
そんなところに、カクテルを手際よく、美味しく作るためのバーテンダーの仕事との類似性を感じるのだとか。


櫻井さんにとって茶房のカウンターは、バーカウンターと同じだ。
「向かいに座るお客さんがどんなお茶を好むのか、いまの気分はどうなのか、どんな味わいを求めているのか。
対話をしながらそのニーズを探り、最高の一杯をお出しする。
おもてなしの精神も、バーテンディングと通じるものがありますね」

こちらはサン・ルージュという品種の茶葉を漬け込んだ梅リキュールの「星子」。茶葉に含まれるアントシアニンと酸性の梅が結びつくと、鮮やかなピンクに変化する。

バリスタとバーテンダーのコラボレーション、あるいはコーヒーを使ったカクテルなどが注目を集める昨今だが、お茶に無限の可能性を感じ、ここを訪れるバーテンダーやバリスタも少なくない。
そんな期待に応え、このカウンターから新たなお茶の楽しみかたをさまざまに提案する。


たとえば毎月、玉露や深蒸し、水出しなど、その月の季節感を反映したテーマをもうけてセミナーを開催している。
製法や淹れ方の異なる単一品種を飲み比べたり、お茶のブレンドに挑戦したり、日本茶をより豊かに楽しむためのヒントを提供している。


また、パリの老舗百貨店「ボン・マルシェ」で開催された和菓子店の「HIGASHIYA」のイベントでは、フランス人に玉露と深蒸し煎茶、ほうじ茶を披露、好評を博した。

自家焙煎のほうじ茶。No.1は茶葉そのものの味わいを楽しめる浅煎り、No.2はスタンダードな中炒り、No.3はまるでコーヒーのような飲み口がユニークな深煎り。飲み比べが楽しい。各800円。

「抹茶ブームもありましたが、多くの人は玉露の名前は知っているけれど、実際に飲んだことはない。
そんなパリの人たちに玉露の旨味を堪能してもらいました。


ほうじ茶は注文を受けてからその場で緑の茶葉を焙じ、香りを引き出して提供したのですが、これが大変好評で。
コーヒーや紅茶と同様、ロースト香の魅力は世界共通なんですね」


そんな体験を経て、あらためてほうじ茶の魅力をここから発信していきたいと考えている。


「日本ではほうじ茶はただの茶色いお茶でしかないんですが、実はほうじ茶だって火の淹れ方や浅煎り、深煎りで味も香りもまったく異なります。
試行錯誤を繰り返しながら、そんなことをここで発信していきます。
ほうじ茶は今後、日本を代表するお茶として世界に広まるかもしれませんね」


世界を席巻する日本茶に思いを馳せながら、日々店に立っているという櫻井さん。
オリジナルの和酒、そして日本茶の愉悦をぜひ味わいに出かけよう。

SHOP INFORMATION

souen 櫻井焙茶研究所
(取材時)東京都港区西麻布3-16-28 ル・ベイン1階
TEL:03-5786-0024
URL:http://www.sakurai-tea.jp

SPECIAL FEATURE特別取材