大麦麹×和のボタニカル!
国産スピリッツTUMUGIのこと。
<後編>

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大麦麹×和のボタニカル!
国産スピリッツTUMUGIのこと。
<後編>

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TUMUGI by「WAPIRITS TUMUGI」

本格麦焼酎の担い手として麹に対する思いは人一倍強いという三和酒類。2020年に向け、造り手たちはTUMUGIを足がかりに世界に向けて麹の文化を発信していく。

文:Ryoko Kuraishi

宇佐神宮にほど近い三和酒類。蒸留所見学の前に宇佐神宮へ。

本格麦焼酎「いいちこ」で知られる三和酒類は今年、創業60年を迎える。
宇佐に本社及び工場を構えるほか、現在は日田工場、安心院葡萄酒工房を擁する。
本社が位置する一帯は清らかな軟水に恵まれており、こうした背景もあって今から34年前、この地に移転してきた。


TUMUGIの原酒である三和酒類の本格麦焼酎の売りは
1.素材の良さ
2.加工の良さ
3.造り手の誠意
だという。


「原酒の材料は二条大麦。
ビールやウイスキーの原料と同じもので、100年以上も大麦だけを栽培している生産者などから醸造適正のある大麦だけを仕入れているんですよ。
もちろん、原酒の種類によって使用する大麦は変えています」(焼酎の製造担当、藤田善也さん)

こちらがTUMUGIの命とも言える大麦麹。

大麦の表面を均一に削るのは意外にハードルの高い工程で、これは日本の加工工場にオーダーしている。
大麦本来の形状を保ちながら削ることで、雑味をきれいに取り除くことができるのだ。
磨いた大麦を浸水させ、十分に水を吸わせたところで蒸気で蒸しあげる。


この蒸した大麦に麹菌をつけて大麦麹を作るのだが、「寝かせ」や「手入れ」など多くの工程で職人の勘や経験がものをいう。
この大麦麹のできが原酒の味を左右する。


「大麦麹に仕込み水である地下水、それから自社で開発した酵母を加えるのが1次仕込みで、ここで酒母を育てます。
5日間発酵させると酒母ができます。


2次仕込みでは、1次仕込みで育った酵母と仕込み水、蒸した大麦を加え、さらに発酵させます。
酵母の発酵と麹の糖化、2つをバランス良く作用させる(並行複発酵)ことで私たちが求める原酒の味になります。
これは世界でも類を見ない、日本の伝統的な発酵の技なんですよ」

四国のゆず畑にて。山の上まで、求めるフレーバーをかなえるゆずを探し歩いたという。

2次発酵させたものをポットスチルで蒸留すると本格麦焼酎の完成だ。
三和酒類では深い旨みが際立つ常圧蒸留法と香りを引き出す減圧蒸留法の2つのスタイルを採用、香りと旨味の両立を図っている。


「“いいちこ”というと自動化された工場で大量生産しているイメージを持たれがちなのですが、実は多くの工程を職人が行っている昔ながらの焼酎です。
ですから原酒のコンセプトによって仕込み方法、蒸留方法を都度、変えることができるんですね」


すべての原酒に共通するのは、”大麦や麹の良さを素直に感じさせる”という点。
あらためて三和酒類の麹への思いを、工学博士の下田雅彦副社長に伺った。


TUMUGIには、日本のスピリッツを極めていくんだという覚悟が込められています。
日本のスピリッツを開発することで、新しい本格麦焼酎のあり方を考えてみようと思い立ったんです」

ホワイトオークの新樽で寝かせる"NEW OAK CASK STORAGE"。

「10年前、多様化するマーケットをにらみ、三和酒類は国産のスピリッツ開発に乗り出ました。
この時、『ナチュラル フレーバー』という名義で九州限定のスピリッツをリリースしたのですが、いわゆるフレバード焼酎では肝心の麹の個性やキャラクターが伝わらないと、その考え方を一新することに。


5年前から麹の面白さを全面に打ち出したボタニカルスピリッツに舵を切り、改めて開発を一から行うことになりました。
それが現在のTUMUGIです。


3年前にはさらに視野を広げ、麹文化の蒸留酒を追求すべく、“麹プロジェクト”を立ち上げました。
いいちこブランドからも麹のみを原料とする全量大麦麹仕込みの日田全麹、空山独酌といったプレミアム焼酎をリリースしています。


麹は和食文化の根幹。
だからこそ、作り手である自分たちが声をあげて、その文化を広く伝えていかなくては。
それが私たちの“麹プロジェクト”であり、“麹プロジェクト”を洋酒の世界に広めていくツールがTUMUGIなんです」

バーにて試したい“KOJI SOUR”。ここから麹文化を世界に発信する。

TUMUGIをきっかけに、三和酒類の造り手たちはバーという全く新しいフィルターを通して洋酒の世界を垣間見ることになった。
焼酎と異なり、TUMUGIにはバーテンダーそれぞれのアイデアや工夫を凝らす余地がある。
TUMUGIを入り口に、バーテンダーがナビゲーターとなって麹文化をバー・シーンから世界に発信することができるのではないかと期待している。


「その一環として、柑橘類とTUMUGIを合わせたカクテルを“KOJI SOUR”と名付け、プロモーションしていく予定です。
まずは全国のバーテンダーの皆さんに認知してもらい、少しずつ裾野を広げ、2020年にはメイド・イン・ジャパンのスピリッツとして海外へ……」


日本が誇る麹文化と、それが育むスピリッツ、“WAPIRITS” TUMUGI
まずは暑い季節にぴったりの、“KOJI SOUR”からお試しあれ!

SHOP INFORMATION

WAPIRITS TUMUGI
大分県宇佐市山本2231-1
TEL:0978-32-3737
URL:http://wapirits.com

SPECIAL FEATURE特別取材