「カクテルアワード2016」受賞の松下知寛さん
「カクテルセッション in NY」特別インタビュー!

SPECIAL FEATURE特別取材

「カクテルアワード2016」受賞の松下知寛さん
「カクテルセッション in NY」特別インタビュー!

#Special Feature

文:Drink Planet編集部

昨年10月に開催された「2016 ビームサントリー ザ・カクテルアワード」において、最高賞である「カクテルアワード 2016」に輝いた松下知寛さん(ダイニング & バー ダナドゥア/岡山県)。

2017年2月、その副賞として「ケンタッキー・ニューヨークを巡るカクテルの旅」に招待されました。

なかでも旅のハイライトといえるのが、NYの現役バーテンダーたちとの「カクテルセッション」。

松下さんはアワードカクテルの「Cactus Flower(カクタス フラワー)」ではなく、あえてこのセッション向けてオリジナルカクテルを創作したんだとか。

普通の旅ではなかなか味わえない貴重なバー・エクスペリエンスについて、松下さん本人にインタビューしました。

スピークイージーの先駆け「PDT」へと繋がるホットドッグ店の前にて。

スピークイージーの先駆け「PDT」へと繋がるホットドッグ店の前にて。

松下さんはヨーロッパへは何度か足を運んだことがあるそうですが、NYは今回が初めて。

まずはNYの第一印象を聞いてみました。

「空港からマンハッタンの街に至るまで、本当にいろんな人種の方がいるんだな、というのが率直な感想です。NYの後にケンタッキーとシカゴを回ったのですが、その2つの街とも、東京や他の大都市とも違う、圧倒的なパワーを感じました。この街で人々はどんな風にカクテルを楽しんでいるのか、想像しただけでワクワクしてきました」

NY滞在中、松下さんは何軒ものバーをホッピング!

そのなかには過去にDrink Planetで取材した「PDT」「Bar GOTO」「Employee’s Only」「Saxon + Parole」といった名前も。

他にも「Clover Club」や「ATTABOY」、「Angel’s Share」といった有名バーを訪れたそうです。

(個人旅行で行っても、これだけのバーホッピングはなかなかできません!)

そんななか、松下さんの目に、NYのバーシーンはどんな風に映ったのでしょうか?

「“アメリカ=大味”なカクテルを想像していたのですが、どのカクテルも味わいがキレイにまとまっていて驚きました。いい意味でアメリカっぽくありませんでした。もしかしたら私がアジア系だから、味わいを少しアレンジしてくれたのかもしれません。やはりNYはアメリカといっても特別な街なんだと認識させられました」

なにか気になったトレンドはありましたか?

「バーボンやその他のスピリッツに、ベーコンをウォッシュしているのが目立ちました。ベーコンフレーバーはトレンドというより、必ずメニューにある定番という感じです。アメリカ人にとっては、親しみやすく、懐かしいフレーバーなんだと思います。日本でいうとカツオ出汁のウマミのような存在かもしれませんね」

「それとどのバーでも最初にグラスに入った水が出てきました。ニューヨーカーは待つのが苦手だそうなので、一杯目までの繋ぎのような意味なのかもしれません。要はお客さまを待たせないための配慮です。こうした細かいサービスが行き届いている部分も、アメリカ的というよりは、NY的で参考になりました」

松下さんのオリジナルカクテル「TOMODACHI」。

松下さんのオリジナルカクテル「TOMODACHI」。

さて、夜はバーホッピングを楽しむ一方で、2日目の午後にはNYで活躍する現役バーテンダーたちが参加する「カクテルセッション in NY」が行われました。

同イベントのホスト役である「Saxon + Parole」ヘッドバーテンダーのマサ・ウルシドさんの呼びかけにより、以下のバーテンダーが集まってくれました。

Matt Fitz (Saxon + Parole)
Richard Berman (Saxon + Parole)
Ben Rojo (Angel’s Share)
Nana Shimosegawa (Angel’s Share)

松下さんはNYのトップバーテンダーたちの前で、このセッションのために創作したオリジナルカクテル「TOMODACHI(友達)」を披露しました。


★TOMODACHI Recipe
Maker’s Mark 20ml
Lejay Cream de Cranberry 20ml
Japone Sakura 15ml
Fresh Lime Juice 5ml
すべての材料を氷とともにシェイクし、カクテルグラスに注ぐ。
柚子ピールをふりかけ、桜の花びらを飾る。


「せっかく日本から行くのですから、アワードカクテルではなく、もう少し日本らしさを感じていただけるようなカクテルを用意して、NYのバーテンダーの方と交流を深めたいと考えました。ですからプレゼンテーションもすべて英語で行いました。日本語の原稿を英語に翻訳し、それを録音して何度も聞きながら練習していきました」

その甲斐あって、集まったNYのバーテンダーたちからの反応も良好。

桜や柚子はニューヨーカーにも馴染みがあるため、「なるほど!」「こうなるのか!」という感じで、カクテルの味わいを確かめながら楽しんでいたようです。

「完全アウェイの状況で緊張もしましたが(笑)、ニューヨークの、しかも同じバーテンダーを前にカクテルを作れるなんて、そうそうできる経験ではありません。こうした機会をいただけたことに心から感謝しています」

松下さんのパフォーマンスに続いて、NYのバーテンダーたちも次々とオリジナルカクテルを披露していきました。

松下さんは、どんな印象を受けたのでしょうか?

「皆さん、ひと手間ふた手間かけて、必ず自家製の材料を用意してきていました。ベーススピリッツはもちろん、リキュールやビターズといった副材料も含めて、です。目の前のプレゼン自体はシェイクしたりミキシングしたりとシンプルなのですが、下準備にはかなり時間がかかっているはずです。自分にしか作れないカクテルを作る。皆さん、そうした自負を持って、本当の意味でのオリジナルカクテルを披露してくれました」

「私の場合は『こうあるべきだ』とか『こうしなければならない』という想いが先行してしまうのですが、カクテルはもっと自由でいいんだ、という当たり前のことに気付かされたような気がします」

日本とNY、具体的に味わいの違いなどはあったのでしょうか?

「味わいというよりも方向性に違いはあるように感じました。日本のカクテルはトータルで味わいのバランスを取るようなイメージです。一方、NYのカクテルは最初のインパクトに重点を置いているようなイメージです。ひと口目で飲み手の心をギュッと掴むような……。どちらがいい悪いではなく、そうした違いを感じられたこと自体が収穫でした」

今回の「ケンタッキー・ニューヨークを巡るカクテルの旅」を経て、日本に戻ってから実践していることはあるのでしょうか?

「以前にも増して、フレッシュなハーブやスパイスを取り揃えるようにしました。例えば、お客様の気分や状況に合わせて、スタンダードカクテルをハーブやスパイスで少しアレンジしてお出ししたりしています。NYと岡山は違うので(笑)、あまり個性を出し過ぎない程度に、自分なりのアプローチを心掛けるようになりました」

今回の旅では、ケンタッキーのバーボン蒸溜所、Beam Suntory本社があるシカゴにも立ち寄ったそうです。

おそらく松下さんは、ここで話したこと以外にも、それぞれの都市で大きなことから些細なことまでさまざまなことを吸収してきたことでしょう。

実際にその土地を訪れ、自分の五感で感じたことは、一生の財産になるはずです。

最後に松下さんより、これから「ザ・カクテルアワード」に応募する方に向けて、メッセージをいただきました。

「オリジナルカクテルを創作する、というのは面白い反面、本当に大変な作業です。トレンドや自分らしさも加味しつつ、普及性や普遍性も頭に入れなくてはなりません。味わいはもちろん、ストーリーやネーミングも大切です。考えることが山ほどあります。でもそうした作業を通して、バーテンダーとしてのスキルは必ず磨かれていくはずです」

「そしてもし優勝することができたら、他では味わえない体験が満載の、楽しいカクテルの旅が待っています(笑)」

★2017 サントリー ザ・カクテルアワード COCKTAIL COMPETITION


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Matt Fitz (Saxon + Parole)

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