
DP LABOどりぷラボ
今回のお題「アメリカン・クラフトマンシップ」
〜Jack Daniel’s Inspiration Circuit Vol.1〜
#DPLabo
初回に登場するのは「FLAMINGO’S COCKTAIL PARLOR」の猪瀬達也さん、「THE SHOESHINE AND BAR」の日沖憲吾さん、「The Condition Green」前所優香さんの3人です。
それぞれのジャックダニエル観をベースに、1杯のカクテルに仕立てるまでのストーリーをご紹介します。
文:Drink Planet編集部 撮影:秋山枝穂
なごやかに鼎談スタート。
“American Craftmanship”をコンセプトとする「Jack Daniel’s Inspiration Circuit」には、アメリカのカルチャーやそれを育んだスピリットに造詣が深いバーテンダーが登場します。
それぞれの解釈でジャックダニエルの魅力をひもといていただき、それをオリジナルカクテルに表現してもらう「Jack Daniel’s Inspiration Circuit」では、それぞれのジャックダニエル観と、1杯のカクテルに仕立てるまでのストーリーをご紹介します。
テネシー州で生まれたジャックダニエルは、アメリカ合衆国初の政府登録蒸留所として知られています。
バーボンではなくテネシーウイスキーというジャンルに分類されるジャックダニエル、その最大の特徴が「チャコール・メローイング」製法。
熟成前の原酒を、巨大な濾過槽に詰めたシュガーメープル(サトウカエデ)の木炭で一滴ずつ丁寧に濾過する「チャコール・メローイング」を経ることで、ジャックダニエルならではのまろやかでスムースな口当たり、甘い香り、メローな味わいがもたらされるのです。
創業以来、150年以上もの間、変わらないレシピ・製法を守り続けるものづくりの姿勢から、“アメリカのクラフトマンシップの体現”と謳われるようになったジャックダニエル。
20世紀になると多くのミュージシャンから圧倒的な支持を受けるようになり、大衆にも広がっていきました。
「Jack Daniel’s Inspiration Circuit」では、アメリカンスピリッツの象徴といわれるジャックダニエルを、自由、反骨精神、オリジナルという、アメリカの精神に共鳴するバーテンダーたちに再解釈してもらいます。
あなたにとってジャックダニエルとは?
「初めて飲んだウイスキー」(猪瀬)
「ロックスター」(日沖)
「かっこいい大人」(前所)
今回登場いただく「FLAMINGO’S COCKTAIL PARLOR」の猪瀬達也さん、「THE SHOESHINE AND BAR」の日沖憲吾さん、「The Condition Green」前所優香さんは、奇しくも全員が「Tram」「TRENCH」の卒業生。
カクテルメイキング前のジャックダニエル談義から大いに盛り上がりました!
「ジャックダニエルといったら、やっぱり“ロックスター”じゃない?あの特徴なボトルを持ってステージパフォーマンスするロックスター。
キース&ミックのThe Rolling Stonesコンビに、ジミー・ペイジに……あれ、みんなイギリス人だ(笑)。アメリカ人ならジョン・べルーシやGuns N’ Rosesのスラッシュですかね」(日沖)
「僕にとってジャックダニエルは、初めて飲んだウイスキー。
傾倒するタトゥー・カルチャーと相性がいいこともあって、若いときからジャックダニエルを飲んでいました。
初めはおいしさとか味わいもわからないまま、ジャックダニエル=かっこいいという先入観だけで飲んでいた」(猪瀬)
「『ジャックをロックで』ってオーダーすると、自分が大人になった気がしましたよね」(前所)
猪瀬さんと前所さんは「TRENCH」時代の同僚。前所さんが「Tram」専属となり、今度は猪瀬さんと日沖さんが「TRENCH」で同僚に。
「大人になっていろいろウイスキーを飲むようになると、ジャックダニエルの個性がわかるようになります。
まずは香り。バーボン特有のトウモロコシ香だけでない、シャープさがあります」(日沖)
「初めてジャックダニエルに対して抱いた思いが、『あ、これはバーボンじゃないんだ』ってことでした。
若い時はアメリカのウイスキーはみんなバーボンだと思っていたから(笑)。
テネシーウイスキーとバーボンはどう違うのか、それを調べるきっかけになりました」(猪瀬)
--多くの方がソーダ割やオンザロックで楽しんでいると思いますが、ジャックダニエル・ベースのカクテルってどうでした?
「そう言われると、ジャックダニエル・ベースのちゃんとしたカクテルを飲むのってこれが初めての経験だったかも。
ジャックダニエルには色々な要素があるから、カクテルにしようと考えてみると、造り手がジャックダニエルに対してどういうイメージを抱いているのかが明らかになると思います」(前所)
ジャックソーダ&オンザロックで「おつかれさまでした!」。
ジャックダニエルをカクテルに仕立ててみたら
さて、今回はジャックダニエルの特徴の一つである「チャコール・メローイング製法」に再注目。
3人には炭、もしくはチャコール・メローイングに着想を得たカクテルを作成してもらいました。
「僕のなかでは個性がはっきりしているウイスキーだから、みんながどういう要素を抽出してカクテルに仕立てるのかすごく興味がありました。
今回、お題が『チャコール・メローイング』なので、メープルシロップを使うという方向に偏りがちだけれど、お題がなければもっとそれぞれのバーテンダーの個性が出ておもしろいと思った」(猪瀬)
「ジャックダニエルをカクテルベースとして捉えてみたのは初めてだったんですが、このウイスキーに対するイメージが変わりました。
ソーダ割とかオンザロックではない、ジャックダニエルのよさを引き出すカクテルはなんだろう?って、実は深遠なテーマで。
音楽が大好きな私たちは、おいしいお酒を飲みながらライブを楽しんでほしいという思いから、よくフェスに出店していますが、
今回の経験を踏まえて、ジャックダニエル・ベースのカクテルとフェスは相性がいいのでは?って思いました。
次回、みんなに楽しんでもらえそうなジャックダニエルのカクテルを出してみようかなと考えています」(前所)
パンチの効いた見た目に反し、飲み口・味わいは柔らかに。飲み手の予想を覆す「Paint it Black」。
日沖さんのカクテル「Paint it Black」
ジャックダニエルのイメージカラーであるブラックを、竹炭で表現した1杯です。
「ジャックダニエルを飲むジミー・ペイジやキース・リチャーズをイメージした、ウイスキーベースの黒いカクテル」と聞くと、ガツンとハードな飲み口を想像するかもしれません。
が、ほんのり梅の香りを纏わせたカクテルの味わいは、どこまでも優しく繊細。
「見た目と実際の味わいのギャップ、そしてジャックダニエルが象徴するアメリカと、自分のアイデンティティである日本の融合を裏テーマにしました。
ジャックダニエルのベースに加えたのは、日本らしいリキュールの星子。
アメリカに自生するサトウカエデ、つまりシュガーメープルのシロップを、アジアらしい竹の炭で濾過。優しい甘味とハードなブラックカラーを表現しています。
仕上げにジャックダニエルをスプレーで一吹き、特徴的な甘い香りを際立たせました」
「REDSHOES」(西麻布)、「Boo Who Woo」(六本木)など、時代を彩った遊び場でキャリアを積んだ日沖さん。“伝説のバーテンダー”デニーこと愛川誠次郎さんの「Bar The hand」を経て、「TRENCH」、「CABIN」、そして昨年末、5周年を迎えた「THE SHOESHINE AND BAR」へ。20代で衝撃を受けたビートニク、小学生のころから愛用するリーバイス&コンバース……とアメリカのカルチャーに対する思い入れは人一倍!「ジャックダニエルは“クラフト”というキーワードにも共感しています」。
バナナのような甘みを生かして飲みやすいカクテルに仕立てたという「John Doe」。ジャックダニエルの個性はありつつも、ウイスキー初心者でもごくごく飲める、懐の広いカクテルです。
猪瀬さんのカクテル「John Doe」
ジャックダニエルに、コーヒービーンズをインフューズしたメープルシロップ、塩水、レモンジュースを加えてシェイク。
ソーダでアップし、ドライバナナとブラックペッパーをあしらった「John Doe」。
ジャックダニエル由来のバナナのような甘い香りの向こうに、香ばしいコーヒーのニュアンスが立ち上がり、なんともおいしそうな一杯に。
「ジャックダニエルのトップノートに感じる青いバナナのニュアンスから、ブレックファーストのようなカクテルを思いつきました。
お題が“チャコール・メローイング”なので、これに用いられるシュガーメープルに着目。
メープルシロップにコーヒーをインフューズしたら、バナナの香りと相まってブレックファーストらしさが引き立ちます。
甘味と微かな塩味の融合がアメリカのダイナーの朝食を思わせる、カジュアルなカクテルです」
中学生のころからゴリゴリのパンクを聞いていた猪瀬さんは高校卒業後、バーの世界へ。ウイスキーバー、ロックバー、クラブ……さまざまなお酒の世界を経験したのち「Tram」へ入店。薬草酒&クラフトカクテルにハマると同時に、18歳で入れ始めたタトゥーと親和性の高いバーカルチャーがあることに感銘を受けたそう。独立して始めた「FLAMINGO’S COCKTAIL PARLOR」はカウンターだけの小さなバー。猪瀬さんのキャラクターと、セルリアンタワー東急ホテルの真裏という立地も相まって、来日したミュージシャンのフェイバリットプレイスになっている。
アブサンが香り立つこちらは、ラズベリーの爽やかさをまとったショートカクテル。ジャックダニエル×デュボネ×メスカルと、味わいは骨太!
前所さんのカクテル「Sour Jack Band」
「創業者のジャスパー・ニュートン・“ジャック”・ダニエルさんも大の音楽好きで、広大な敷地にダンスホール付きの酒場を設え、自分が結成したバンドの演奏を披露していたといいます。
そんな彼のバンドをイメージしたカクテルがこちら」
ポイントは、柑橘ではなく材料が備える酸味だけで“サワー”を表現しているところ。
また、カクテル名の“Jack”は“ジャックダニエル”のJackと“乗っ取る”のjackのダブルミーニングになっています。
「キーワードは、お題の『炭』のなかに潜む酸。焦がすことで酸味が強調されたり、酸っぱい香りが生成されたりということがあります。
ジャックダニエルも同様に、甘みの裏側にある酸味に着目。ライ麦パンも焦がすと独特の青い酸味が現れますが、それをインフューズしたデュポネと、独特の燻し香をもつメスカルと合わせました。
これにフレッシュラズベリーを合わせることで、カクテル全体が華やかな香りに包まれます。仕上げに、コーヒーとアブサンを合わせたものを吹きかけました」
前所さんは麻布十番のオーセンティックバーでバーテンダーのキャリアをスタート。薬草酒に魅入られた「Tram」「TRENCH」、その後、「PR BAR」(青山)を経て「The Condition Green」をオープン。「真夜中まで飲んだとしても、翌日を元気に過ごしてほしい」という思いから、ベースアルコールも副材料もなるべく体に負担のかからないものをセレクト。「飲みに来てくれる人の翌日の体調も考えたカクテルを提供したいと思っています」。
ジャックダニエルを、クリエイティビティあふれるカクテルに仕立ててみたら……?
「Jack Daniel’s Inspiration Circuit」はまだまだ続きます!