空間のプロが教えます!
バーの最旬インテリア。
<後編>

PICK UPピックアップ

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#Pick up

尾崎大樹さん by「BaNANA OFFICE」

空間デザインの行方を左右するのは、オーナーのビジネスモデルとコンセプト、そして時代を切り取るデザイナーのマインドである。気鋭のアートディレクター、尾崎大樹さんのイメージソース、そしてケーススタディをご紹介。

文:Ryoko Kuraishi

映像と空間の融合例。バックバーにはプロジェクションマッピングでデジタルの花モチーフを映し出す。CASA AfeliZ GINZAより。

商業デザインのシーンで活躍するアートディレクター、尾崎大樹さんのデザインの原点は学生時代にさかのぼる。


「学生時代、友人たちと『BANANA BOYS』というデザインユニットを作って遊んでいました。
オリジナルグッズを製作してショップで販売したり、様々なイベントで活動していたのですが、みんなで楽しく、新しい場所やモノ、空間を作り上げるという、いまの活動のルーツがそこにあったんです。
いまも昔も、『愉しい場所を作る』ことがデザインの核ですね」
商業デザイン、特に飲食店を多く手掛けるが、飲食店は不特定多数の人が集い、楽しい会話、時間、交流を生み出す場を作り出せる点が魅力的なのだとか。


「個人的にはアンティークや古い建築物など、渋くてレトロなものが好きです。
デザインのヒントは旅に求めることが多いですね。
古い映画や写真集などから得られることもありますが、僕自身は人の暮らしに興味があるので古い建築物の中で実際に人がどんな暮らしを送っていたのか、想像しながら世界各地の街を歩くことが楽しい。


アメリカ、特に西海岸の住宅が好きなんですが、歴史ある家屋やビンテージマンションなど日本にも素敵な建築がたくさんありますよね。
だから、国内外に関わらず旅にはよく出かけます」

こちらもCASA AfeliZ GINZAから。プロジェクションマッピングでオブジェもイメージチェンジ。

そうして自分の中にストックした、いわばデザイン上のマインドのネタが積み重なり、手掛けるデザインに投影される。
尾崎さんは、「マインドは自分のライフスタイルの移り変わりとともに変化していく」というが、そうした変遷が時代性を映し出すからデザインは面白いのだ。


それでは尾崎さんの物件をケーススタディとして紹介していこう。
最近手がけた「CASA AfeliZ GINZA」は、銀座7丁目にオープンしたタパス&レストランバーだ。
ワインセラーの中にバーを設えたレイアウトもユニークだが、こちらにはいままでと全く異なるビジュアルのアイデアが施されている。
プロジェクションマッピングを用いた、映像と空間を融合させる仕掛けだ。


「バーの造り自体はごくシンプルなんですが、バックに花のモチーフを投影すると全く異なるムードを演出することができます。
要所要所にプロジェクションマッピングの演出を作っていきました」

石、木、ガラス。有機的でありながら硬質な素材感が奏でる、ソリッドなムードが心地いいバースペース。品川の響より。

品川の「響」は和食レストランだが、エントランスの横にアイランド形式のバースペースを設けた。
「お店のコンセプトは『旬の厳選食材と職人ワザの融合、本物を楽しむ大人が集うダイニング』。
厳選、職人、本物といったキーワードをビジュアルで表現すべく、石と木の質感でソリッドなムードに。
バースペースには天井からガラスのシェルフを吊り、そこにボトルを並べています。
ウイスキーを美しく見せる演出に気を配りました」


よりカジュアルな印象に仕上がったのは「TOWER DINING恵比寿店」。
タワーレコードがプロデュースする、音楽と料理を楽しめる空間だ。
「コンクリート打ちっ放しの、天井の高い空間です。
ここは、タワーレコード発祥の地である西海岸を思わせる開放感が欲しいとリクエストがあったので、西海岸のダイナーをイメージしました」
古材とアイアンを合わせた什器や、バックバーの後ろにあしらったメタルメッシュのインダストリアルな雰囲気に、鮮やかなライムグリーンのアクセントカラーが効いている。

天井を剥がしたインダストリアルなムードにアクセントカラーがよく映える。ウッド、アイアン、メタルメッシュのアイテム使いで西海岸らしさを表現。

同じコンクリートの打ちっ放しでも、よりミニマルに仕上げたのが渋谷のカフェ&ダイニング「miyamasu’」。
「カフェとダイニングという2つのシーンを2フロアで構成しており、それぞれ異なる過ごし方ができるようになっています。
ハコはごくシンプルなのですが、天井に色をあしらい、家具、照明、ディスプレイなどディテールで遊びを加えています。
『光をデザインする』をコンセプトに、照明に配慮したので時間帯によって全く異なる趣が楽しめます」


一つ一つのデザインには、それぞれ理由がある、と尾崎さん。
店舗デザインはトレンドや時代を表すだけではない、そのディテールや設えの裏にはその店のコンセプトやビジネスモデルが見え隠れする。


どんな店を目指すのか、コンセプトは何か。
バーのあり方を考えるとともに、それを表現する空間デザインに思いを巡らせてみれば、そこから新しいバーのあり方や役割が見えてくるかもしれない。

渋谷のカフェ&ダイニング「miyamasu’」は異なる光の演出が、2つのシーンの違いを際立たせる。

SHOP INFORMATION

BaNANA OFFICE
東京都港区赤坂8-5-40ペガサス青山510
TEL:03.6434.9341
http://bananaoffice.jp

SPECIAL FEATURE特別取材