心とろけるマリアージュ!
お酒とチョコのあまーい関係。
<後編>

PICK UPピックアップ

心とろけるマリアージュ!
お酒とチョコのあまーい関係。
<後編>

#Pick up

宮原美樹さん by「ショコラティエ・ミキ」

お酒を美味しく楽しく味わうには、上質なおつまみが必要だ。ショコラティエールの宮原美樹さんわいく、「それぞれに奥深いお酒とショコラ。一緒にいただけば、その楽しみが一層広がります」。そんなマリアージュの極意をお届けしよう。

文:Ryoko Kurahishi

期間限定で発売された「マリアージュ・ショコラ」。チョコレートにアルコールは含まれず、あくまでも酒と一緒に味わうことを意識して作られた。

宮原さん流のマリアージュを代表する試みの一つが、日本テキーラ協会、日本ラム協会、そして「ドンナ・セルヴァーティカ」とコラボした期間限定商品、「マリアージュ・ショコラ」シリーズ(現在は終売)だ。


この「マリアージュ・ショコラ」はテキーラ、ラム、コニャック、アイラモルト、ブルゴーニュの赤ワイン、シャンパーニュという6種の酒を引き立てるチョコレートでマリアージュの妙を楽しもうという、全く新しいコンセプトを掲げたチョコレート・アソートだ。


「もともと、顧客向けに10種のショコラをブレンドしてショコラティエ気分を味わってみよう!というワークショップを行っていました。
そこに偶然、日本テキーラ協会の林会長がいらっしゃったんです。
何かテキーラ協会向けのワークショップをと、お声がけいただいて、そのときはドン・フリオのレポサドとアネホを使ってタブレット(板チョコ)を作ってみました」


林会長がそのイベントを気に入ったことから、「マリアージュ・ショコラ」ショコラティエとして宮原さんに白羽の矢が立った。
以下、6種の酒のために手がけたタブレットを紹介しよう。

こちらは定番の板チョコレート。ミルク、ビター、ホワイトと3種類で展開。各¥590。

テキーラ用に作ったのは、ビターな味わいのクーベルチュールをベースに、ベネズエラ産のナッツ風味のチョコレートとキャラメルのようなミルクチョコを合わせたさっぱりした風味のチョコレート。
ジャリジャリした食感のマルガリータ・ソルトとメキシコ産のチリパウダー、種子島産の粒の荒い砂糖を合わせ、食感とピリっとした辛味を効かせたタブレットに仕上げた。


日本テキーラ協会の推奨は、ドン・フリオ レポサド。
テキーラの吟香とカカオの香りがマッチして、チョコレートの苦味、渋みが驚くようなアクセントを添える。


宮原さんが大好きだというコニャックには、カカオ本来の土っぽさが感じられる濃厚な味わいのクーベルチュールをチョイス。
コニャックしかり、熟成感のある蒸留酒には、果実味を感じさせるチョコレートよりも、カカオが香り立つ骨太のタイプが合うのだという。


「果実味を感じさせるショコラはワインにはマッチするけれど、コニャックと合わせると軽く感じられてしまう。
このときは土壌を感じさせる骨太なクーベルチュールをベースに、ミルクチョコを少しだけ加えてアクセントにしました。
オススメはトレ・ヴューです」

あるときの「終末のお酒シリーズ」。ドメーヌ・ボワニエルの1984年ミレジムを使ったトリュフは、アルマニャックの豊かなアプリコットの香りを生かしてエレガントに仕上げた。

アイラモルト用には、ミルクを強く感じさせるもの、さっぱりしたもの、こってりと、味わいの異なる3種のホワイトチョコをブレンド。
それにイングランド東部エセックス地方産、マルドンのシーソルトをアクセントに加えた。
アイラ産のクリーミーな牡蠣をイメージしてブレンドしたそう。
ミルクチョコの濃厚でマイルドな甘みとアクセントの塩っけが、ピート香にぴったりマッチ。
チョコとモルト、それぞれが互いを包み込むような優しいマリアージュが生まれた。


ふくよかなアグリコール・ラムには、ミルキーなキャラメルを感じさせるミルクチョコを。
芳醇なブルゴーニュには、華やかな香りと赤い果実の風味を感じさせるビターチョコ。
辛口のシャンパーニュには、キャラメル感のあるミルクチョコレートをベースに、ホワイトチョコ、森林をイメージさせるさわやかなビターチョコをブレンドしたハイミルクチョコレート。
さらに酸味のあるマダガスカル産のビターチョコを隠し味に効かせている。


「試作期間は3週間ほどだったのですが、お酒をテイスティングして、ショコラをブレンドして、と繰り返しているといつの間にか酔っ払っちゃって作業終了(笑)。
実質の作業時間が少ないから大変でした。
とくにシャンパーニュに合うバランスを探るのに苦労しましたね。


それぞれにハードルは高かったんですが、各ジャンルの第一線で活躍する方々とコラボすることで、お酒の世界をより深く知ることができました。
上質なお酒とショコラを組み合わせることで、どちらもの世界を身近に感じてもらえますから。
余韻と余韻を重ね合わせるような、大人の提案ができて幸せでした」


さて、この時期、チョコレートカクテルを提供しようと考える飲食店は多いだろう。
「マリアージュ・ショコラ」の経験を踏まえ、チョコレートとお酒を自在に操る宮原さんにマリアージュのコツをこっそり教えてもらった。


「大前提として、香料の入っていないチョコレートを選ぶこと。
香料が入っているとカカオはもちろん、お酒の風味も損なわれてしまいます。


また、お酒と同様、カカオにもそれぞれの個性である繊細な香りや味わいがあることを覚えていてください。
カクテル・メイキングと同じだと思うんですが、カカオの苦味、甘み、酸味、渋味のどの要素を引き立てたいのか、想像力を膨らませてお酒との相性のバランスを探ってみてください」

ショコラティエ・ミキのオリジナル・ショコラ・カクテル、「カリブ」。

宮原さんが自分で作るなら、「ブランデーや蒸留酒をたっぷり注いだカクテルが気分」。
というわけで、この時期におすすめのオリジナル・カクテル、「カリブ」のレシピをどりぷらのためだけに披露してもらった。


まずはオレンジ風味のミルクをつくる。
フレッシュなオレンジ1/2個をまる剥きし、1cm幅の輪切りにスライス。
小鍋に牛乳240mlとオレンジを入れてしっかり沸騰させたら、蓋をして12分蒸らす。
オレンジを絞らないよう、牛乳だけを網で漉す(①)。


次にカクテルベースを作る。
ヴァローナのビターチョコレート「カライブ」100gをボウルに入れ、55℃以下の湯煎で溶かしておく。
溶かしたチョコレートに温かい①100gを加え、ゴムベラで滑らかになるまでよく練り混ぜる(②)。
②が滑らかになったら、さらに①110gと生クリーム100gを合わせて混ぜる。
茶漉しで漉し、冷蔵庫で冷やしておく(③)。


よく冷えたカクテルベース③でカクテルを作る。
グラスにコニャック(ジャン・フィユー トレ・ヴュー)5〜8ccをグラスに入れ、③を加えてステア。


「カライブ」はカリブ諸島のカカオ豆を使ったビターチョコレート。
すっきりとした味わいはまろやかなコニャックと相性抜群だ。
チョコレートは油なので、ミルクでしっかりと乳化させるのがポイント。


「カカオの風味とハーブ、果実、お酒、自然が作った恵みの味を、ショコラの一粒一粒でマリアージュさせたい」と宮原さん。
「個性的でユニーク、斬新」と称されるチョコレートよりも、カカオ本来の豊穣な風味が感じられる、ほっと一息つけるような味わいを。
そんなチョコレート本来の魅力を存分に堪能できるショコラ・カクテル、ぜひこの時期にお試しあれ。

SHOP INFORMATION

ショコラティエ・ミキ
東京都世田谷区南烏山4-9-11
第2アベニューハウス001号
TEL:03-3300-1277
URL:http://www.choco-miki.com

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