MAWSIM GIN:熱帯のフレッシュなスパイス&ハーブ仕立て!
バッチごとの違いを楽しむクラフトジン。
<後編>

PICK UPピックアップ

MAWSIM GIN:熱帯のフレッシュなスパイス&ハーブ仕立て!
バッチごとの違いを楽しむクラフトジン。
<後編>

#Pick up

Hara Tomotada/原有匡 by「MAWSIM」

カンボジアの熱帯雨林が育むスパイスやハーブ、柑橘の味わい、香りをぎゅっと閉じ込めた「MAWSIM GIN」。この夏リリース予定のリフィルボトルのことなど、これからの展開を聞きました。

文:Ryoko Kuraishi

オランダのハイテク蒸留機、iStill社製を採用。リサイクル、リユース、ハイテクのバランスがなんとも今っぽい。

熱帯アジア特有のスパイスやハーブをフレッシュのまま蒸留し、クラフトジンを造る。

これを収益事業とし、本来の目標である未利用バイオマスエタノールのエネルギー利用への挑戦を続ける。

……という壮大なストーリーに圧倒される「MAWSIM GIN」。評価されているのが、誕生のストーリーではなく、味わい・香りというのがカッコいい!

「2020年3月にカンボジアで会社を立ち上げ、『MAWSIM GIN』のプロジェクトをスタート。

立ち上げてすぐにコロナ禍によるロックダウンに入りましたが、これがあったからこそ、2年間という十分すぎるレシピ開発期間を確保できました。

とうのも、この間にカンボジアで手に入る200種以上のボタニカルを蒸留し、分量を微調整しながら試作を行いましたから。

ボタニカルはより香り立ちがよくなるよう、現地のスタッフがすり鉢を用いて手で擦るなど、一致団結してものづくりに取り組んだ期間でしたね」(サンウエスパCEO原有匡さん)

左は自家製トニックシロップを加えたジントニック、右は「スモーキーネグローニ」。どちらもコンセプトバーで提供している。プノンペンを訪れた際はぜひ、ご予約を!

おすすめの飲み方は?

おすすめの飲みかたはストレート、ロック、ライムを添えて、ソーダでアップして……とさまざまだが、蒸溜所に併設するコンセプトバーで好評を博している飲み方が、ジンと同じボタニカルを使って仕込んだ自家製トニックシロップを加えたジントニック。

シグネチャーカクテルとしては、バーテンダーの大場文武さんがイベント時に創作してくれた「スモーキーネグローニ」も人気だ。

通常のホワイトネグローニに、ワイルドカルダモン(カンボジアカルダモン)のさやをスモークしてフレッシュな香りを纏わせたものだとか。

原さんの個人的な好みは、岐阜にある「Heuga BAR」のバーテンダー、甲斐友和さんが作ってくれた「MAWSIM GIN SPICES & HERBS」のジン・アレキサンダーとラスト・ワード。

甲斐さんによれば、ロンドンドライジンのジントニックに「MAWSIM GIN」を1ダッシュ加えてもいいそうだ。これだけで奥行きや風味がガラッと変わるのだ。

アンティークボトルをベースにデザインした、こだわりのボトル。

リユースを前提に開発したボトル

ジンのレシピと同じくらいこだわったボトルデザインにも、ぜひ、ご注目を。

「MAWSIM GIN」のボトルは、アンティークのジンボトルをアップデートしたというケルデル瓶。

東京の下町エリアにて半手作りで製作しており、ゆらぎや気泡といった個性を留めた仕様に。

『World Gin Awards 2023』ではこのボトルデザインでも銅賞を受賞している。

「ジンボトルは、カラフェや花器などへのリユースを前提に品質管理をしています。

江戸時代、日本にやってきたオランダ船の水夫がジンの空き瓶を海中へ投棄したところ、それを回収して茶室を飾る花器として珍重したというエピソードが残っており、これを下敷きにリユース前提の管理を考えました。

そもそもケルデル瓶はオランダ語でケースボトルを意味しますが、その名の通り、ケースにぎっしりと隙間なく詰めることができるので、緩衝材を省いて輸送することができます。

輸送効率もアップし、環境負荷も低減できますから」

バッタンバンオレンジ(カンボジア・バッタンバン州原産のオレンジ)、ライム、コブミカン、キンカン、パイナップル、パッションフルーツ、マンゴーと、熱帯の柑橘やフルーツを使った「MAWSIM GIN TROPICAL CITRUS」。

「バーあるある」として、「ボトルが増えて処分に困る」問題があるが、これの解決にも貢献したいということで、ただいま「MAWSIM GIN」のリフィルボトルを開発中。

東南アジアで出回っているガラスボトル入りのタイのソーダがあるが、この瓶をリユースして「MAWSIM GIN」を詰め、リフィルボトルとして売り出す計画を進めている。

夏頃に販売予定だが、価格も手頃になるというから、嬉しい試みといえるだろう。

「さらに、リフィルボトルがあることで各バーのハウスブレンドもできそうです。

バッチごとに微調整を行っているとはいえ、『MAWSIM GIN』はフレッシュなボタニカルを使っていますので完全なレシピコントロールが難しい。

だからこそ、バッチごとの違いを楽しんでもらいたいのですが、リフィルがあればそれらを少しずつブレンドすることでその店ならではのブレンドを作っていただける。

同じ銘柄なのに店舗によって個性があるというのもおもしろいと思っています」

問題のホテイアオイ。現時点では、1回の蒸留につき40kgの乾燥ホテイアオイを消費することができるそう。 ちなみに、1㎡あたりのホテイアオイの乾燥重量は約1kg。

「MAWSIM GIN」の今後の目標は、ブランドの認知度をさらに上げ、多くの人に飲んでもらうこと。

「その先に私たちが考えるのは、他拠点製造です。私たちはボタニカルを手作業で仕込むなど“クラフト”にこだわっていきたいと考えていますので、いずれはカンボジアの生産拠点のキャパシティを超えるかもしれません。

そうなったときはバングラデシュやラオスなど、カンボジア同様にスパイスやハーブが豊富で、同じ社会課題を抱えるアジア諸国に進出するのもおもしろそう。

ダッカ・バージョン、ヴィエンチャン・バージョンというように、同じレシピでありながら生産拠点ごとに味わいや香りの異なる『MAWSIM GIN』があったら楽しいですね」

事業の目標としては、「MAWSIM GIN」をホテイアオイ由来のバイオエタノールで仕込みつつ、非可食植物由来のバイオエタノールのエネルギー利用を実現すること。

「これまで利用されなかったもの、無価値と思われていたものに光をあて、価値あるものに転換するという私たちの理念を追求していきたい」

アジア諸国で雇用やものづくりの機会を創出し、環境課題の解決に貢献し、地域に還元するという「MAWSIM」。

地球環境、消費者、生産者にオールウィンなプロダクトは、これからの社会に必要なサスティナブルなものづくりを体現しているといえそうだ。

SHOP INFORMATION

MAWSIM
#133E1, St.108, Sk.Sras Chhork, Kh.Daun Penh, Phnom Penh
TEL:+855 98 420 205
URL:https://mawsim.shop

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