富山発、グラス作家とバーテンダーがコラボ。
唯一無二のカクテルグラスが完成した!
<後編>

PICK UPピックアップ

富山発、グラス作家とバーテンダーがコラボ。
唯一無二のカクテルグラスが完成した!
<後編>

#Pick up

Koga Yudai/古賀雄大 by「KOGA GLASS STUDIO」

今月はバーシーンの名脇役、カクテルグラスにフィーチャー。富山市に拠点を構えて活動するガラス作家、古賀雄大さんとバーテンダーのHIROKIさんがコラボして、理想のカクテルグラスを作るまでを追いかけます。

文:Ryoko Kuraishi 撮影:Daiki Kasahara

「富山ガラス工房」にて、古賀さんの製作プロセスを見学するHIROKIさん。

オリジナルグラスを製作するプロセスはこんな感じだ。
「初めに、作りたいグラスの簡単なデッサンを見せていただきます。

あわせてグラスの容量やサイズ、デザイン意図を伺います。

この時点で物理的にできないことがあればお伝えし、こちらから造形やディテールについて提案することもあります。

そうした要望をもとにサンプルを作り、サンプルを見ながら修正を行います」

11月にお披露目した4つのグラスを見てみよう。古賀さんともう1人、ガラス作家の小宮崇さんの協力のもとに完成したものだ。

4人のバーテンダーが描いた、4つのカクテルグラス。

HIROKIさんが依頼したのは、炭酸の抜けにくさを追求し、究極のジントニックのためのスクエアタイプのグラス。42mmの角形氷がすっぽり収まるデザインである。

グラスの中にステムの長い小さなグラスをあしらったものは鹿山さんのデザイン。小さいグラスのなかにはハーブなどの素材をあしらう。グラスに口を近づけた際、香りを際立たせることができる。

口縁部の厚みを変えたグラスは中村さん。飲み口の味わいに変化をもたせるための意匠だ。

グラスの中に仕切りを設けたユニークなあしらいは、山本さんの原案。1杯のなかに別々のドリンクを用意、口の中で2つのドリンクが混ざり合い、1つの味わいが完成するという趣向がユニークだ。

吹きガラスの手法を用いて柔らかな曲線を自在に生み出す。ガラスの面白さは、「温度によってさまざまな表情をもたせられるところ」と古賀さん。温度によって膨らみ方やガラスの厚み、ゆらぎといった表情をつけていく。

完成したグラスで提供されたカクテルの写真を目にして、「あらためてグラスとお酒の相性のよさを実感した」と古賀さん。

「鮮やかなカクテルが注がれたグラスは見た目にも美しく、『バーカウンターでどうサーブするかを想像してデザインを考えていたんだ』と、プロフェッショナルの見せ方や技を勉強させてもらいました。

プロに使ってもらう作品には、作り手である自分の想像を超えた用途を見せてもらえる楽しさがありますね」(古賀さん)

上記の4人のバーテンダー以外からも「自分のグラスを作りたい」という声が多かったそうで、嬉しいリアクションを前に「これからも自分の作品製作の合間にコラボレーショングラスを手掛けてみたい」、と古賀さんも前向きだ。

流れるようなラインが美しい古賀さんの作品。色が入るとまた異なる表情が生まれる。温度によって膨らみ方やガラスの厚み、ゆらぎといった表情をつけていく。

「ガラスの産地としての富山の特徴は、1人の作家が制作工程の1から10までを担うこと。

手作りガラスというと僕が修業した沖縄も有名ですが、あちらは分業制がスタンダード。対して、自己完結型の富山は多様性が特徴です。

また、『富山ガラス工房』のように個人で借りられる設備が整っていたり、ガラスに関するさまざまな情報がここに集約されていたり、制作に必要な環境が整っています。

だからこそ、さまざまな背景をもつ作家が各地から集まってくるんですね。

そんな富山のガラスシーンを一言で表現するなら、『多様性』。作家の数だけスタイルがあるといっても過言ではありません。

今回のバーテンダーとのコラボレーションのようなユニークな取り組みに、富山の多様性を生かせると感じています」(古賀さん)

ガラス製作に必要な設備を備えた工房を個人で借りることができる「富山ガラス工房」は人材育成の場にもなっており、ここから巣立っていく若手作家は少なくない。施設にはギャラリーショップが併設されており、富山のガラス作家の作品を展示する。

一方のHIROKIさんも、引き続きコラボグラスには力を入れていく予定だ。製作したグラスはイベントでのお披露目ののち、ECサイトで販売するとか。

また、売り上げの一部は考案したバーテンダーのみならず作家にも還元することで、富山のガラスをアピールしながら作家を応援する仕組みを整えていく。

HIROKIさんの夢は、こうした工房に併設するバーを作ること。「多くの工房では吹きガラス体験を実施しています。一般参加者が、自身が制作したグラスを持ち込み、バーテンダーがそのグラスにぴったりのカクテルを作る……そんなバーを作れたら」

「コロナ禍による需要の減少や燃料費の高騰などでガラス工房が減っており、作家が制作を行える場が少なくなっていると聞いています。

今後、オリジナルのカクテルグラス製作という取り組みが増えていけば、作り手には大きなメリットとなるはず。バーテンダーにとっては表現の幅を広げることにつながります。

バー業界とガラス産業が結びついてお互いを元気にする、そんな仕掛けをここ、富山から発信していきたいと思います」

バーシーンにおけるグラスの存在感を一層高めていきそうな、手作りのオリジナルグラス。

シグネチャーカクテルにフィットしたグラスで、最高の一杯を提供したいというバーテンダーはぜひ、富山のガラスシーンにご注目ください!

SHOP INFORMATION

KOGA GLASS STUDIO
※オーダー品については、下記インスタグラムのDMにてお問い合わせください
URL:https://www.instagram.com/yudai_koga/

SPECIAL FEATURE特別取材