FURANSU COCKTAIL BAR:かっぱ巻きのカクテルってなんだ?!
金沢のユニークなミクソロジーバーへ。
<後編>

PICK UPピックアップ

FURANSU COCKTAIL BAR:かっぱ巻きのカクテルってなんだ?!
金沢のユニークなミクソロジーバーへ。
<後編>

#Pick up

Karasawa Seigi/唐沢正義、Karasawa Naomichi/唐沢直道 by「FURANSU COCKTAIL BAR」

今月は、海外からのツーリストに絶大な人気を誇る、古都・金沢のミクソロジーバーをご紹介。フランス人兄弟が提供するユニークなカクテルあれこれ。

文:Ryoko Kuraishi

ノーチャージ、カクテルは1杯¥1,300という良心的な価格ゆえ、一見さん、ツーリストも入りやすい「FURANSU COCKTAIL BAR」。

バーは遊び場だから、カクテルにも遊び心を。

「FURANSU COCKTAIL BAR」のカクテルラインナップは、おおよそ3ヶ月に1度のタイミングでアップデートされる。

メニューに残したいものはそのまま、新しいカクテルをいくつか作り、それを実際に提供するかどうかを2人で協議している。

「お客さんからはシャルトリューズを使って、というオーダーが多いので、みなさんの傾向も意識しながらメニューを決めています」(正義)

「店で使うシロップ、ビターズ、シュラブ(ビネガー)はほぼ自家製。

マリブの代わりにトンカ豆を漬け込んだ自家製ココナッツミルクリキュールを使ったり、色が面白いからジンにバタフライピーを漬け込んでみたり、ビターズも日本のオーセンティックなハーブや食材だけで作ってみたり、いろいろ試行錯誤しています」(直道)

シグネチャーカクテル「Aztec Negroni」。ローズマリーのスモークとともに。石のオブジェのようなうつわもポイント。

「FURANSU COCKTAIL BAR」のおすすめのシグネチャーカクテルをいくつか紹介してもらった。

「Kappamaki」はその名の通り、米、海苔、キュウリ、酢という、かっぱ巻きに使われる素材をカクテルに落とし込んだもの。

材料は、海苔とキュウリをインフューズドした自家製シュラブ、ワサビをインフューズドしたウォッカ、石川県の地酒「萬歳楽」、シイタケと海苔の自家製ビターズ。

味わいは確かにかっぱ巻き!

もう一つ、別のカクテルを。こちらは「Aztec Neroni」。
ピスコ、メスカルの「ALACRAN」、カンパリ、ベルモット、アブサン。香り付けには自家栽培のローズマリーをスモークして。

ピスコ×メスカルという、南米と中米のエキゾティシズムをカクテルで表現した。

2人の趣味が地方の小さな酒屋巡り。そこで古いボトルを発掘するのが大好きなんだとか。 カテゴライズの仕方がユニークなメニュー。

シグネチャーで大切にしているのは、味わいはもちろんのこと、他にはないオリジナリティがあるかどうか。

「金沢には、おいしいクラシックカクテルを飲めるバーはたくさんあるけれど、ミクソロジーのカクテルを飲めるバーはほとんどなかったんです。

大阪や京都にはあるのに、どうして金沢にはないんだろう、って。

実際、オープンしたばかりのころはこういうカクテルに興味をもってくれる人自体、あまりいませんでした。

当初はカクテル好きの海外ツーリストが多くて、そこから徐々に地元の人たちに浸透していきました」(正義)

カテゴライズの仕方がユニークなメニュー。

そんなカクテルの楽しみかたを深めるべく、「FURANSU COCKTAIL BAR」で最近新たに導入したものがメニューだ。

ベーススピリッツごとに提案するメニューではなく、「フレッシュ」「スウィート」「ショート&ストロング」「スパイシー」というように、味わい別にカクテルをカテゴライズした。

メニューを見た人が、「これはどんなカクテルだろう」と想像力を働かせることで、カウンターでの会話を弾ませてくれる。正義さんいわく、「もう1人僕がいるんじゃないかってくらい、役に立ってくれている」そう。

「カクテルを選ぶ楽しみを提案したい」という唐沢さん兄弟のもうひとつのこだわりが、店内の壁面を飾るアート作品。

実は2人が気に入った地元のアーティストに、ギャラリーとして店の空間を貸し出しているそう。

ギャラリー風にしつらえた店内。この日は石川県の画家、大森慶宣さんの作品を展示していた(左)。ファッション好きが垣間見える私物のコート(右)。

アーティストからコミッションは取らない代わりに、スペース代として作品を一つだけちょうだいする。

取材時期は、一筆書きの技法で知られる現代画家の大森慶宣さんの作品を展示していた。

4、5年前、正義さんが個展に足を運んだことをきっかけに、「いつかうちで作品を飾りたい」と切望するようになったというアーティストだ。

「父も、自分の店に街のアーティストを招きエキシビションを開催していました。

作家にとっては、これまで縁のなかった人に自分の作品を紹介するチャンスだし、店にとってもアート作品があることで、来店するたびに違う雰囲気を味わってもらえるというメリットがある。

クリエイティブな場として機能するバーの可能性を、もっともっと押し広げていきたい」(直道)

そんな「FURANSU COCKTAIL BAR」のカウンターには今日もコアなバーファンはもちろん、カクテルビギナー、アーティストのファン、海外からの観光客と、さまざまな層がボーダーレスに集まってくる。

「ようやく海外からのお客さんも復活しそうなので、カクテルを通して日本の知られざる食材の魅力を海外の方に紹介できたらと思っています」

自由な発想で金沢の食材をカクテルに仕立てる「FURANSU COCKTAIL BAR」。
彼らのユニークなクリエイティビティをぜひ、体感してみてください。

SHOP INFORMATION

FURANSU COCKTAIL BAR
石川県金沢市木倉町1-10 北ビル2階
TEL:070-8544-5049

SPECIAL FEATURE特別取材