注目のコンプレックスバー<後編>
蒸溜所ツアーからイベントまで、「旅する酒屋」が目指すもの

PICK UPピックアップ

注目のコンプレックスバー<後編>
蒸溜所ツアーからイベントまで、「旅する酒屋」が目指すもの

#Pick up

齋藤大典さん by「万珍酒店 / MANGOSTEEN」

今月は酒、食、旅をテーマにした幅広いコンテンツを仕掛ける「万珍酒店 / MANGOSTEEN」をフィーチャー。酒と食、それにまつわるカルチャーをシームレスにつなげる試みにご注目を。

文:Ryoko Kuraishi

MANGOSTEENが仕入れている「MEZCAL AMORES」、「MARIA FILIZ」などが並ぶメスカルのコーナー。海外の雑貨類にも注目を。

メスカルに出合ったことで酒への見方が大きく変わり、いつしか酒・食・旅を絡めたコンテンツを考えるようになったという齋藤大典さん。


その拠点となるのが「万珍酒店 / MANGOSTEEN」だ。
自分たちでインポートしている「MEZCAL AMORES」や「MARIA FELIZ」のほか、60種以上のメスカルを取り扱うのと並行して、まだまだマイナーなメスカルの普及活動も行っている。


例えばフェスや音楽イベントに出店して、音楽とのペアリングを考慮した、とっておきのメスカルを提供する。
ナチュラルな高揚感をもたらすメスカルは、メスカルはおろかテキーラさえも口にしたことがないという若い世代にも好評なのだとか。

50mlのボトルに入った「万珍百選〜Small Bottle Sound Selection〜」。中身はレユニオンの長期熟成ラム、ペルーのブランデー、バーボン樽で3ヶ月熟成させたスモーキーなメスカルなどいろいろ。

音楽付きのテイスティングボトル?!

そのほか、音楽付きのスモールボトルセレクション、「万珍百選〜Small Bottle Sound Selection〜」を販売。
これはDJが選曲した音楽と、DJとともに「万珍酒店 / MANGOSTEEN」がセレクトした酒をテイスティングボトルで販売するというもので、ボトルにあしらわれたQRコードを読み込むと、その酒に合わせたDJミックスを楽しめるという趣向だ。


酒とカルチャーをシームレスにつなげる「万珍酒店 / MANGOSTEEN」らしい試みといえるだろう。


一方、エキゾチックなメニューを揃えるデリを中心に、食とのペアリングにも力を入れており、MANGOSTEENのケータリングチームによるエキゾチックなデリや弁当も扱う。

デリの人気メニュー「MAKIS(巻き寿司)」¥600。季節の素材を使った巻き寿司に、チポトレソースなどエスニックな味わいを加えてアレンジ。

「ケータリング事業のキッチンが近いことからデリにも力を入れていて、メキシコ発の巻き寿司『MAKIS』など、ペアリングを意識したメニューを揃えています。
店内では酒、食、音楽をテーマにしたイベントやパーティを月に2度ほど開催していますが、その際のフードメニューもケータリングチームが考案します。

オーガニックワインとジビエ、トリニダード・トバゴのラムとダブルスという現地の国民食やジャマイカンジャークチキンというように、酒と食、それぞれがお互いを盛り上げるような内容に」


また、メキシコ、オーストラリア、ブラジル、フィリピン、イスラエル、ジョージア……世界10か国にパートナーがいることから、旅行業の免許も取得。


今後はここを拠点に「万珍旅行 / MANGOSTEEN TRAVEL」として、蒸留所巡りなど現地の酒文化を訪ねるツアーを企画していくとか。

齋藤さんが訪れて、その食文化に感銘を受けたというオアハカ。こちらは市場でのワンシーン。

酒屋がついに旅行業を手がける。

「メキシコ・オアハカのメスカル蒸留所を個人で訪ねるのはハードルが高いけれど、実際の酒造りの現場を訪れたいという要望は少なくないし、インポーターである僕たちとしても現地の酒文化を知ってもらうために、ぜひ製造の現場を見てみて欲しいという気持ちがあります。


仕入れのために蒸留所を訪ねることがツアーの下見にもなり、取引先が旅行業のパートナーになってくれる。

僕たちは大手を振って旅に行ける(笑)。

つまり酒、食、旅を一緒にすることでシナジー効果が生まれるんです。
今後はこういうコンプレックスな業態の酒屋やバーが増えていくのではないでしょうか」


さらに、クラフト文化に魅せられたMANGOSTEENチームは、ビール、ワイン、蒸留酒の自家製造にも乗り出したいと、現在、北杜市で物件を探しているところだ。

南アルプスと八ヶ岳の眺望に恵まれ、澄んだ水が湧き出、縄文文化に彩られた北杜市はインディペンデントな酒カルチャーを育むのにピッタリの場所、と齋藤さん。
クラフトビールやクラフトジンがようやく根づき始めたいま、MANGOSTEENらしいユニークな酒カルチャーを期待できそうだ。


一方、インポーターとしてはさらにアガベスピリッツを深掘りしていく予定だそう。


「今月からライシージャ(メキシコで6番目に現産地呼称を取得したアガベスピリッツ)を扱う予定ですが、今後はプルケ(マゲイの醸造酒)も入れたい。

10月にはアブサンを主役にしたイベントを開催予定です。
アブサンの蒸留所とオンラインでつなぎディスティラーのトークが楽しめるほか製法などを教えてもらうほか、アブサン好きバーテンダー「アブちゃん」による、アブサンと旅をテーマにしたセミナーも」


酒を取り巻くライフスタイルやカルチャーを取り込んで、独自の視点で発信する「万珍酒店 / MANGOSTEEN」。
日本発のインディペンデントな酒カルチャーを盛り上げていくコンプレックス・バーにご注目ください!

SHOP INFORMATION

万珍酒店 / MANGOSTEEN
世田谷区代沢4-29-14
TEL:03-6413-8819
URL:https://mangosteen.vc/shop/

SPECIAL FEATURE特別取材