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今月のバーテンダー

国内ワイナリー&リンゴ農家発、
いま、「地シードル」に熱視線!
<前編>

小野司さん/日本シードルマスター協会

16.10.01

手塩にかけて育てられる日本のリンゴ。手摘みしたリンゴを破砕・搾汁し、発酵させて造るのがシードルだ。

一説によると今から8000年以上も前、カザフスタンで生まれというリンゴ。
日本に初めてもたらされたのは平安時代中期のこと。
江戸時代末期に、アメリカより西洋リンゴが持ち込まれ、明治時代には北海道、青森などで本格的に生産が始まった。


リンゴだけで造られる酒がご存知、シードルである。
フランスのブルターニュ地方やノルマンディ地方が有名だが、スペインのシドラ、イタリアのシドロ、ドイツのアプフェルヴァイン、そしてイギリスのサイダーなど、呼び方は異なれど、リンゴの発泡酒は世界各地で愛されているのだ。


日本でもここ数年でシードル文化は少しずつ定着してきており、昨年にはついにシードルの、とりわけ地元産リンゴを100%使用した地シードルの普及を目指す日本シードルマスター協会が誕生。
今年は日本シードルマスター協会の主催により、世界5か国のシードルをテイスティングできるイベント、「東京シードルコレクション」と、それにまつわる「東京シードルウィーク」が開催された。


今月ご登場いただくのは「東京シードルコレクション」の仕掛け人でもあり、日本シードルマスター協会統括役員を務める小野司さんだ。


小野さん自身、長野県の飯綱町にあるリンゴ農園、一里山農園の跡取り。
日本で初めてフランスの伝統的な製法である瓶内二次発酵(シャンパン製法)によるシードル造りに着手したのが同じ県内の小布施町にあるワイナリーだが、一里山農園はここに委託醸造した地シードルを10年以上前から販売しているリンゴ農家である。
小野さんのリンゴ、およびシードルにかける強い思いは、こんなバックグラウンドが育んものだ。

地シードルの先駆け的存在、弘前シードル工房の「kimoriシードル」。

それにしても小野さん、国内シードルの盛り上がりのきっかけはなんですか?


「要因はいくつかあります。
まずは大手の取り組み。
4年前、キリンビールから『ハードシードル』が発売されて都内の飲食店が扱うようになり、消費者がシードルを味わう機会が増えたこと。
また、テレビドラマ「マッサン」の放映をきっかけにニッカシードルにも目が向けられるように。


それから国内のリンゴ農家がシードルの醸造所を立ち上げたり、地元のワイナリー等に委託醸造を依頼することで、地域性やストーリー性のあるシードルが誕生したこと。
また、こうした農家が自ら坂路を開拓し、『自ら造って、売る』というスタイルを打ち出したこと。
これは農業の6次産業のモデルケースとしてとりわけ注目を集めるようになりました。


さらにはシードルを手がけるワイナリーが増えてきたこと。
そもそもは2000年代初頭からこうした動きがあったのですが、その数は年々増え続け、現在は長野県内だけでも16軒のワイナリーが、農家の委託醸造も含めると30軒以上がシードルを手がけています。


このように大手のメジャーどころからアルチザンによるクラフト的な地シードルまで、多様なラインナップが出揃ったことで消費者にシードルという存在をアピールできるようになったのだと思います」

「東京シードルウィーク」期間中、銀座NAGANOに登場したシードルバー。

地シードルに関しては、現在は青森県を中心に東北地方や長野県で醸造されている。
これらのシードルの特徴はつがる、ふじ、紅玉などおなじみの生食用リンゴで造られており、海外のそれに比べて繊細なリンゴの味わいが楽しめること。


国内のリンゴ農家は昔ながらの栽培法を採用しており、一本一本の特徴を見極めながら剪定・摘果する。
手間暇かけた栽培法により生み出される、甘く繊細なリンゴの風味をそのまま生かした飲み口である。


海外のシードルの多くはシードル専用の品種をブレンドして、特徴的な渋みや酸味を際立たせるように造られている。
シードル専用の品種は生食用に比べてタンニンを多く含み、酸味も強い。
それがあの特徴的な味わいを作っている。


「そもそも原材料のリンゴから異なりますが、それぞれのシードルを取り巻くシーンにも大きな違いがあります。
海外ではシードルやサイダーはビールのようにテーブルに当たり前にある酒で、シーンや料理を選ばない万能の飲み物。
ワインが苦手とするスパイシーな料理にも合わせやすく、低アルコールであることから飲み手も気軽に楽しめますから。


一方、国内の状況はというと、シードルはまだまだマイナーな存在。
買える店も飲めるスポットも限られています。


僕たち日本シードルマスター協会では、シードルを『どこでも』『いつでも』飲める酒とするためのプロモーション活動を行っています」

スペインのシドラといえば、ボトルを高く掲げ、低く構えたグラスにシドラを注ぐ「エスカンシアール」が有名。

具体的には飲食店や酒販店、ソムリエへの情報提供や飲酒機会の提供、また料理とのペアリング提案も積極的に行って、「食にマッチする酒」とのイメージを打ち出している。


「今年に入り、銀座にある長野県のアンテナショップ『銀座NAGANO』などで地シードルを中心に一般の消費者向けのイベントを行ってきましたが、予想以上の手応えを感じました。
と同時に、どこで買えるのか、どこで飲めるのかなど、情報がまだまだ行き渡っていないことを痛感しましたね。
話題には上るのに、実際に飲める場所が見つからないというのです」


こうしたインプレッションに触れ、小野さんたち日本シードルマスター協会が企画したのが、シードルだけに特化したイベント「東京シードルコレクション」だった。


イベント企画に際しては、1、2日だけのお祭りで終始してしまうようなイベントにしたくないという思いがあった。
マーケットに流通している酒ならお祭りでも構わないが、シードルを取り巻く現在の状況では、一部マニアのためのもので終わってしまう。


なるべく多くの人にシードルのことを知ってもらい、その味わいに触れてもらう。
イベントはそのきっかけ作りとする場にしたい、そんな思いがあった。

銀座NAGANOが提案する、地シードルと信州食材のペアリング。苦味のあるクレソン、長野のキノコ、濃厚なゴルゴンゾーラと蜂蜜など、シードルにマッチする食材を一皿に。

「そこで『東京シードルコレクション』の前に『東京シードルウィーク』という期間を設け、賛同してもらった飲食店、酒販店、ワインスクールなどとさまざまなキャンペーンやイベントを行いました。
東京のさまざまな場所でシードルに触れられる1週間にしよう、それが『シードルウィーク』です。


例えば前述の『銀座NAGANO』では特設のシードルバーをオープン。
長野県のワイナリーはもちろん、初登場となるリンゴ農家の地シードルから20種を揃え、信州産の食材を使ったワンプレート料理とともに来場者に味わっていただきました」


こうしたプロモーションのハイライトとして8月末に開催されたのが「東京シードルコレクション」だ。
当日は世界6か国の、およそ40銘柄が勢ぞろいするとあって前売り券は完売するほどの盛況ぶり。


後編では「東京シードルコレクション」の模様をレポートするとともに、小野さんが目指すところをご紹介しよう。


後編に続く。

Bar Information

日本シードルマスター協会
 
非公開
TEL:050-7122-7492
URL:http://jcidre.com

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