国内ワイナリー&リンゴ農家発、
いま、「地シードル」に熱視線!
<後編>

PICK UPピックアップ

国内ワイナリー&リンゴ農家発、
いま、「地シードル」に熱視線!
<後編>

#Pick up

小野司さん by「日本シードルマスター協会」

リンゴ農家とゆかりの深い、日本シードルマスター協会の小野司さん。念願だったイベント「東京シードルコレクション」も盛況のうちに幕を閉じた。シードルのさらなる普及を目指す小野さんのフィロソフィとは。

文:Ryoko Kuraishi

初開催となった「東京シードルコレクション」。ずらりと並んだボトルが来場者を出迎えた。

8月末、日本で初めて開催された、シードルをフィーチャーするイベント「東京シードルコレクション2016」。
協会立ち上げ当時から、シードルを主役に据えたイベントをいつか開催したいと機会をうかがっていた、小野さんらの念願である。


イベント会場には日本&フランスのシードルはもちろん、イギリス、アメリカ、ニュージーランドのサイダー、スペインのシドラなどおよそ40銘柄が一堂に会した。


当日は産地から地シードルの生産者も駆け付けてブースを出店。
また、エスカンシアールの実演など特別プログラムも披露された。
さらにピンチョス・ガレットなどシードルと合うブルターニュ料理や、Bar Tenderlyによるオリジナルシードルカクテルも登場し、大いに盛り上がった。

かわいいエチケットが揃うのもシードルならでは。

「複数種をテイスティングしていただくとお分かりになると思いますが、シードルが大きく2つに分けることができます」と小野さん。


一つはワインのように果実味を堪能しながらじっくりと味わうタイプ。
フランスのシードル、そして酸味は強いがスペインのシドラ、「リンゴのワイン」という名前を持つドイツのアプウェルヴァインもこのジャンルに属する。
日本の地シードルも同様だ。


一方、ビールのようにゴクゴク飲めるのが、世界一の消費量を誇るイギリスやニュージーランドのサイダー、アメリカのハードサイダーなど。
シーンや料理、好みに合わせて飲み口や香りを自由にチョイスできる。


特に地シードルのペアリングのポイントは
・ シードルの産地と同じエリアで作られた和食との相性がいい。
例えば、長野のシードルなら蕗味噌のおやきやチーズの味噌漬けとドライなシードル。
信州産蕎麦と合わせてもいい。
・ 苦みのあるものを、果実味の爽やかなシードルと。
具体的にはコシアブラやタラノメなど、山菜のフリットなど。


蕗味噌や山菜などは意外に思えるが、地シードルはいい意味でニュートラルなので、このようなペアリングが可能なのだとか。

「シードルウィーク」「コレクション」ともに生産者が駆けつけ、造り手自らがシードルをアピールした。

国産・輸入に関わらず、選ぶ際には
・ 甘口or辛口(ボトルに表示されている)
・ 酸味のあり・なし
の2点に注目してみるとよい。
あとは産地切りするもよし、ジャケ買いならぬラベル買いも楽しめる。


会場にはいろいろタイプが出揃ったが、どりぷらの注目株は地シードルの中でもプレミアムといわれるシードル。
国内の農家やワイナリーが、シャンパンと同じ瓶内二次発酵という手法を用いて醸造しているものだ。


そうした造り手には小野さんのように30代、40代という若手も少なくない。
多くは従来型のリンゴを作っていた親世代から農園を引き継いでいる。
親世代とは異なり、生食用リンゴのマーケットが小さくなっているのを体感し、従来のジャムでもジュースでもない、シードルという新しい製品に未来を見据えているのだという。

この日のためにシードルベースのオリジナルカクテルを3種、用意した大森のBar Tenderly。

それでは「次世代のシードル」の担い手たちは、日本でのシードルの未来をどのように考えているのだろうか。


小野さん及びシードルマスター協会が考えているのは、スパークリングワインのように、少しだけ特別なシーンに寄り添うシードルだ。


実際、アルチザナルな手法で造られる地シードルは生産量も限られている。
イギリスのサイダーのように、「パブでゴクゴク飲む」ほどの量は造れない。
また、日本のリンゴならではの果実味を生かしていこうとするなら、少しだけプレミア感を感じさせるフランス型シードルの提案の方がマッチする。


「協会としては、『東京シードルコレクション』のような情報提供型のイベントを行いつつ、季節やシーンに合わせた飲み方提案を継続して行っていきたいと思っています。
シードルを造る一部ワイナリーではビアガーデンならぬ期間限定のシードルガーデンを開催していますが、そういうアイデアも取り入れて、いずれはシードルフェスのような形にできればいいですね」

シードルとのペアリングを意識したアミューズも登場。

そしてもちろん、リンゴ農家をサポートしていきたいという思いが強い。


現在、日本ではリンゴの消費量が年々減少していることから、リンゴ畑は毎年、1%ずつ減っているという。
多くのリンゴの木がまた、耕作断念により伐採されている。


本来、リンゴの木は何十年と生き続けるもの。
生食に変わるリンゴ消費をシードルが支えられるなら、多くのリンゴの木が伐採から救われ、その寿命を全うできるかもしれない。


「リンゴを食べないなら是非飲んでいただきたい。
そのためには飲食店のワインリストに当たり前のようにシードルが載っていて、料理に合わせて食中酒として楽しんでいただける、そんなシーン作りに携わっていければと思っています」


リンゴ産地を中心に、造り手が一丸となって盛り上げていこうという地シードル・シーン。
まずはいろいろ飲み比べて、その魅力に触れてみよう。

SHOP INFORMATION

日本シードルマスター協会
非公開
TEL:050-7122-7492
URL:http://jcidre.com

SPECIAL FEATURE特別取材