【特別レポート】
「ワールドクラス 2016 ジャパンファイナル」
関係者たちは、このファイナルをどう見たのか!?

SPECIAL FEATURE特別取材

【特別レポート】
「ワールドクラス 2016 ジャパンファイナル」
関係者たちは、このファイナルをどう見たのか!?

[vol.03] - 2015年の世界一に輝いた金子道人さん、
日本大会運営責任者の中牟田孝一さんに訊く!

#Special Feature

文:Drink Planet編集部

今回のジャパンファイナルでジャッジを務めた金子道人さん。

今回のジャパンファイナルでジャッジを務めた金子道人さん。

続いては、昨年のワールドチャンピオンであり、今回のジャパンファイナルでは、Speed & Taste ChallengeとMiami Day & Night Challengeの審査を行った金子道人さんにインタビューしました。

ちなみに金子さんも過去にどりぷらに登場してくれています。記事はコチラ!

Q 今年は、アジア予選のジャッジも担当しているそうですね。具体的にはどこに行かれたのですか?

「つい先日も、インドネシアのバリ島で開催された東南アジア大会でジャッジをしてきたところです。台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポールといった国のベスト4が集まって開かれたリージョナル予選です」

「また来月(7月)には韓国予選でジャッジを行う予定です。その前にもゲストバーテンディングやマスタークラスなどで、シンガポールやタイに行かせていただきました」

Q アジアの国々のバーシーンを見て、どんなことを感じますか?

「まず一番感じるのは、日本のバーテンダーへのリスペクトです。特に台湾のバーテンダーは日本のバーテンダーを尊敬し、同時によく研究しているように感じます。服装や所作、サービスなどすべてにおいてです。タイやシンガポールのバーテンダーはそこまで極端ではありませんが、漠然とした憧れのようなものを抱いているようです」

「ですからそのぶん、ひとりの日本人バーテンダーとして、身が引き締まる思いです。これも日本の諸先輩方が築いてきてくれた伝統のおかげです。そのことに感謝しつつ、アジアをリードしていくような心構えで、きちんとした仕事をしていかないと、と感じでいます」

Q なにか具体的なトレンドはありますか?

「今回のジャパンファイナルもそうなんですが、その国ならではのローカルフレイバーを積極的に取り入れている印象が強いです。やはりワールドクラスは世界を舞台に戦うワケですから、必然的に自分たちの国や文化、食材などについて考える機会に繋がるのかもしれません」

カクテルはすべて Miami day & Night Challengeより / 左上:藤井隆さん 右上:久保俊之さん 左下:茂内真利子さん 右下:上村諭紀夫さん

カクテルはすべて Miami day & Night Challengeより / 左上:藤井隆さん 右上:久保俊之さん 左下:茂内真利子さん 右下:上村諭紀夫さん

Q 今回のジャパンファイナルも含めて、ジャッジという立場からすると、どこで差が出るとお考えですか?

「ストーリーやプレゼンテーションに関しては、皆さん相当練ってこられていると思います。でもそれがジャッジや周囲に伝わっていないのが、非常に残念です。ストーリーやプレゼンのコンセプトそのものは素晴らしいのに、本人だけしか理解していない。努力が伝わってくるだけに、本当にもったいないですね」

「あと味に関していえば、提供温度がキーになってくると思います。ジャッジはどうしても第一印象で判断せざるを得なくなります。飲み進めていくうちにおいしくなるカクテルでも、こうしたコンペティションではやはり第一印象で決まってしまう。その時、大事になるのは温度を外さないことだと思います」


Q ワールドクラスを勝ち抜くための練習法などはありますか?

「今回ジャパンファイナルに出場された皆さんも、相当練習を積んでいるなと感じました。先ほども申し上げましたが、内容やコンセプトがいかに素晴らしくても、それが相手に伝わらないと意味がありません」

「自分だけが理解しているのではなく、きちんと伝わっているか、が非常に重要です。そのためにも、周囲の方々の協力を得て、プレゼンテーションを見てもらい、客観的なアドバイスを仰ぐといいと思います。自分一人での練習ですと、どうしても限界が出てきますから」


Q 日本代表としてグローバルファイナルに挑む藤井隆さんにメッセージを。

「藤井さんに関しては、同じ関西エリアですし、昔から実力も知っているので、きっと我々の期待に応えてくれる活躍をしてくれると思います。大阪と奈良と場所も近いので、同じ日本人バーテンダーとして、僕もできる限りの協力をしたいと思います」


ワールドクラス日本大会運営責任者の中牟田孝一さん。

ワールドクラス日本大会運営責任者の中牟田孝一さん。

最後にインタビューしたのは、ワールドクラス日本大会運営責任者の中牟田孝一さんです。

日本代表の選手たちを陰で支え、ある意味、誰よりもワールドクラスを知る中牟田さんに、改めてワールドクラスについて質問してみました。


Q 今年のジャパンファイナルを振り返っていただけますか?

「今年の10名は、過去のファイナリストが6名、新しく残った方が4名いらっしゃって、新しい時代を予感させる大会になったな、という印象です。例年ですと飛びぬけた選手がいるケースもあるのですが、今年は接戦で、各チャレンジで優勝者がバラけました。ここまで大会自体のレベルが上がったのは、過去のこれまでの大会が積み重なり、活かされた結果だと思います」


Q ジャパンファイナルに残った10名の共通点はございますか?

「まずはおいしいカクテルをつくることが大切です。例えばスピードを競うチャレンジでも、分量はきちんと合っているか、ステアしなければいけないカクテルでは、きちんとステアして温度を冷やしているか、しっかりシェイクしなければならないカクテルでしっかり材料が混ざっているか……、まず味が大前提で、おいしくないカクテルをつくった人は、この10名には残っていません」

「次に大切なのはパーソナリティです。なぜあなたがこのカクテルをつくるのか。ブランドのストーリーと自分がつくり出すカクテルのどこがどう繋がっているのか。そこをきちんと押さえられている人が、今回残った10名です」


Q 今回のジャパンファイナルではThe 4 Seasons ChallengeとMiami Day & Night Challengeという新たな2つのチャレンジがありました。その意図はなんですか?


「ジャパンファイナルは常にグローバルファイナルを意識して設計しています」

「そのなかでThe 4 Seasons Challengeでは、今世界的に求められているものを課題としました。例えばスコットランドで生まれたジョニー・ウォーカーは、あなた(出場ファイナリスト)の国でどう変化を遂げているのか、どんな風に成長を遂げているのか。そういったストーリーがグローバルファイナルでは求められています」

「そこで日本に典型的な四季を利用して、日本のカルチャーをどうやってカクテルに落とし込んでいくのか、というチャレンジを設定しました。この経験を世界大会へのステップにしてほしいと考えています」

「もうひとつのチャレンジ、Miami Day & Night Challengeは、そのままマイアミ(世界大会の開催地)でも使えるカクテルをつくってほしい、という想いを込めました」

「グローバルファイナルでは、2013年から必ずパンチカクテルが出題されています。今日も選手たちは悩まれていたかと思うのですが、パンチカクテルは日本のバーカルチャーにはあまり馴染んでいません。それを今のこの段階で挑戦していただいて、9月のグローバルファイナルまでに練り込んでいこう、という意図で出題しています」

2016年ジャパンファイナルのファイナリストおよびジャッジ。

2016年ジャパンファイナルのファイナリストおよびジャッジ。

Q そんななかで優勝した藤井さんの印象はいかがですか?

「藤井さんは努力家であり、多くの人のさまざまなアドバイスを真摯に受け止めつつ、改善していく力を持っている方です。2011年に部門優勝を獲得した後、上位入賞を果たせない辛い時期もあったと思いますが、そんな時も決して諦めることなく、挑戦し続けた努力が報われて本当によかったと思います」

「また1次審査、2次審査を通じで、彼が一番マイアミに行きたいという気持ちが全面に出ていたと思います。ジャパンファイナルでも、藤井さんのプレゼンを見て感じたのはパッションです。綺麗で丁寧なバーテンディングスキルはもちろんのこと、最後まで元気でしたし、言葉を超えた熱意が伝わってきました。そういう気持ちはジャッジ(=ゲスト)にも伝わるんだと思います」

Q ワールドクラスが掲げる“Raising the Bar”について一言いただけますか?

「Raging the Bar(レイジング・ザ・バー) とは、バーのレベルや価値を向上させること、およびバーの素晴らしさを多くのお客さまに伝えること、この2点を目的とした基本的なコンセプトです。私達ディアジオの役割は、それにふさわしい場の提供にあります」

「お陰さまで、大会のレベルは年々上がっています。例えば、今年のファイナリストの方々は去年のチャレンジを活かしてこの舞台に立っています。そうしたひとつひとつが確実に積み上がることで、レベルが年を追うごとに高まっているように感じます」

「ちょっと余談ですが、昨日も10名のファイナリストの方々とともに懇親会に行きました。そうした時にお互いライバル心バチバチではなく、和やかな雰囲気のなかで、密に情報交換をし合っているんです。お互いをリスペクトし、レベルを高め合うことが、“Raising the Bar”に繋がるんだろうと思います」


Q これからワールドクラスに参加しようというバーテンダーの方に向けてメッセージをいただけますか?

「まず優勝すれば、一夜にして世界が劇的に変わります! ワールドチャンピオンとして、世界各国で活躍の機会を得ることができます。たとえば、海外のカントリーファイナルの審査員、セミナーの開催やゲストバーテンディングなどです」

「ジャパンファイナルに残っただけでも、計り知れない財産になると思います。参加者はみなワールドクラスのファミリーです。日本の仲間はもちろん、海外のバーテンダーともどんどん繋がっていくことで、自分自身の能力を高めることができます。それがワールドクラスのなによりの魅力だと思います」


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