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辻 美奈子

バーテンダー VS ミクソロジスト

12.07.08

バーテンダーを名乗る人、
ミクソロジストを名乗る人、
それは個人個人の自由なのですが、
それぞれの言葉に関してどのように考えているかは、その人の哲学や生き方の姿勢にも関わってくる、
非常に興味深いトピックスです。


そして、それは日本だけでなく、
ミクソロジスト発祥の地ロンドンでも同様にディベートが行われ、近年のバートピックスのひとつとなっています。


「バーテンダーがまるでクリエイティビティがないように思われるのは心外だ」
とか、
「ミクソロジストが、スタンダードカクテルをおざなりにして、見た目の派手さだけを追っていると勘違いされる」
などという言葉は、このディベートでよく耳にする会話です。


ではなぜあえて「バーテンダー」ではなく、「ミクソロジスト」と名乗るのか。
その興味深いトピックスに敢えて一石を投じようとしている人がいます。
今回、人ものがたりでインタビューしたコードネーム ミクソロジーのオーナー南雲さんです。


南雲さんは、実際にお会いすると、柔らかい物腰で、穏やかに、けれどもすごいスピードで話をされます。
しかも、整理された明確なビジョンの持ち主でもあります。


27歳で独立をすると決め実際に実行され、現在31歳。
すでに2店舗を経営、さらにその目は次の店舗のことを見つめています。
しかも将来はカクテル研究所の設立、
サテライトの学校運営、
そして情報発信のためのメディアのたちあげなど、
聞いている方もついつい彼の話に引き込まれ、毎回取材予定時間をオーバーしてしまうのです。


様々なカクテルのアプローチによって生まれた、「ミクソロジスト」と「バーテンダー」という言葉の定義についての議論。
お酒へのクリエイションのアプローチは違っても、
バー業界に関わる多くの方々が口を揃えていうのは、
基礎ができていなければどんなにトレンドを追っても一過性となってしまうということ。
多分ここが日本人バーテンダーの大きな強みで、
逆に海外からも注目を浴びていることは間違いありません。


けれども、既存のクラシックレシピに対して、次々と新しい試みが行われ、
その結果ロンドンやニューヨーク、サンフランシスコなどで、
女性やこれまであまりバーにいかなかった人が興味をもち、オーダーする。
さらに、バーだけでなくその領域も広がりを見せ、
結果来店者数が増え、バーシーンが盛り上がっているという現状も見逃すわけにはいきません。

もうひとつ、誰にもコントロールできないもの、「時代の風」があります。
今の「時代の風」、それは「バーテンダー」でも「ミクソロジスト」でもなく、「Japanese Bartending」という風が流れていることは間違いないようです。


日本のバー業界は非常に面白い岐路に立っていると思います。

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SPECIAL FEATURE特別取材