ウリは体験型コンテンツ!
地域活性を担う新時代のクラフトジン蒸留所。
<後編>

PICK UPピックアップ

ウリは体験型コンテンツ!
地域活性を担う新時代のクラフトジン蒸留所。
<後編>

#Pick up

Ota Satoshi/大田聡 by「TATEYAMA BREWING」

2018年にスタートした「リノベーションまちづくり」により、ユニークなカフェやホテルが続々と誕生している千葉県館山市。館山発のクラフトジンで地域活性を目指す「TATEYAMA BREWING」のユニークな取り組みにフィーチャーします。

文:Ryoko Kuraishi 撮影:Midori Yamashita

バーの裏手にある小さな蒸留所。

館山市内にできたクラフトジン蒸留所、「TATEYAMA BREWING」。

全国に続々と誕生しているマイクロディスティラリーだが、ここは他とは少し毛色が違う。「体験」を売りにした施設なのだ。

ファウンダーの大田聡さんの本職は建築士。

酒業界とは無縁の大田さんが蒸留所開設を考えるようになったのは、館山への移住がきっかけだった。

「『tu.ne hostel』というマイクロホテル&ゲストハウスをやっていらっしゃる、この界隈の地域活性のキーパーソンとの出会いをきっかけに、地域おこし協力隊員として東京からこちらに移住してきました。

館山っておもしろい場所で、東京と2時間くらいで行き来できる距離にあるのに、まったく独自の文化が息づく独立文化圏だと感じるんです。

産業は衰退しつつあるのですが、中に入ってみると驚くほどおもしろい事象やモノ、ことが残っていました」

バーではまず、気になるジンのテイスティングから始めよう。

地元素材を活用する。

館山は大手チェーンのビジネスモデルが成立しづらいそうで、いまもインディビジュアルな小規模メーカーや作り手、店舗が多いという。

たとえば、日本で唯一、木製のサーフボードを作るシェイパー、デジタルと手仕事の融合を図る木工所、染色工房にアーティスティックな金属加工所、などなど……。

「地域のつながりも密で、何かを作ろうとなると、『じゃああの人に相談したらいいよ』、なんて誰かを紹介されて。地元でなんでも解決できてしまう。

ものづくりには最適な街だと思いました。

また、酒造りは門外漢ではありますが、昔から蒸留に興味がありましたし、クラフトジンなら地元の野草やボタニカルを活用できる。

そこで、館山に寄り添うようなマイクロディスティラリーを造りたいと考えるようになったんです」

「TATEYAMA GIN 」に使われるジュニパーベリー。

「TATEYAMA BREWING」は館山のハブを目指してローンチした複合施設、「TAIL」内にある。

段ボール会社の倉庫兼オフィスだった建物の1階に「CAFE&BAR TAIL」と「TATEYAMA BREWING」が、2階にはゲストハウス、3階にはシェアオフィスが入居する。

大田さんに施設を案内していただいた。

店舗(カフェ&バー)スペースと蒸留所、3階のシェアオフィスは、大田さん自ら手を動かして少しずつリノベを進めてきた。

廃材を再利用した店舗スペースは、昼は地元の女性たちが運営するカフェとして、夜はTATEYAMA GINを味わえるバーに(現在は緊急事態宣言を受けて休業中)。

バーのおすすめメニューは、オリジナルクラフトコーラと「エレメントシリーズ」のジュニパーをあわせた「ジンコーラ」。

そのほか、各種ジンメニューは好みの「エレメントシリーズ」で作ってもらえる。

地元生産者とタッグを組んだカクテルもある。

期間限定で提供している「クラフトジンシェイク」は、館山市内にある須藤牧場の濃厚バニラアイスを使って仕立てたカクテルだ。

白いラベルは「エレメントシリーズ」、赤いラベルが「ブレンドシリーズ」。「エレメントシリーズ」1,980〜¥2,090、「ブレンドシリーズ」¥2,200

カフェ&バーの裏側には小さな蒸留所が設けられている。

店舗スペースからガラス窓を通して中を伺うことができるが、こちらの内装も工事現場の仮囲いや廃材を使ってDIYで仕上げたもの。

蒸留施設は、30リットルとテストバッチ用の3リットルの2台の蒸留器。

東京を拠点に、クラフトビールやリキュールを製造する「羽田麦酒」の鈴木祐一郎さんをパートナーに迎え、蒸留プロセスを支援してもらっているが、ボタニカルを単品で蒸留してそれぞれをブレンドするというのも、実は鈴木さんのアイデアだった。

少しずつ地元のリピーターも増えてきたところでの緊急事態宣言。

バーの営業はトータルで2ヶ月にも達していないが、再開後にはいよいよ体験型コンテンツをスタートさせる予定だ。

OEMで、バーテンダーにもアピールしたい。

「企画しているのは、『エレメンツシリーズ』の試飲放題プラン。

21種類を好きにお試しいただき、バーカウンターで好みの銘柄をブレンド。

オリジナルジンを楽しんでいただこうというものです。

もうひとつは少人数での蒸留体験。

単品のボタニカルを蒸留していただき、蒸留のプロセスやヘッドとテールの味わいの違いなどを体験していただけます」


なお、蒸留所のリリースとして「ブレンドシリーズ」の第二弾、「002」を準備中だ。

ジュニパーをふんだんに、ミントとレモンの風味を際立たせ、ソーダとシロップを加えるだけでモヒートを思わせるカクテルができあがる、そんなジンを構想中だ。

「オリジナルブレンドはもちろん、お好みのボタニカルを持ち込んでの蒸留もできますし、少量でのOEMも承ります。

館山のDIY文化から生まれた蒸留所を、バーテンダーのみなさんにもぜひ利用していただきたいと思います!」

SHOP INFORMATION

TATEYAMA BREWING
千葉県館山市北条1758
TEL:非公開
URL:https://tateyama-brewing.studio.site

SPECIAL FEATURE特別取材