北海道のボタニカル満載、
積丹発のクラフトジンが遂にリリース!
<後編>

PICK UPピックアップ

北海道のボタニカル満載、
積丹発のクラフトジンが遂にリリース!
<後編>

#Pick up

岩井宏文さん by「積丹スピリット」

積丹ジンの特徴は北海道らしいボタニカルだ。神威岬周辺に自生しているのと同じ種類を自社農園で育てているという。後編では、積丹スピリットが目指すボタニカルのプロジェクトをご紹介しよう。

文:Ryoko Kuraishi

広大な遊休農地(何と90ヘクタール!)の中の5.7ヘクタールの自社農園内にある、樹木を苗から育てる1ヘクタールのナサリィ。「火の帆KIBOU」のレシピの鍵となる希少種のヤチヤナギ(北海道のヤマモモ)は、組織培養技術を活用した苗で安定的な栽培に取り組んでいる。

今年5月に初蒸溜が始まった積丹スピリット。
6月に満を持して販売したファーストリリースは、国内のジンファンを中心に瞬く間にソールドアウト。
取材時はちょうど7月1日に予約販売を開始する第3弾のボトリングが行われているところだった。
この日のために5年を費やした岩井宏文社長が、ここまでの歩みを振り返る。


「酒類を造るのは初めてですから製造面での試行錯誤はもちろんありましたが、何よりも大変だったのは資金調達ですね。
北海道の農業界にとって次世代を拓く発信を、ということでスタートした事業ということもあり、まずは全道の農業者を回って投資をお願いしました」

農作業を統括するプラントマネージャの岩崎秀威さんは農学部を卒業後、大規模なイチゴ栽培に携った後に積丹スピリットへ。「蒸留酒を造るのに材料から育てるというところがおもしろいと思って」。ピンクの花はハマナス(ローズヒップ)、原料化の難しいボタニカルだ。レシピの可能性を探るためにもさまざまな品種を栽培している。

農業者の賛同が、プロジェクトを後押しした。

「まったくの素人が酒造免許を取って積丹で酒造りをしようだなんて、荒唐無稽に思えたかもしれません。
でも、これを面白がってくださる方もいらっしゃって(笑)。
これまでのつきあいもあり、13人の農業者がこのプロジェクトに賛同してくれたんです。


農業者の後押しを受けて地元銀行の出資や農業用ファンドを活用できることになり、さらに農業従事者以外の経営者、道内外の事業者からの支援も取り付けることができました。


最終的にクラウドファンディングも活用することで当初予定していた資金を調達。
大手資本の入っていない市民出資の蒸留所、『積丹ブルー蒸溜所(Distillery Shakotan Blue)』への道筋がついたのです」

「ガーデン」と名づけられたスペース(上段左)と、ヤチヤナギを栽培する「ナサリィ」(下段右)。農園の敷地内には、ボタニカルを乾燥させて標本化する「積丹グリーン研究室(Laboratory Shakotan Green)」も(上段右、下段左)。

積丹スピリットを応援してくれているみなさんのための交流の場を持とうということで、2018年からは「ワンナイトBAR」と題したイベントを不定期に開催している。


これは地元町民や事業を支援してくれる人たちにジンを知ってもらうべく、道内外からバーテンダーを招いて積丹に本格的なバーを開設、ジン・カクテルを振る舞うというもの。
地元住民だけでなく、投資してくれた人々に向けて積丹スピリットのジン造りをアピールしている。


「ワンナイトBAR」は今後も引き続き開催する予定だが、蒸留所ではこれ以外にもさまざまな取り組みを企画中だ。


「今後は、ボタニカル選定に協力していただいた植生環境調査の濱田崇さんに積丹の森を案内していただくボタニカルツアーを開く予定です。
半島の森を実際に歩いてここの植生に触れていただき、農園の収穫も体験いただく。
森、川、海に恵まれた積丹の豊かな自然と、その自然が育むジンの魅力に触れていただけるはずです」

蒸溜所のすぐ裏手に広がる日本海の風景。天気の良い時は一面が積丹ブルーに染まった絶景を楽しめる。中央に見えるのが神威岬。

目指すはボタニカル・スピリッツのライブラリーと、分析データのオープンソース化

さて、岩井さんが考えている未来の積丹スピリットは、単なるジンの蒸溜所ではない。
これまでに100種類超のボタニカルから厳選した20種のボタニカルを単品で蒸溜し、それをブレンドしながらレシピを作成してきたわけだが、そのシングル・ボタニカル・スピリッツの分析をデータ化、チャート化してオープンソースにするというのだ。


北海道にはまだまだ数多くのボタニカルがある。
それらを蒸溜してシングル・ボタニカル・スピリッツのストックを増やしていく予定だそうで、これをバーや蒸溜所の造り手も利用できるライブラリーとする。


いずれはシングル・ボタニカル・スピリッツを使ったブレンドのワークショップも開催していきたいというし、さらには好みのボタニカルを自由にブレンドして自分だけのジンを造るような試みも考えているそう。


「そうですね、ジンの蒸溜所というよりもボタニカル・スピリッツのデータを自由に活用いただける、“蒸溜機を備えたボタニカル・ラボ”が私たちのイメージです。


このライブラリーは、森、山、海を網羅する積丹の風土、北海道の植生をそのまま代弁するものとなるはず。
何よりも、こういう試みを行うことで全道の農場や農業、森林業が貴重な資源として生きてきます。
これが、私たちが営む意義です。


ただものづくりを行うだけでなく、北海道の農業、自然、生産者と手を携えて発展していければいいですね」

今後予定しているボタニカルツアーの様子。北海道の植生マスター、濱田崇さん(左写真、左)が案内してくれる。ボタニカルツアー、店舗スペース及び蒸溜所の見学は現在準備中。最新情報は積丹スピリットのHP、SNSをチェックして。

積丹スピリットでは「火の帆 KIBOU」の第三弾の予約販売を7月1日からスタートしている。


第二弾ではジンに使用したボタニカルのフレーバーを閉じ込めたチョコレートのセットを販売したが、今回はジュニパーベリーをスパイスと捉えた、ジンとカレーのスパイスセット「未来の北海道カレー&ジントニック LOVERSセット」(石狩のカレー「イシカリー」とトニックウォーター「KIZASHI」、そして「火の帆 KIBOU」の組み合わせ)を用意した。


これもジンを飲む機会を日常のものにしてほしいという岩井社長の願いを込めた企画なのだそう。


「カレーにこそジントニック!」という積丹スピリットのマッチングにご期待ください!

SHOP INFORMATION

積丹スピリット
北海道積丹郡積丹町大字野塚町字ウエント229番地1
URL:https://shakotan-spirit.co.jp

SPECIAL FEATURE特別取材