北海道のボタニカル満載、
積丹発のクラフトジンが遂にリリース!
<前編>

PICK UPピックアップ

北海道のボタニカル満載、
積丹発のクラフトジンが遂にリリース!
<前編>

#Pick up

岩井宏文さん by「積丹スピリット」

神威岬や積丹ウニで知られる北海道北西部の積丹町で、「積丹スピリット」が操業をスタートした。積丹から、ジンを超えて新しいボタニカル文化を創造しようという積丹スピリットの挑戦を追いかける。

文:Ryoko Kuraishi

アカエゾマツ の森で北海道のボタニカルの魅力を語る岩井さん。

”積丹ブルー”に彩られた積丹半島へ!

日本海に突き出した積丹半島で、積丹および道内産のボタニカルを使ったジンを造る。
そんな取り組みがスタートしたのは今から5年前のことだ。


年間100万人ものツーリストが訪れる一方で人口は2000人余りという積丹町の、地域活性・地方創生策として「積丹半島を象徴するようなクラフトジン造り」が始まったのだ。


プロジェクトを率いるのは農林水産業のコンサルタントを本業とする岩井宏文さん。
都市計画や地域活性を専攻した大学時代、積丹を拠点にフィールドワークを行っていた縁からこのプロジエクトに携わることになった。

ホルスタイン社製の蒸留機を備えた「ディスティラリー積丹ブルー」。

「そもそもは90ヘクタールという大規模な離農地を活用して新たな産業を作るというのが、私に与えられたお題でした。


外部の専門家も招いて事業案を検討していたところ、札幌在住の木工デザイナー、煙山泰子さんが『針葉樹と広葉樹が混在し、スコットランドと地形や気候が似ているこの土地の森なら、ジンの原材料となるボタニカルを作れるのでは』、そう提案してくれたんです」


「クラフトジンを造るなんて考えたこともなかった」と笑う岩井さんだが、ボタニカルの原料生産からジンを製造するという壮大な取り組みに心を揺さぶられた。


「地域の豊かな植生に注目を集めるとともに積丹のみならず北海道の農業者や森林業者に夢をもたらす。
この事業にそんな意義深さを感じたのです」

蒸留所の壁面にはさまざまなボタニカルのスピリッツがずらり。

積丹半島の自然を代弁するボタニカル。

これまでのキャリアから全道各地に農業者・生産者のコネクションがあるとはいえ、酒造りは全くの素人。
まずはジンにまつわるリサーチと、レシピ組み立てのためのチーム作りからスタートした。


「1年目は煙山さんと一緒にスコットランドやロンドン、国内の蒸留所を回りました。
ジンの歴史や製造方法について学ぶうちに、私たちが求めるレシピの仮説を立てられるようになりました。


そこでようやく、ボタニカルの選定です。


道内の植生環境調査に携わる濱田崇さん、川出健太郎さんに協力を仰ぎ、積丹半島や北海道に自生するおよそ150種のボタニカルを候補にあげ、そこからさらに30種に絞りました。
その後、北海道立林業試験場や広島にある酒類総合研究所との共同研究を2年に渡って行い、試験蒸留を繰り返してようやくベースラインが定まったのです」

アカエゾマツ の新芽の採取風景(上段左、右)。採取した新芽は乾燥機にかけて乾燥させ、香りを引き出す。これを蒸溜してアカエゾマツ のシングル・ボタニカル・スピリッツを造る。

積丹ジンのレシピの要となるボタニカルは、「北海道の木」ことアカエゾマツ。
北海道に広く自生する常緑針葉樹で、アイヌの人々は「森の女神」と呼んだ、まさに北海道らしい樹木である。


乾燥させると深いオレンジのような香りを放つ新芽だけを摘んで蒸溜する。
新芽を摘むことで森林保全にも貢献するという。


その他、澄んだミカンの香りが爽やかなエゾミカン、一部地域では絶滅危惧種に指定されている希少種のヤチヤナギ(エゾヤマモモ)、北海道ならではのオオバクロモジ、キタコブシといった樹木の他、アイヌ民族も古くから薬に用いていたというノコギリソウ(ヤロウ)など、7種の自家栽培ハーブを採用した。


こうしてできあがったファーストリリースの「火の帆 KIBOU」は、ジュニパーベリーや北海道産ホップに青々としたアカエゾマツが複雑に絡み合い、深い森を思わせる芳醇さ。


エゾミカンのほろ苦さ、スパイシーなエゾヤマモモを感じることもできる。ほのかな甘みはキタコブシやオオバクロモジに由来するものだ。

6月にリリースした第一弾、第二弾は好評のうちにソールドアウト。7月1日から第三弾の予約販売をスタートする。

ボトルにあしらわれているのは、積丹ブルーの炎。
ブランド名の「火の帆」の「火」は、蒸留酒はそもそも「火の酒」と呼ばれること、積丹半島は火山の造山活動によって形成された土地であり、夏になると伝統の「天狗の火渡り」が行われるなど、もともと「火」と強い関わりがあったことからネーミングされた。


「火」で抽出した大地のボタニカルを、この半島から世界へ。追い風を帆に受けて前へ、未来へと突き進む。
ブランド名とアイコンにはこんな願いが込められている。


「積丹や北海道を主張するボタニカルやフレーバーはまだまだあります。
ブレンドを変えて『火の帆 KIBOU』とはまた違ったキャラクターのジンも作りたいですし、ハーブリキュールやアブサンにも取り組んでいきたい」というから、ますます夢が膨らむ。


後編では積丹スピリットの今後の展開をご紹介。
彼らが見据える、これまでにないユニークな事業とは、果たして?


後編に続く。

SHOP INFORMATION

積丹スピリット
北海道積丹郡積丹町大字野塚町字ウエント229番地1
URL:https://shakotan-spirit.co.jp

SPECIAL FEATURE特別取材