国産クラフトドリンク第二弾!
農業とのタッグから生まれたミキサーって?
<後編>

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国産クラフトドリンク第二弾!
農業とのタッグから生まれたミキサーって?
<後編>

#Pick up

kizashi by「日和」

ローカル&クラフトにこだわる新世代のミキサーをフィーチャーする今月。後半はキハダというボタニカルを使った、勝沼生まれのトニックウォーター、「kizashi」をご紹介しよう。

文:Ryoko Kuraishi

無香料・無着色の「kizashi」。液色の黄色は素材の色そのまま!

「kizashi」を手掛けるのは2018年にスタートした日和ワイナリー。ワインを造ろうと異業種のメンバーが集まり創業したワイナリーである。


代表の早坂茉李さんはロンドン芸術大学のセントラル・セント・マーチンズ・カレッジでデザインの勉強をしていた時、現地で流行り始めていたクラフトスピリッツに出合った。
これをきっかけにスピリッツ、カクテル、ワインといった洋酒文化に触れるようになり、いつか自分の手で造ってみたいと思うようになったそう。


帰国後、東夢ワイナリーが中心となって進めていた「勝沼ワイン村プロジェクト」を知る。
日本ワインの銘醸地の一つである勝沼でぶどうの耕作放棄地が拡大しているという背景を受け、ワイン造りを守りながら地域貢献することを目的に立ち上げられた事業だ。


地域資源を活用することで地域に貢献しつつ、ワインツーリズムを視野に入れて勝沼の魅力を広く発信し、いずれは地域住民とワイン愛好家を中心とするツーリストのコミュニティとして機能させるという未来を描いている。

鮮やかな黄色が特徴的なキハダの樹皮(左)。「現在でも山深い山間部に生えています」。

縄文時代から日本人の暮らしに寄り添ってきたボタニカル。

このプロジェクトの理念に感銘を受けた早坂さんは、同じような志を抱く異業種の仲間と共に山梨でワイナリーを立ち上げ「勝沼ワイン村プロジェクト」に参画することを決意した。


勝沼でブドウ畑の耕作放棄地再生に着手し始めたのは2018年1月のこと。
同時に、ノンアルコールドリンクの可能性を感じ、トニックウォーターの開発をスタートする。
トニックウォーターを選んだのは、国内のクラフトジンの興隆に対してそれに応える国産トニックウォーターがなかったからだ。


「“トニックウォーターの原点回帰”を価値提案することを開発コンセプトに置き、キニーネと似た薬効を持つ、森や林に生えている植物という日本古来の原材料を探しました。
キニーネの代わりに選んだのがキハダ。縄文時代から生薬として使われていたミカン科の植物で、清々しい苦味が特徴です。


古来より、抗菌作用があることから健胃薬などの生薬としても使用されてきた有用な森林資源のキハダを改めて有効活用することで、新たな雇用が生まれたり林業の助けにもなるかもしれませんから」(PR真室さん)

都内のバーでも「kizashi」を取り扱う店舗は少しずつ増えている。こちらはBar Ben Fiddichの鹿山さんによるカクテル。ジャパニーズジン、フレッシュライムジュース、「kizashi」を合わせたもので、 デコレーションとして生のキハダの樹皮を添えている。

気になる味わいはといえば、キハダの自然な苦味と、手で搾った山梨県産の柚子とシークワーサーの酸味がマッチする、後味さっぱりの爽快なおいしさ。
炭酸と合わさることでより喉越しの良さが感じられる。


キハダには健胃整腸作用を持つ成分が含まれるといい、実際、「kizashi」を飲むと胃腸がすっきりする感じがする。
また、がん予防に効果が期待される機能性成分のリモニンやポリフェノールの含有量も多いとか。


「完成した商品を携えてバーにサンプリングに出かけ、『kizashi』を使ったカクテルも作っていただきました。
ジントニックの場合、国産ジンで最も『kizashi』と相性が良かったと名前が上がったのは、サントリーの『ROKU』。次いで養命酒酒造の『香の森ジン』。


コニャックを『kizashi』で割ってもおいしいですし、流行りのレモンサワーを『kizashi』でアレンジしたロングカクテルもバーのお客様に喜んでいただけそう。
個人的に特に印象に残っているのはソニックスタイルでいただくスプリッツァーです。


一方で、ノンアルコールカクテルでも真価を発揮します。
苦味があるので、カンパリなど薬草系リキュールの代替品として使っていただけています。
『kizashi』のノンアルコールスプモーニやノンアルコールモヒートがおすすめです」

バーテンダーからのフィードバックでも、製品コンセプトも味わいの評価も非常に高かったそう。


「国産・外国産を問わず『kizashi』を使ったジントニックは総じてバランスがよくなり、これまでのトニックウォーターとはまた違った付加価値をお客さまに提供できる、と言っていただけました。


ノンアルコールカクテル用の割材としても存在感があるということで、『kizashi』を使うことで、ノンアルコールカクテルでもそれなりの価格で提供できる理由になる、『縄文時代から日本人に親しまれてきたボタニカル』というストーリーを外国からのお客さまに説明したら非常にウケがよく、何度もリピートしていただいた、などコメントをいただいています」

「kizashi」のイメージビジュアルがこちら。「何かがはじまるきっかけや、はじまりの気配を、たんぽぽの綿毛が舞う一瞬を切りとって表現しました」。

農業、林業と手を携え、地域コミュニティに貢献したい。

ようやく製品が完成し、これから本格的に売りだそう!という中での、今回のコロナ禍。この影響で日本の農業・林業はさらに厳しい局面に見舞われるかもしれないし、地方経済がますます衰退する可能性もある。


「日和ワイナリーの設立目的は、農業・林業を筆頭に地方経済に少しでも貢献すること。
『kizashi』をローンチしてから、いくつかの林業者から『キハダの木を買い取ってほしい』というリクエストもいただいています。


現在、『kizashi』の原料にするための品質保証や物流の方法を明確にしているところですが、私たちが製品を作り続ける限り、地方の農業、林業に貢献できる可能性がある。
一歩ずつ売り上げを伸ばして地域の役に立っていき、少しづつ世の中によい『兆し』をお届けしたいと思っています」

日和
山梨県甲州市勝沼町勝沼2562-2
TEL:非公開
URL:https://hiyori-corp.com

SPECIAL FEATURE特別取材