国産クラフトドリンク第二弾!
農業とのタッグから生まれたミキサーって?
<前編>

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国産クラフトドリンク第二弾!
農業とのタッグから生まれたミキサーって?
<前編>

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KIMINO DRINKS by「KIMINO」

今月は造り手の個性が際立つ国産ドリンクをフィーチャー。前半は「日本の農業に光を当てたい」というクリエイター集団が仕掛ける「KIMINO」をご紹介。チームに開発秘話を聞いてみよう。

文:Ryoko Kuraishi

こちらが「KIMINO」のスパークリングウォーター。果汁と水だけでできた、無糖のミキサーだ。

「KIMINO」は中目黒でバー「berry」を営むクリエイター・チームが手がけるクラフトドリンクだ。


このミキサーの原点は、もともと「berry」で提供していたというユズのカクテル。
フレッシュなユズのフレーバーに感激した外国人ゲストから、ユズのジュースを本国に持って帰りたいというリクエストを受けた。
ところが、どこを探しても自信を持って勧められるジュースは見つからなかった。


「僕たちのカクテルはフレッシュな果汁をそのまま使っているから、インパクトのあるユズのフレーバーをそのまま楽しんでもらえるけれど、市販のドリンクはどれも保存料や酸味料、甘味料、香料などが添加されていて風味も香りも別物。

ならば、高品質で添加物を加えていないユズのジュースを自分たちで作ればいいのでは、そう思ったんです」


そこから原料を提供してもらう農家やボトラーといったパートナーを探して少数精鋭のチームを作り、日本とアメリカ向けに製造をスタート。


ユズと梅、ミカンとリンゴの4フレーバーそれぞれに、ジュースとスパークリングウォーターの2種類を開発した。


香港、オーストラリア、韓国など、現在は23か国で展開中だ。

小規模な農家のサステイナブルで伝統的な農法に共感する「KIMINO」。彼らに農業を学びながら、その方法を自分たちの農園にも取り入れるつもりだ。

果汁と水だけ、甘くないミキサーが欲しかった

「KIMINOの原料は果汁と水(炭酸水)だけ。ジュースにのみ、甘みを足すために有機キビ砂糖を加えています。

近年、アメリカでは砂糖を使わないドリンクがトレンドになっていて、それはカクテルにおいても同様です。

こうしたトレンドに応じて新しいドリンクの需要は少なくないのに、一方でミキサーは種類が限定されていると感じていました。

このスパークリングウォーターは砂糖を使わないからヘルシーだし、甘味のないミキサーはカクテルのレシピや口にするシーンを広げてくれるはず」


フルーツの香りやフレーバーといった強いインパクトはそのまま、甘さがないのでカクテルの他の材料の風味は損ねない。


「そのまま飲むのがおいしいけれど、バーユースではシンプルなユズサワーがおすすめ。
グラスにアイスを入れて焼酎もしくはジンを注ぎ、ユズのスパークリングウォーターをミキサーに。

もちろん、レモンを使うほとんどのカクテルをユズで代用できます。
ユズウイスキーサワーとかユズのホワイトレディとかね」

手摘みのフルーツと水(炭酸水)、有機キビ糖だけで造られているスパークリングジュース。梅とミカンは和歌山、ユズは四国、リンゴは青森県のものを使っている。

さて、「KIMINO」がものづくりで大切にしているのは、ミニマルな製造プロセスとリアルなフレーバー。


なるべく余計な手をかけず、無駄なものを加えず、果実本来の良さを引き出すこと。
口にした時、本物の果実をかじったようなフレーバーを感じられること。


「果実を使ったドリンクは香料の使いすぎでオーバーフレーバーになっているものがほとんどだけれど、果たしてこうした添加物は必要でしょうか。
フルーツ本来の香りやフレーバーで十分なのでは?

KIMINOはものづくりを行うメーカーとして製造における透明性をできるだけ保ちたいと考えています。
それが消費者への責任だと思うから」


製品にどのフルーツを使うかの選定は、果物本来のフレーバーに加え、パートナーである農家の存在も決め手になっている。


いくらフレーバーが良くても、一緒にものづくりをしていきたいと思えるパートナー(農家)が見つからなかったらものづくりは成立しないのだ。

「KIMINO」の原料はこんな果樹園から調達されている。

「KIMINO」をきっかけに、サステイナブルな農業に目覚めた

現在のパートナー(農家)を見つけるのにも長い長い時間がかかったそうで、どんな農法をとっているか、農薬や化学肥料は使っているのか、新しいものづくりに興味があるかといった視点を持ってミーティングを重ねた。


最終的にLESS IS MOREという同じ哲学を持った農家と手を組むことができたそうだが、農家との関わりの中でいつしか農業そのものに興味を持つようになったそう。


「現在は静岡に5000坪の農地を用意し、ここで原料となるフルーツや、日々口にする野菜を育てていこうと思っています。

日本の地方は高齢化、過疎化が進み、農業を担う人口が年々少なくなっている。
一方で東京はますます大きくなって産地との距離が大きくなっていますよね。

『KIMINO』をきっかけに現代の農家が直面する問題に気づき、あらためて農業、つまりものづくりの根幹の部分に目を向けることができたんです」

今回のコロナ禍で信じられないような状況に直面して、「berry」も一時的に休業せざるをえなかった。
そんな中、チームの中にも様々な思いが交錯している。


「自分たちが今までやってきた方法は間違っていたんじゃないか、何かを変えるべき時なんじゃないか、もう少し食糧の生産プロセスにも携わるべきなのでは、自立した消費者になるべきでは、そんな思いをますます強くしています。


社会全体を揺るがす今回のことは、何かを変える機会になるかもしれません。
ありがたいことに僕たちには農地があり、ここで何かを生み出すことができます。


僕たちが目指すのは、クリエイティブでサステイナブルな、農業からものづくりを行うメーカー。
都市と産地を結んで農業を活性化させ、自分たちが口にする食糧の生産にも携わる、そんな方法を模索していきたいと思っています」

SHOP INFORMATION

KIMINO
東京都目黒区上目黒1-3-9
TEL:非公開
URL:https://jp.kimino.com

SPECIAL FEATURE特別取材