2020年、バーシーンを賑わす
 クラフト系ノンアルコールドリンク2選。
<後編>

PICK UPピックアップ

2020年、バーシーンを賑わす
クラフト系ノンアルコールドリンク2選。
<後編>

#Pick up

コーラ小林 by「伊良コーラ総本店下落合」

“世界初のクラフトコーラ専門店・専門メーカー”として、2018年夏の登場以来、注目を集めている「伊良コーラ」。後編では、クラフトらしいものづくりを目指す「伊良(いよし)コーラ」とコーラ職人のコーラ小林さんをフィーチャー。

文:Ryoko Kuraishi

2月28日オープンの店頭では、こちらの「THE DREAMY FLAVOR」¥500と、「THE JAPAN EDITION」¥550の2種類をいただける。焼いたバナナやプレッツェル、餅にコーラシロップをかけた「COLA FONDUE」も新登場、¥300〜。Photos by Kenichi Katsukawa

世界でここだけ!東京発のクラフトコーラ。

下落合に工房を構える「伊良コーラ」は、世界でただ一つのクラフトコーラメーカー。
オールハンドメイドを貫くこちらは、100年以上前に書かれたというコカ・コーラ社のオリジナル・レシピから生まれたものだとか。


「コーラを手作り?」と思うかもしれない。
「伊良コーラ」の素(コーラ原液)の材料は、コーラの由来となっている西アフリカ原産の植物、コラノキからとったコーラナッツやカルダモン、ナツメグなどの数種のスパイスと柑橘類。
これらを混ぜ合わせ、火を入れたものが「伊良コーラ」の素になる。


気になるお味は、といえば、いわゆる“コーラ”とは全くの別物。
スパイスの風味、香りが重層的に織りなす複雑な味わい。骨格はしっかりしているのにくどくない。
私見だけれど、スリランカで食べたカレーミールスを思い出した。

下落合に念願のショップ兼工房が!初の実店舗となる「伊良コーラ総本店下落合」がこちら。

フィリピンの山奥でボランティアをしていた際、どんな辺鄙な場所でもコカ・コーラ社の赤いトラックが走っていることに気づいたことが、小林さんがコーラに目を向けるきっかけになった。
どうしてコーラはこんなにも普及しているのか。コーラに興味を持ち、世界中のコーラを飲み歩いた。
調べるうちにコーラの本質は西アフリカ原産のコラノキにあると知った。


オリジナルのコーラ飲料は、コラノキのタネであるコーラナッツのエキスを使っていた。
ちなみに、コーラナッツは現地の人にとって覚醒作用のある嗜好品。
種を生でかじるというから、アジアのビンロウのようなものだろうか。


コラノキに何か特別な力を感じ、現在のコーラがここまで普及したのは、神聖なコラノキのパワーのおかげなのかも、と考えたそうだ。

店舗の横が工房になっている。「伊良葯工」で祖父が使っていた、年代もののミルを蘇らせた。ボトル入りのコーラシロップは大¥2,950、小¥1,200。

祖父が遺してくれた漢方の知識を取り入れて。

コーラマニアとしてコーラを極めていくうちに、コーラは手作りできることを知り、オリジナル・レシピの開発に着手する。
100年以上前のレシピを見つけ出し、それを参考にしてみたものの完成度はイマイチだった。
どうも、味わいがのっぺりして奥行きに欠ける。


レシピ作りで試行錯誤する中、天啓というべきインスピレーションを与えてくれたのは、和漢方の職人で「伊良葯工(いよしやっこう)」という漢方工房を構えていた、小林さんの祖父だった。


祖父はすでに故人ではあったけれど、工房には漢方を調合する器具や、ハーブやスパイスの資料、漢方の詳細なレシピが書き込まれたノートがそのまま遺されていた。


「コーラ作りに漢方の知識やレシピを活かせるかもしれない」
祖父が遺してくれたヒントをもとに材料の調合や火入れの手順を変えてみたら、びっくりするほど奥深い、厚みのある味わいになったとか。


「伊良コーラ」の誕生である。

左上:コーラ小林さんのユニフォームは特注!右上:高麗人参、羅漢果、陳皮、棗といった、漢方でお馴染みのハーブがずらり。左下:伊良コーラに欠かせないコーラナッツは古いミルで粉砕する。右下:伊良コーラのシンボルのカワセミをネオンに。

立ち上げから3年目を迎えたこの春には、念願の路面店が工房のすぐ隣にオープン!
世界でただ1人のコーラ職人が営む、世界で唯一のコーラ工房である。


「クラフトという言葉が流行っているけれど、誰が、どうやって作っているのかをきちんと表現できる、中身の伴ったクラフトを貫きたい」
小林さんの理念、「顔の見えるものづくり」を伝えたいと、店舗から工房が見える設えが印象的だ。


ここでは自家製コーラを作るワークショップや、他のスピリッツとコラボする「伊良コーラナイト」なども開催していく予定。


また、山椒や黒文字といった日本のスパイスと、ユズなど日本らしい柑橘を使った「ジャパンエディション」も工房限定で販売する。

かつての神田川沿いにはたくさんの染色工房が立ち並び、下落合周辺一帯は染色産業の拠点として栄えた。そんな歴史を継承すべく、2月28日にオープンする新店舗ののれんを特注。近隣にある染色の工房と友禅の職人に仕立ててもらった。

「顔の見えるものづくり」を体現する工房を構え、これからの伊良コーラが目指すものは?


「クラフトジンなど、世界的なクラフトブームが起こり、日本でもmitosayaさんや辰巳蒸留所さんのようなクラフトディスティラリーが登場していますが、伊良コーラではクラフトコーラを日本発祥の文化として伝えていきたいと思っています。
そしていずれは、『コーラ、ペプシ、伊良』と呼ばれる存在に。


そのためにはバーテンダーや料理家、パティシエなど、飲食業界にいる方々の力が欠かせないと思っています。


最近では伊良コーラを入れてくれるバーも出てきていて、『ものすごく個性的なラムやウイスキーと合わせたロングカクテルは、びっくりするほどコクがあって風味豊かに仕上がる』というフィードバックももらっています。


こんな風にジャンルを超えた仲間と手を携えて、僕にはない視点やアイデア、レシピを共有して、新しいクラフト文化を作っていきたいですね」

伊良コーラ総本店下落合
東京都新宿区高田馬場3-44-2
URL:http://iyoshicola.com

SPECIAL FEATURE特別取材