バーショー開催直前スペシャル、
業界きっての国際派に密着!
<前編>

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バーショー開催直前スペシャル、
業界きっての国際派に密着!
<前編>

#Pick up

上野秀嗣さん by「BAR HIGH FIVE」

いよいよ来月20、21日に開催が迫った「東京インターナショナルバーショー」。海外ゲストの招聘に携わるBAR HIGH FIVEの上野秀嗣さんに、今年のバーショーの見所と今後の展望について伺う。

文:Ryoko Kuraishi

昨年のバーショーの模様から。スペシャルゲストは、NYの最先端バーシーンを担うとされるジム・ミーハン氏と、「英国のバーにこの人あり」と謳われる重鎮、ピーター・ドレリ氏。

日本のみならず、世界の著名バーテンダーが数多く訪れ、華麗なパフォーマンスを繰り広げる、日本最大級の酒の祭典、「東京インターナショナルバーショー」。
第3回を迎える今年は東京ドームシティー、プリズムホールに場所を移し、さらに盛大に開催される模様だ。
バーテンダー、バー関係者のみならず、日本中のバー愛好家が心待ちにするイベントである。


いくつものコンテンツが用意されているが、中でも目玉は海外の著名バーテンダーやバー評論家を招いてのセミナーだ。
滅多にお目にかかれない重要人物が来日するとあって、有名スピーカーによるセミナーのチケットは毎年、即日売り切れるほどの人気である。


今年のゲストにはドイツのレジェンダリー・バーテンダー、チャールズ・シューマンが決定した。
ドイツ・ミュンヘンを拠点に活躍する著名バーテンダーであり、「スイミング・プール」ほか有名なカクテルを数多く生み出した。
日本でも、「伝説のバー・ブック」とも謳われる彼の著書『シューマンズ・バーブック』を手にしたことのあるバーテンダーは少なくないだろう。


「インターナショナルと銘打つからには、なるべく国際色豊かな人選でいろいろなジャンルのプロフェッショナルを招聘したい」と話すのは、バーショーにおける海外スピーカーの人選に携わる上野秀嗣さんである。
海外のゲストを招く際はいつも人選に苦労するそうだ。
というのも、日本で開催されるイベントの場合、「誰もが知っている」というわかりやすさが重要なのだが、海外では超有名でも日本では意外に知られていないというネームバリューのギャップに悩まされることもしばしばだから。

左:一昨年、来日したチャールズ・シューマン氏。今回で4度目の来日となる。photo by Tomoyuki Hojo 右:こちらがバーテンダーの教科書ともいうべき、「シューマン・バー・ブック」。

「去年、サヴォイ(ホテル)のピーター(・ドレリ氏)を招いたのも、『サヴォイ』というわかりやすい肩書きがあるから、ということも理由にありました(笑)。
チャールズの場合、彼の著書は翻訳されているので日本でも多くの人に馴染みがあること、そして『バーはロンドンとNYだけのものではない』という個人的な思いもあって、ロンドン&NYから離れてゲストを招きたいという事情から実現しました」


もう1組のスペシャルゲストは、アニステイティア・ミラー&ジェアード・ブラウン夫妻。
アメリカ・カクテル・ミュージアムの創立者であり、『ミクソロジスト ザ・ジャーナル・オブ・アメリカン・カクテル』』や『スピリチュアス・ジャーニー ア・ヒストリー・オブ・ドリンク』などの著者としても知られている。


「さて、もう一組を誰にしようかと考えたいた時にたまたま、彼らから連絡をもらったんです。
なんでも、ジェアードが50歳を迎えるにあたって今年、どうしも彼の念願である日本に連れて行ってあげたいとアニステイティアが計画したそうで。
ただの遊びだとジェアードが遠慮するかもしれないから、何でもいいから仕事と絡められないかって相談されました。
で、『渡りに船だ!』と思って(笑)、バーショーでの講演をオファーした次第です」


上野さんによれば、ミラー&ブラウン夫妻のように、日本に行きたいと考えているバー関係者は決して少なくない。
バーショー自体、「とにかく海外の友人、知人から『日本に行きたい」というリクエストが多くて」、そうした声に応えたいという思いから始まったという。

今年のスペシャルゲストのもう1組、アニステイティア・ミラー&ジェアード・ブラウン夫妻の著書。

「2008年頃からヨーロッパ各地のバーショーに招かれるようになりましたが、いろいろな国のバーテンダーから『日本に行ってみたい、日本のバー事情を見てみたい』『そのためにも、東京でもバーショーが開かれたらいいのに』、そんな声を多数、聞くようになったんです。
海外の知り合いはたくさんいるので、やっぱり彼らの希望に応えたいという気持が芽生えるようになりました」


海外バーテンダーの思いに応えるという気持から始まったものの、現在では日本でバーショーを行うことにはさまざまな意義があると考えている。
たとえば、日本では知られていないバーの奥深い世界を届けたい、そんな意図もある。


「そもそもバーの世界には、IBA(インターナショナルバー協会)やNBA(日本バーテンダー協会)のような組織に属するバーテンダーと、組織とは無縁に活躍するバーテンダーの2種類がいます
組織に属するバーテンダーは、たとえばIBAの大会などに出向けば知り合うことができる。
ですが、無所属のバーテンダーは得てして組織や大会から距離を置きがちですし、日本には情報も入ってこない。
自分はたまたま世界各地を訪れる機会に恵まれ、そうしたバーテンダーと知り合うこともできましたが、埋もれるにはもったいないような逸材も多いんですよ。


ならばバーショーを通じて、IBAを中心とした世界だけではない、日本人が知らないバーテンダーやその活躍ぶりを紹介すればいいんじゃないか。
さらにはそうした異なる世界に属するバーテンダー同士の架け橋にもなれれば、バーショーというイベントがより意義深いものになるんじゃないか。
そんな風に考えました」

BAR HIGH FIVEに来店する半数以上が、海外からの客人だという。海外有名紙での紹介も多数。ちなみに、さきごろニューオリンズで開催された「テイルズ・オブ・ザ・カクテル」では「インターナショナル・バーテンダー・オブ・ザ・イヤー」のトップ4にも選出されている。

そんな思いから始めたバーショーも今年で3回目。
上野さんはじめ、主催するカクテル文化振興会では当初から3回をめどに開催しようと思っていたそうで、今回で一つの節目を迎えることになる。
ますます盛大に……と考えるところだが、実は現在の形での継続は考えていないそうだ。


過去2回のイベントはいずれも、ロケーションも時期も変えて行ったが現在のやり方は限界にきている、というのが上野さんの考えだ。


「そもそもバーショー実現のきっかけは、ウィスク・イーのデビッド・クロール(CEO)から『ウイスキーライヴをさらに盛り上げるためにも、酒全般に対象を広げたイベントとしてリニューアルできないか』と、相談を受けたこと。


ウィスク・イーはドリンクスメディアを、NBAはカクテル文化振興会を設立し、会社、団体を超えて業界全体を巻き込んだイベントを行っていきたいと考えましたが、バーショーとして回を重ねるにつれ、ウイスキーライブとバーショーを併催するという形には無理が生じるようになってきました。


僕個人の考えとして、やはりバーショーは春に開催したいという希望もあり、次回のバーショーはウイスキーライヴとは全く別に、再来年の春に開催する予定です」
(編集部注:その後、次回のバーショーは2015年春に開催されると正式発表された)

左上:「一人でも多くの海外バーテンダーに来日してほしいから、バーショーが日本に来るきっかけの一つになれば本望です」と上野さん。 右上:BAR HIGH FIVEで人気のオーダー2種。日本人と外国人の好みの違いがはっきりわかる。左は欧米人に人気の「ネグローニ」。右は日本人が大好きな「ジントニック」。「ネグローニは、カンパリでなくマルティン・ビターを使います。ジンはシップスミスのロンドンドライジン」。左下:もうひとつ、外国人人気の高いカクテルが「アヴィエーション」。「ジン、マラスキーノ、バイオレットリキュールという、日本人にはまったく馴染みのないフレーバーの代表格(笑)」。右下:美しい角氷。Photos by Tetsuya Yamamoto

突然飛び出した、全く新しいバーショー構想!
そのコンセプトはどんなものだろう。


「春にバーショーを、そして秋にはバーウィーク、カクテルウィークを。
現在はそんな構想を温めている最中です。
その実現のためにも、来年のバーショーはお休みし、バーウィークに注力します。


バーウィークはバーショーのようにセミナー主体のイベントではなく、世界で活躍しているバーテンダーを招き、あちこちのバーで実際に彼らのパフォーマンスが楽しめるという仕組み。
バー愛好家が気軽にバーを訪れ、彼らのカクテルを飲めるわけです。


たとえば毎年、アメリカのニューオリンズで開かれている『テールズ・オブ・ザ・カクテル』はフレンチクォーターの小さな一区画で開かれているんですが、これはどこか銀座1丁目〜8丁目に通じるんですね。
その小さなエリアのあちこちでバーテンディングにまつわるさまざまなイベントや催しが開催されている。
そんなスタイルのバーウィークをカクテル文化振興会で行いたいと考えています。
そして翌春には、ウイスキーライヴとは離れて、新たな形でのバーショーをお披露目できる予定です」



後編では海外から来日するバーテンダーを案内する上野さんの一日に密着。
道中、上野さんの個人的なバーテンダー哲学や信念に迫ってみる。


後編に続く。

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