PICK UPピックアップ
新春恒例、若手バーテンダー特集
2025年、どりぷらが注目するU30バーテンダー!
- 前編 -
#Pick up
羽村勇人/Hamura Yuto/BRAND NEW NIGHT、和田加奈恵/Wada Kanae/Bar佐久間
羽村勇人さん(写真左)が紹介してくれたシグネチャーカクテルは「コブマンテフィズ」(写真右)。昆布をインフューズドしたメスカルに自家製スプマンテシロップ、ライムジュース、マリブを合わせ、ソーダでアップ。「メスカルはミネラル感の強さが特徴的なスピリッツでもあるので、そこを活かして海のものと合わせたり、共通する香気成分を多く持つココナッツとスプマンテの相性に着目して構築しています」。
羽村勇人さん/BRAND NEW NIGHT(東京・恵比寿)
理学部数学科からバーテンダーへ。
若手バーテンダーの躍進が目覚ましい2020年代半。一口に「20代」といっても、すでに中堅のキャリアを備える実力派からコンペで初優勝を果たしたばかりのフレッシュまで、じつにさまざま。
今年はあえてさまざまなプロフィールをもつ4人をセレクト!それぞれのポートフォリオに迫る。
1人目は東京・恵比寿「BRAND NEW NIGHT」のヘッドバーテンダー、28歳の羽村勇人さんから。
大学時代にアルバイトとして入店したオーセンティックバーがきっかけでバーテンダーを志したという羽村さん。
大学生ながらモルトにハマり、店の仕入れまで任せてもらっていたとか。
当時は東京理科大学の理学部数学科に通う大学生、将来はSE……?なんてぼんやり思っていたところからの大転身だ。
「当時、アルバイトをしていたバーのオーナーが『毛利バー』出身ということもあり、技術研鑽やカクテルコンペ出場についても熱心に指導してくれました。
そんな環境もあり、NBAの千葉支部のカクテルコンペに書類を出してみたところ、本戦まで進むことができたんです。
プロのバーテンダーばかりのなかに大学生のアルバイトが紛れ込んでしまったわけで、本戦ではボコボコにされたんですが(笑)、それが負けず嫌いの心に火をつけ、技術を磨こう、知識を得よう、そんなモチベーションになりました」
コンペ貧乏に陥りながらもモルトに注いでいた情熱をコンペにも傾けるようになり、卒業後はそのまま同じバーに正社員として入店。
コロナ禍をきっかけに退店し、フリーのバーテンダーとしてみずからイベントの企画・運営や、他店でのゲストシフトなどを行うようになる。
企画してお金の算段をして集客をして…… 。店という看板がないなか、20代前半のバーテンダーが1人でイベント運営を行った経験は、現在にも大いに生きているとか。
サメスカルを提供したイベントの様子(写真左)と、カクテル「サメスカル」。
好きなものはメスカルとサメ映画。サメスカルってなんだ!?
コロナ禍収束のタイミングで赤坂のバーに入店、昨年4月から現職。昨年は「以前から挑戦してみたかった」というメスカレロの資格を取得。「BRAND NEW NIGHT」ではメスカルほか、ちょっと変わった銘柄を多数扱う。
「5年前にテキーラマエストロを取得して、それをきっかけにメスカルに興味を持ち、ここ3年ほど勉強していました。
地方色豊かなメスカルは、知れば知るほど謎が深まる懐の深いスピリッツ。モルト以来のハマりっぷりです。
メスカルの特徴としてスモーキーさを挙げる方が多いと思いますが、ミネラル感や旨味といった、スモーキーさとは違う個性を知ってもらえるカクテルになったらと思い、『コブマンテフィズ』のようなカクテルを作っています。
今年もメスカルベースのカクテルをお出しして、メスカルの魅力をお客さまに伝えていきたい」
このインタビュー直後、「ちゃぶ屋」こと大久保の「Bar チャブラーシカ」で行ったゲストシフトイベントでは、マスターとの共通の趣味である「B~Z級サメ映画」に敬意を表し、「サメ」しばりのカクテルを提供!
「『サメだからサメスカルね!』って冗談みたいなお題が決まり、仕方がないので連日、サメと格闘しました。
サメでとった出汁にクエン酸を加えた自家製シュラブ、ホワイトカカオとラベンダーを合わせたメスカルベースのカクテルを作ったんです」
サメの出汁はともかく、後半を聞くと素敵なカクテルっぽいですよ。
「あ、でもちゃんとサメくさかったですよ(笑)。昆布とか海産物はメスカルに合うので、サメ出汁を合わせましたが、もう2度とやらないかな!」
「はじめに副材料から組み立てていく」という羽村さんのカクテルレシピ、参考にしているのはスイーツだ。
たとえば青山「EMME」や京橋「kominasemako」など、イノベーティブなパティシエたちの素材の組み合わせや使い方にインスパイアされることが多いとか。
「休日も、新しいカクテルのヒントになりそうなスイーツを見に行ったり、他のバーに遊びに行ったり、なにかしらバーテンディングに関係することに時間を使ってしまいますね。
U-30ではありますがキャリアとしては9年目を迎えますし、自分より年下のバーテンダーたちから刺激を受けることも多く、年齢を意識することはあまりありません。
年下の方たちが勉強していることやいま、なにに興味をもっているか知りたいですし、年齢や年代というくくりを超えて、互いに持っている知識やスキルを共有しながらみんなで高め合っていけたらと思っています。
バー業界には、横のつながりでシーンをよりよくしていこうというポジティブなムードがありますから」
続く2人目は、北海道・釧路から、「第29回全国エリートバーテンダーカクテルコンペティション」グランプリに輝いた「Bar佐久間」の和田加奈恵さんが登場!
エスプレッソリキュールをベースに、クリームチーズ、シュガーシロップ、ミルクで仕上げるデザート感覚のカクテル、「大人のティラミス」(写真左)。「イタリア語で『私を元気づけて』という意味をもつティラミス。食後に来店されるお客さまがよくオーダーされます」と和田さん(写真右)。
和田加奈恵さん/Bar佐久間(北海道・釧路)
28歳、最後のチャンスで手にした栄冠!
ANAクラウンプラザホテル釧路のレストランのサービススタッフとして働いていた和田さんが「Bar佐久間」へ移ったのは2019年のこと。
「バーのこともカクテルのことも全くわからず、ウイスキーなんて飲んだこともなかった」という和田さんがバーテンディングに本腰を入れるようになったのは、ひょんなことで応募した「網走オリジナルカクテルコンペティション」に優勝したことがきっかけだった。
「それ以前はお手伝い感覚でグラスを磨いたり氷を切ったりしていましたが、大会を経験して純粋に『こんなに楽しいことは他にない!』って思ったんです。
カクテルを考えて、練習して……いざコンペに臨めば、同じようにがんばっている同年代の仲間に出会え、世界が広がる。
『Bar佐久間』のお客さまの応援もモチベーションになりました。いままでの人生、こんなに誰かに応援してもらったことはありませんでしたから」
2021年から挑戦してきた「全国エリートバーテンダーカクテルコンペティション」は、2021年、2022年とブロンズ賞を獲得。
年齢的に最後のチャンスとなった今年、念願の優勝を果たした。
「同コンペで北海道本部のバーテンダーがグランプリを受賞したのは19年ぶり、釧路・根室エリアでは初の栄冠!ということで、北海道本部長も泣いて喜んでくれました。
それがいちばん嬉しかったですね。4年間、あきらめずにチャレンジしてきてよかった、と感じた瞬間でした」
優勝カクテルは「Primevere(プリムヴェール)」、サクラソウを意味するフランス語だが、その名の通り、華やかなピンク色のカクテルを仕立てた。
「カクテルを作る時は、言葉の響からイメージを膨らませることがほとんど。日ごろから目にしたり耳にしたり、ピンときた言葉をスマホにメモっています。
それぞれの言葉を吟味して、その言葉から世界やイメージを広げてカクテルに落とし込みます。
いまはジンにハマっているので、ベーススピリッツはジンを使うことが多いですね」
昨年、和田さんがハマったというキャンプの様子。
みんなの応援を力に、さらにコンペに挑戦したい
目指していた大会で満足のいく結果を残したことで自信をつけた和田さん、今年はさらに多くのコンペにチャレンジしていきたいとか。
「まずは『エリート』で勝ちたいと思っていたので、これに集中していました。今年は『サントリー ザ カクテルワード』など、メーカー系のコンペにも挑戦したいと思っています。
それに向けてカクテルの知識を増やし、練習して、やることは山積みですが、応援してくださるお客さまがたくさんいらっしゃるので、その期待に応えたい。
初めて出場した大会でご一緒して以来、刺激を受け続けているのが神戸『BAR SLOPPY JOE』の生田理実さんなんです。
優雅な所作とおいしいカクテルを作る技術、深い知識を兼ね備えたバーテンダーになりたい、そう思って日々、研鑽を続けています」
プライベートでは、ニセコ、余市、札幌の蒸留所巡りを行っているそう。
「夏は、本格的なカクテルを作るキャンプにもハマっています。キャンプサイトに本格的なバーカウンターも作り込むんですよ。
湖を眺めながらいただく、イエルバブエナたっぷりのモヒートは最高でした!今年の夏はさらに進化したキャンプカクテルを振る舞いたいと思っています」
今年、故郷・釧路で更なる飛躍を見せてくれることでしょう。応援しています!